円高や円安を左右する為替メカニズムを解説!【眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話】
2:円高や円安をもたらす為替メカニズム
前項で円安や円高のもたらす影響にふれました。なぜ為替レートは変動していくのでしょうか。かつて世界の為替レートは固定相場で、先進国の多くが70年代に変動相場制に移行しました。
こうした「為替レート」が変動する要因の第一は各国の「金利水準」です。為替リスク以上に米国の金利が上昇すれば、米国でのドル運用が有利になるため、日本円が売られ、ドルが買われます。もう一つの要因が「貿易収支」になります。
日本の輸出が輸入よりも多ければ、米国で稼いだドルを日本円に換えるため、ドルを売って円を買うので、円の需要増で円高方向に向かいます。
かつての日本は、今の中国のように、米国への輸出が相当多かった時代があります。そのため、当時の日本はしばしば円高に悩まされていました。
円高になると、米国では日本製品のドル建て価格が上がり、売上が鈍るからです。前項で見たトヨタは、そのため円高に泣かされてきたのでした。
2012年末から始まったアベノミクスは「3本の矢」を主軸と称しても、第一の矢の「大胆な金融緩和」だけが功を奏し、2008年のリーマンショック以降1ドル75円台を記録)、20212年末以降反転させ、1ドル100~110円台のレンジへと戻しました。
しかし、米国のFRB(連邦準備制度理事会=中央銀行)が、利上げを始めると、4月に円は130円台になり(20年ぶり)、その後も日米の金利差は広がるたびに円安は続きました。(10月には32年ぶりに一時150円台突破)。円安で輸出企業はウハウハ喜び、輸入企業は輸入価格上昇に苦しみます。
為替レートを決める主な2つの要因
・貿易収支
日本が輸出で稼ぐとやがて自国通貨に換える働きで需要増と
なり円高となる
・金利水準
米国の金利が高いと米国ドルが買われ日本円を売りドルを買うので円安となる
→為替レートで通貨の交換価値が決まる
円高
・輸入時100円の支払い
・輸出時100円の入金
円安
・輸入時150円の支払い
・輸出時150円の入金
円高は輸入に有利で円安は輸出に有利です
【経済とお金の豆知識】
かつて「1 ドル= 360 円」の固定レートの時代(1972年まで)は、「一生に一度海外旅行ができれば幸せ」という時代でした。アベノミクスの大失敗で、そんな時代に逆戻りすることも危惧されます。
【出典】『眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話』著:神樹兵輔