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【マンガ・番外編〜13話まとめ】元自衛隊員の防災はまず「想定」から! 東日本大震災から学ぶ、こころの防災

Sitakke

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元海上自衛隊のイラストレーター・ヤマモトクミコさんが、東日本大震災の支援を通じて学んだことをマンガでお伝えする連載「元自衛隊員が描く“こころの防災”」。

「HBC演劇エンタメ研究会(エンケン)」のメンバーが、マンガに声をあててボイスコミックを制作しました。

HBC演劇エンタメ研究会(通称“エンケン”)

今回は番外編と第13話のご紹介です。

【第1話から見る:元海上自衛隊が伝えたい「こころの防災」 東日本大震災から学ぶ/第1話】

エンケンメンバーは、代々木アニメーション学院札幌校で声の演技について学び、収録に臨みました。
【アフレコ体験レポ:アニメの声優さんってスゴすぎ!現役アナウンサー3人がアフレコに挑戦してみたら...】

番外編・第13話ヤマモトさん役:大竹彩加アナウンサー 収録を終えて

不安です。笑
どうしてもナレーションがアナウンサーっぽくなってしまわないかとか、しゃべり口調にうまくできてるのかが不安ではあるんですが、(第4話の避難者の役など)セリフのところは感情をこめてなりきれたかなと思います。

私自身すごくこのマンガを読みながら勉強になったことがたくさんありました。
いざ防災のことを考えたときに、きちんとやっておかなければいけないなと思ったので、ぜひこれを機に皆さんが防災に興味を持ってもらえたらなと思いました。

ぜひ続きもお楽しみに!## 妊娠中・子育て中の防災

ヤマモトさんが海上自衛隊で災害派遣を経験したのは結婚前でした。
当時は「妊娠・出産・育児」も未知の世界だったものの、2児の母になった今、改めて「妊娠中・子育て中こそ、防災の備えが重要」と感じているといいます。

「妊娠中や、小さな子どもがいる時期は、普段の生活だけでも大変で、防災グッズを用意をするのも一苦労だと思います。なので特に重要なことだけ伝えたいです」と、ポイントを3つにしぼって紹介してくれました。

①母子手帳は必ず持ち歩く

妊娠中はもちろん、小さな子どもがいる家庭でも、母子手帳を持ち歩くべきだといいます。

大きな災害が起きると、災害派遣の医療チーム(DMAT)が支援に駆けつけることがあります。ただ必ずしも、歯科医や助産師が来てくれるとは限りません。「母子手帳」には予防接種歴や成長の記録が書かれています。
必要な支援を受けるためにも、「母子手帳」を持っておくべきだといいます。

②ミルクと非常食は事前に試しておく

防災用品でも、食品はかなり重要です。特に代替できないのが「ミルク」です。

ヤマモトさんは、災害時に普段と違うミルクや哺乳瓶を使うと、飲むことを嫌がる可能性があるため、防災用に備えるものも必ず事前に試してほしいと話します。
自宅にカセットコンロなどを備えておけば、電気が使えない状況でもお湯を沸かすことができます。

また、普段は完全母乳で育てているという人も、災害時にストレスなどで母乳が出なくなる可能性も考え、ミルクの備蓄を検討してほしいと話していました。

レトルトの離乳食や防災用の食事も、合うかどうか事前に確認しておくことが重要です。
避難所ではアレルギー対応食は少ないため、アレルギーを持つ子どもには、特に合う防災食の準備が必要になります。

③在宅避難という選択肢もある

「在宅避難」とは、災害時に避難所へ行かずに自宅で生活する方法です。
災害が起きても自宅が無事で安全に過ごせそうなら、水道や電気が止まってしまっていても、自宅で過ごす選択肢もあります。

避難所の生活はプライバシーがあまりなく、ストレスがかかりやすいため、自治体によっては妊娠中の人や乳幼児のいる世帯に在宅避難をすすめています。

ただ、在宅避難には「支援物資や救助活動の情報が入りづらい」「食料や飲みものの調達が困難になる可能性もある」といったデメリットもあります。

妊娠中の女性の心や身体の状態、子どもの様子は、各家庭によってそれぞれ異なります。
在宅避難も想定し、防災用品を多めに備えておくといいといいます。

ヤマモトさんは、「防災用品も、そのときどきの“我が家”仕様にアップデートしていくのがベストです。おむつやおしりふき、肌着、おやつやおもちゃ、絵本なども検討してもよいと思います」と話していました。

防災用品の準備は「状況の想定」が重要

ヤマモトさんによると、防災用品を準備するにあたって、大切なのは「災害時の状況を想定」することだといいます。
やみくもに防災用品を用意するのではなく、できるだけ“リアル”に、災害時の状況を想定した上で、必要なものを揃えることがポイントです。

