花王、事業所内に社員の創造性と共創力を育む新施設オープン ステークホルダーとの共創拠点に
花王(東京都中央区)は11月18日、社員一人ひとりの創造性と共創力を育む場として、すみだ事業場内に「佑啓(ゆうけい)」を開設した。同社が受け継いできた「よきモノづくり」の本質を五感で学べる構成。取引先、株主、学術機関や生活者など、多様なステークホルダーと価値を共創する拠点として活用する。
環境に配慮した空間デザインは東京藝大との共創 100人超の社員が参画
新施設にはAI技術を活用して、先人と対話できる仕組みや、「よきモノづくり」を体感できるシミュレーターを備えている。環境に配慮した木造5階建てで、年間の一次エネルギー量は、基準値から50%以上削減できる見込み。
構想から竣工(しゅんこう)まで約9年、100人を超える社員が参画した。空間デザインは東京藝術大学との共創プロジェクトによるもの。社員と学生がともに手を動かすワークショップを通じて人と人、そして自然との調和をはかった。同社は共創のプロセスそのものが、企業文化を体現しているとしている。
建物全体のエネルギー消費量の削減に配慮するため、高断熱Low-E複層ガラス、高COP空調熱源や加湿機能付きの全熱交換機を採用。LED照明と昼光調光センサーによる、効率的な照度制御を行う。
また、福島県産材を中心に木材を使用し、282.4トンのCO2の炭素固定を実現した。高い省エネ性能を備えた建物に与えられるBELS認証「ZEB Ready」を取得する予定という。
「自ら学び考え、仲間と協働する」拠点として各階ごとにコンセプト設定
同社は「佑啓」について、自社が大切にしてきた「自ら学び考え、仲間と協働する」という自学共生の考え方を体現する拠点であると説明。各階に異なるテーマとコンセプトを設定した。
・Dialogue(1階)誰もが集い、語り合うひらかれた広場。木漏れ日や香りなど、ぬくもりを五感で感じる
・Inspiration(2階)先人の思想や想いに触れ、「よきモノづくり」の原点と新たな発想の種を見出す
・Design(3階)「よきモノづくり」の本質を体験する学びの場
・Value(4階)価値づくりや未来の事業を語り合う対話空間。部門や世代を越えた共創を促す
・Future(5階)学びと想像を見晴らす展望フロア。未来への構想やビジョンを描く
地域と連携したまちづくりや環境整備を推進する事業場に設置
すみだ事業場は、2023年に操業100周年を迎えたグループ最古の事業場で、研究開発・事業・サプライチェーン・管理部門などが集結している。事業場内の東京工場は、量産品の生産工場から、現在は、新たな製品やサービスのアジャイル開発を生産面から支援するインキュベーションセンター東京(ICT)として稼働している。
墨田区とも連携したまちづくりや防災に取り組んでおり、地域に開かれた広場や、安全で快適な歩行空間、災害時の一時滞在スペースを整備。太陽光発電や、自社が開発した廃PETを活用した高耐久舗装などの環境負荷低減のほか、緑化整備による環境保護にも取り組む。
事業場は周辺に一般住宅が多い地域にあり、地域住民との文化交流活動や生活者研究なども行っている。同社はパーパスに「豊かな共生世界の実現」を掲げており、同事業場も資源や環境への負担が少ない、ESG視点での「よきモノづくり」の拠点へと移行させている。
発表の詳細は同社公式リリースで確認できる。