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大十焼きそばの寿命を延ばせ!~百年食堂復活物語~

まるごと青森

大十焼きそばの寿命を延ばせ!~百年食堂復活物語~

1度めの復活

平川市で創業から約130年・四代にわたり続き、「津軽百年食堂」と称された大十食堂。

味のあるのれん

メインの焼きそばを求め、連日お客さんが絶えない人気店でした。

平川市大十の店舗正面

しかし、4代目店主の西谷 豊氏(65)は、人手不足等によりやむなく2021年6月30日に大十を閉店。青森県内のメディアでも大きく取り上げられ、ファンの嘆きは相当なものでした。かくいう私も絶望を味わった一人です。

しかし、地元の名店を周囲は放っておきませんでした。平川市の猿賀公園内にある「さるか荘」の御食事処「もてなし」で、「豊の焼きそば」として大十メニューの一部が復活。ファンは歓喜し、連日行列ができる盛況ぶりでした。私ももちろん何度も食べに行きました。

しかし、経営者変更により条件的に合わなくなったことから、2024年3月31日に「もてなし」から撤退。またも大十ファンは悲嘆にくれることとなりました。

2度めの復活

今度は地元企業が動きました。平川市の隣・黒石市の建設業社長が、自身が営む焼肉店で大十メニューの提供をしてもらえないかと西谷氏に提案したのです。

黒石市のこみせ通りにある焼肉逢春

実は平川市尾上の大十旧店舗には1度目の閉店後も看板が残っており、閉店を知らないお客さんの訪問が絶えなかったため、看板を撤去しようと西谷氏がリフォームの相談をしたのが同社長でした。ところが社長は撤去した看板を捨てず、焼肉屋の脇に掲げようというのです。

焼肉逢春の店舗脇に掲げられた大十の看板

かくして2024年4月22日、黒石市のこみせ通りにある「焼肉・逢春」で大十メニューの提供がはじまりました。初日は7~8組のお客さんがお店の前で行列をなしたということです。最近世間でも「二毛作ビジネス」が注目されていますが、昼は焼きそば・夜は焼肉というわけですね。

復活後もメインは焼きそば!

平日でも80食、土日は120~130食が出るという焼きそばは、依然大十の看板メニューです。長年のファンである私も実食してみました。

麺の固さ、玉ねぎのシャキシャキ感、ソースの風味、どれを取っても以前の大十の焼きそばであることに喜びを禁じ得ません。

焼きそばには必ずラードを使うそうです。油自体の味により、焼きそば全体の味が深まるのだそうです。太めの平打ち縮れ麺に自家製ソースがよくからみ、プリプリとした食感で最高です。

さらにこだわりは麺のゆで方。少し固めにゆであげた後、出汁で煮込むことで、味わいを深めつつ、柔らかい食感に仕上げているのだそうです。

出汁にもこだわり!オリジナルの焼き干しを使用

大十はラーメンも大変美味しいですが、出汁のこだわりは焼き干しを手作りしていることです。「1キロ2500円前後もする市販の焼き干しを使っていてはコストが合わない」と、自作することにしたのだそうです。

煮干しを焼いて細かく砕き、から煎りするという手間ひまをかけたオリジナル焼き干しを使うと、下の写真のような黄金の出汁が取れます。他にも昆布や削り節などを配合したこのこだわりの出汁が、大十のラーメンの肝だと西谷氏は語りました。

大十の後継者は?

こうなってくるとファンとして不安になるのが、いつまでこの黒石市で大十メニューを食べられるのかという点。

焼肉逢春の客席 広くて綺麗です

「今後、おいくつくらいまで販売を続けてくださるんでしょうか?」思わず口をついて出た問いに対し、「せっかくこんな良い場所で復活できたんだから、ご縁に感謝して75歳くらいまでは続けたい!」と答える西谷氏。

ということは、大十のメニュー、あと10年しか食べられないのか!?不安にかられる私に西谷氏は次のように語りました。

異業種でのレシピ継承

なんと焼肉逢春社長には将来にわたり同店で大十ブランドを守り育てていきたいという構想があるのだとのこと。実際、社長たっての依頼により、20代の逢春スタッフの男性3名に大十メニューの作り方を指導中なのだそうです。40歳も年齢の離れた世代へ、まかないとして大十メニューを食べさせながら味を覚えさせ、麺のゆで方から出汁の取り方、焼きそばの炒め方と、手取り足取り指導をして大忙しなのだとか。

おいしさの秘密・製麺機ごと逢春へ

社長の本気度がわかるエピソードがあります。西谷氏に黒石市への移転を提案した翌日の2024年4月2日には、平川市尾上の大十食堂旧店舗から、年代物の製麺機を焼肉逢春に運び込んだのです。

先代の時から70年は使っているという店の要たる製麺機で生地をこねつつ、手でも練り直すという合わせ技により、独特の平打ち縮れ麺が生み出されます。この機械でなければ品質の維持が難しいため、モーターを修理しながら大事に使っているのだそう。外部の製麺所に外注せず、手作りしているというこだわりに、津軽の麺文化の結晶を見ることができますね。

かくして、大十のレシピを延命する環境は整ったと言えるでしょう。何度閉店しても、地元から愛されすぎているあまり何度でも復活する大十食堂。ファンの皆さんご安心ください!伝統の味は、無事未来へと受け継がれていくことでしょう!

by フォレスタ

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