・地震や台風といった災害の種類
・在宅中か、出先か
・家族や自分はどんな状況か
・電気・ガス・水道・スマートフォンはどこまで使えるか
など、実際に起こりそうな状況を想定しておくことで、何を準備すべきかが見えてきます。

「災害の種類」の想定には、自分が住んでいる地域のハザードマップがヒントになります。ハザードマップは、各自治体等のホームページで確認することができます。

今回はヤマモトさん自身の例として、以下の状況を想定しました。

【災害の種類】
震度5弱の地震、津波のおそれはない地域

【在宅中か、出先か】
在宅(ヤマモトさんは在宅ワーク中心のため)

【家族や自分の状況】
夫は外出中、子ども2人(1歳、4歳)は在宅。
自宅から子ども2人を連れて避難。避難所で夫と合流する

【電気・ガス・水道・スマートフォン】
電気・ガスは使用不可、水道とスマートフォンは使用可能

この想定に基づくと、ヤマモトさんは子ども1人を抱っこし、もう1人の手をつないで避難することになります。すると、その状態でも持てるサイズ・重さの防災リュックを備えるべきだと考えられます。


防災リュックの中身は?

ヤマモトさんは、リュック内に入れておくといい防災用品について、今回の想定状況を例に挙げながら、次のように提案します。

<食料・飲料>
・水筒
・おやつ袋
・お弁当用カトラリー
・レトルト非常食3人分

寒さの厳しい北海道では、避難所の冷え込みが想定されるため、水筒は保温できるタイプを用意。「避難所でお湯がもらえたり、在宅避難でもお湯を沸かしたとき、保温できる水筒だと温かい味噌汁やスープを作ることができ、便利です」と話します。

レトルト非常食は、家庭によって必要な量・持ち運べる量は変わりますが、ヤマモトさんの場合は重さを考えて3人分×2食分を入れています。

<体を温めるもの>
・ダウンジャケット
・使い捨てカイロ

<便利グッズ>
・布ガムテープ
・キャンプ用ロープ
・エコバックと風呂敷

<生理・衛生用品>
・衛生用品ポーチ
・女性用サニタリー用品
・大人用サイズのオムツ袋(子どものオムツのほか、使用済みの生理用品やゴミを入れるのに便利)
・ゴミ袋
・フタ付きおしりふき
・子どもの下着とオムツ
・シートマスク、個包装のスキンケアセット

<その他>
・重要書類セット
・防災マニュアル本と、“お守り本”
・抱っこ紐

ヤマモトさんの場合はリュックを背負って、子ども1人を抱っこして、もう1人と手をつないで避難するので、両手がふさがらないように抱っこ紐も必要です。


①「重要書類セット」

ヤマモトさんの「重要な書類セット」には、次の5つが入っています。

・母子手帳
妊婦や小さい子どもがいる場合は、適切な医療を受けるために必要

・通帳(または写し)と印鑑
通帳本体がなくとも、災害時は通帳の写し、もしくは本人確認ができるものがあればお金をおろせる場合もあります

・家族写真と個別の写真
家族写真はお守りでもあり、家族と離れ離れになってしまったときに捜索用としても使えます

・現金
現金を引き出せない場合があるため、食費と日用品の分は準備しておく

・ふせんとペン
避難所でアナウンスされた事項や、見聞きした情報をメモしておく

これらの重要な書類は、防水のためまとめてビニール袋などに入れるといいと話していました。

②「衛生用品ポーチ」

「避難先で、健康的に過ごすためにも衛生用品は重要です」とヤマモトさん。
持ち出しやすいように、ポーチにまとめて以下のものを入れています。

・歯ブラシ、歯みがきタブレット
・水のいらないシャンプー
・大判ボディシート
・折りたたみブラシ
・除菌シート
・爪切り
・ボディソープ(赤ちゃん用)
・保湿クリームとオイル
・かっさ
・シップ
・冷却シート(赤ちゃん用)
・体温計

ヤマモトさんの場合、1歳の子どもが熱を出しやすいため、冷却シートが必須。
ボディソープは赤ちゃん用があれば大人も使える。小さめの泡で出るポンプ式容器に詰め替えておけば、泡立てる必要がなく、節水にもつながると話します。

「かっさ」はマッサージに使うものです。肩こりの解消のために、毎日寝る前にマッサージをしているヤマモトさんにとっては必需品だ。シップも、産後から足がつりやすくなったヤマモトさんの状況に合わせて入れたものです。

このように家族構成や、人によって必要なものが変わってきます。

歯磨き粉よりも軽量で持ち運びがしやすい「歯磨きタブレット」や、「水のいらないシャンプー」、「大判ボディシート」など便利なグッズもあります。避難所に入浴設備がない場合や、水は使えるが、給水に時間がかかる場合にも重宝します。

