企業や社員にとっての「職務給」導入のメリットとは? 厚労省、ジョブ型雇用の手引きなどを公表
厚生労働省は2月26日、従業員の勤続年数にかかわらず、成果や実力などの職務評価を基に給与を決定する「職務給」の導入に向けたリーフレットや手引きを公開した。
職務給は職務の内容や重要性などを基準に給与水準を決めるが、形態や位置付けは企業によって異なるため、厚労省でリーフレット、手引きを作成して公開することにした。
仕事内容で給料が決まる職務給、三位一体の労働市場改革の柱に
職務給はジョブ型雇用ともいわれ、仕事の内容や成果を基準に給与を決める報酬制度だ。社員の年齢や勤続年数に関係なく、仕事内容で給与が決まるため、同じ仕事内容の場合、年齢や勤続年数に関係なく給与は同じ水準となる。
政府では、職務給を「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」として、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「成長分野への労働市場円滑化」と並び、三位一体の労働市場改革の柱の1つにしている。
企業、社員、それぞれの職務給導入メリットを紹介
リーフレットでは、職能給を支給されている社員や企業へのアンケート結果を基に、職能給導入のメリットを伝えている。
社員側へのアンケートでは、基本給のうち職能給が半分以上占める社員は「職能給で影響があると思うこと」について、「担当する役割・職務に対する責任感が高まる」が管理職(42.0%)、非管理職(26.3%)で最も多かった。
企業側が職能給で感じているメリットについて、「社員に求める役割・職務の要件が明確になる」ことをメリットに挙げる企業が56.2%と最も多く、「仕事に応じた賃金を支払うことができる」(51.4%)、「管理職層の確保・定着につながる」(49.4%)と続いた。
また、手引きでは、職能給導入のメリットのほか、職務給と職務に基づいた人材マネジメントの関係性や職務給の形態と賞与の決め方の関係性、職務給を導入後の運用課題などについて事例を基に説明している。
大手企業中心に職能給拡大の動き 中小企業には「モデル賃金制度」も
職能給をめぐっては、大手企業を中心に対象を拡大する動きが強まっている。
富士通(神奈川県川崎市)は2024年6月に2026年度入社の新卒採用から、一律の初任給を廃止し、仕事の内容や役割に応じて処遇する「ジョブ型」雇用を本格導入すると発表した。
同社では2020年度から幹部社員、2022年度からは一般社員を対象にジョブ型を適用しており、新卒採用の社員にも対象を拡大する。
日立製作所(東京都千代田区)でも、職務の範囲を明確化し、その仕事に人を割り当て、仕事の内容や遂行状況に応じて待遇などを決める「ジョブ型」人財マネジメントを進めている。
その基盤となる「ジョブディスクリプション」は2022年7月から、対象を管理職だけでなく一般社員にも広げて導入を進めている。
一方で、中途採用者が多くを占める中小企業では、大企業よりも職能給が求められるケースも多い。そこで、厚生労働省では 中小企業がわかりやすい形で役割評価を行い、職務給設計が容易にできる「モデル賃金制度」も紹介している。
厚生労働省の発表の詳細は同省の公式ホームページで確認できる。