この衛生用品ポーチは、普段から旅行用ポーチとしても活用できます。
自身や家族の状況に合わせ、必要な薬や欠かせない衛生用品を考えてみてほしいと話していました。


③「子どもの下着とオムツ用品」

乳幼児がいる家庭は、子どもの下着とオムツ用品の備えが必須です。ヤマモトさんは半日から1日後には夫と合流できる想定で、5~6枚のオムツを用意しています。避難所と自宅が近いため、緊急的に必要になる、持ち運びできる量で考えたといいます。

おしりふきは、厚手でフタ付きの大容量タイプを推奨します。
厚手で丈夫なおしりふきならば、1枚で便が拭くことができ、節約にも繋がります。また、体を拭くためのボディシートの代用にもなります。フタ付きのものを選ぶと、中身が乾燥しにくいです。

ヤマモトさんは、「普段はオムツを不要としている子どもでも、災害時のストレスで、おねしょをしてしまうことも多いんです。防水加工が施されたおねしょパンツも入れておくとさらに安心できるかもしれません」と話します。

④「キャンプ用ロープ」と「布ガムテープ」

「キャンプ用ロープ」と「布ガムテープ」は、さまざまな用途で使用することができます。

「ロープ」は、家具や物の固定、重量物の移動、洗濯物をつるすなどの用途に使えます。
キャンプ用のものに限らず、丈夫なロープであれば、代用が可能です。

「布ガムテープ」は、紙タイプよりも、防水性に優れていて丈夫です。
避難所でダンボール製のベッドやパーテーションの補強に使ったり、レインコートや破れた衣服の補修にも活用できるといいます。

⑤子どもも大人も“ほっ”とできる「おやつ袋」

普段食べているアメやガム、チョコレートなどのおやつは、「おやつ袋」として一つにまとめ、非常食とセットで用意しておくとよいです。

ヤマモトさんは、「ストレスが多い災害時にも、おやつがあれば、子どもも大人も“ほっ”と一息つくことができます。特に小さい子どもがいる家庭は、ストックして入れとおくといいと思います」と話していました。

⑥「防災マニュアル本」と「お守り本」

ご紹介したお守り本:「瀬戸内寂聴『生きることば あなたへ』 / 光文社文庫」

出版社や自治体が制作した「防災マニュアル本」は、事前に読んでおくことも大切ですが、災害時ではパニックになり、内容を忘れてしまうこともあります。

また、スマートフォンの充電が切れ、情報を調べられない場合もあるため、リュックに入れて持ち運ぶことがおすすめだといいます。

ヤマモトさんは精神的な“お守り本”として、日頃から読んでいる本や、落ち込んでいるときに読み返していた本も持ち出せるようにしているといいます。

ヤマモトさんは、「大前提として、災害発生時に生き残ることが一番重要です。とりあえず、生き残ることができたら百点満点なのです」と話します。その上で、「防災用品で大切なのは、やみくもに備えるのではなく、各家庭で『自分たちの場合』を想定し、行動することではないでしょうか」と呼びかけていました。


第13話:妊産婦や赤ちゃんのための防災【前編】

※在宅避難・・・災害時に自宅で安全に居住を継続できる場合、避難所に向かわず、自宅で過ごすこと。

第13話あとがき

今回は、前回のテーマをさらに深堀りしてご紹介しました。
心身共に安定しない状態の妊婦さんや、赤ちゃんがいるご家庭は、避難所に行くまでの道のりも大変だと思います。

今回ご紹介した方法はあくまで、「準備する余裕がない人」へ向けたものですが、在宅避難を検討する上でぜひ参考にして頂ければ幸いです。

私は、第1子の妊娠中は、不調のオンパレードでしたが、第2子のときは、ひどい眠気とつわりのみでした。
産後の回復も、出産時のケアや、その後の過ごし方でまったく違うなぁ…と感じています。

次回は、「しっかりと準備がしたい人」向けに、防災用品を紹介します!

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ボイスコミックは随時公開!:ボイスコミックこころの防災

マンガは全話公開中:連載「元自衛隊員が描く“こころの防災”」

漫画:ヤマモトクミコ
北海道・札幌市在住のイラストレーター。2010年に、海上自衛隊入隊。入隊1年目で東日本大震災の支援に従事。約10年間、自衛隊員として全国各地を飛び回る日々を過ごし、結婚・出産を経て、退職。独学でイラストレーターに。2児の母。

Instagram:@studio.kimi_cony
X:@kumiko_illust

編集:Sitakke編集部 ナベ子

【参考】イラスト作成時の写真資料として
海上自衛隊ホームページ

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