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京本大我、愛らしくも勝気なヴォルフガングを堂々と演じる ミュージカル『モーツァルト!』ゲネプロレポート

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ミュージカル『モーツァルト!』舞台写真

脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲/シルヴェスター・リーヴァイのゴールデンコンビが「才能が宿るのは肉体なのか? 魂なのか?」というテーマをベースに描き出したミュージカル『モーツァルト!』。

2018年より同役を務める古川雄大と、本作で帝劇初主演を務める京本大我がWキャストでタイトルロールに挑み、真彩希帆、大塚千弘、涼風真世・香寿たつき(Wキャスト)、山口祐一郎、市村正親らが脇を固めている。

2024年8月19日(月)に開幕した古川雄大のヴォルフガングに続いて行われた京本大我ver.のゲネプロでは、ヴァルトシュテッテン男爵夫人を香寿たつき、アマデを白石ひまりが演じた。

京本は、自身のコメント通り初々しさのあるヴォルフガングを好演している。透明感のある声があどけない笑顔や甘え上手な雰囲気にマッチしており、なんとも可愛らしい。コロレド大司教(山口祐一郎)への反発、ウェーバー家におだてられて利用される様子も、自信からくる慢心というよりは世間擦れしていない箱入り息子だからに見え、父・レオポルト(市村正親)の心配も納得できてしまう。コンスタンツェとのシーンでは大人な一面、「僕こそ音楽」をはじめとするナンバーでは力強い歌唱を見せ、純真ながら凛々しい青年を描き出した。また、ビートを感じるパフォーマンスで豊かな才能や音楽への情熱を表現。難しい楽曲も堂々と披露し、新生ヴォルフガングの魅力を見せつけた。

ヴォルフガングの違いにより、周囲のキャラクターの印象も大きく変わるのが新鮮だ。

白石ひまり・星駿成・若杉葉奈がトリプルキャストで演じる“才能の化身”アマデはセリフを発しないが、その分ヴォルフガングに向ける視線や表情によって様々なものを伝えてくる。

市村演じるレオポルトのナンバー「心を鉄に閉じ込めて」からは、息子への複雑な心境と親心がひしひしと伝わった。大塚千弘が演じる姉・ナンネールは、本来あったはずの自分の未来が奪われたやりきれなさを抑圧された芝居と歌唱で見せる。父も姉もヴォルフガングを愛し、誇りに思っていることがしっかり提示されているからこそ、家族のすれ違いが切なく痛々しい。

ヴァルトシュテッテン男爵夫人を演じる香寿がモーツァルト一家に語りかけるように歌う「星から降る金」は、レオポルトに向かって子離れを促す印象が強く、涼風演じる男爵夫人とまた違うアプローチだと感じた。ヴォルフガングの才能を評価し、包み込むように歌う姿が眩しい。

コンスタンツェ(真彩希帆)とヴォルフガングのロマンスは、ピュアな愛情が日常に侵食されていく様子が物悲しい。真彩は夫にインスピレーションを与えられる存在でありたいというコンスタンツェの健気さ、理想と遠い現実に苦しむ姿を表情や歌声で丁寧に見せる。「愛していれば分かり合える」で見せる可憐な愛らしさと「ダンスはやめられない」の凄みのある美しさのギャップが素晴らしかった。

コロレド大司教を演じる山口は、“音楽の魔術”への畏怖を振り払うようにヴォルフガングの前に立ちはだかる。グルーブ感と重みのあるナンバーで強い印象を残すほか、アルコ伯爵(中西勝之)とのユーモラスな掛け合いも魅力だ。大司教とヴォルフガングが歌う「破滅への道」では、権力に真っ向から対峙するヴォルフガングの強さと決意が伺え、ラストに向けた盛り上がりを作っていた。

ゲネプロでは、古川ヴォルフガングが何かに突き動かされるように行動していたのに対し、京本ヴォルフガングは好奇心と反骨心で動いているような印象。それぞれ違った危うさがあり、共に目を離せない魅力を放っている。様々なキャストの組み合わせによる化学反応でさらに深まり、進化していくだろう2024年版『モーツァルト!』を、ぜひ劇場で味わってほしい。

京本大我コメント

あっという間の稽古期間でした。雄大君をはじめ、皆さん優しくて、色んな角度から多くのアドバイスをくださいました。今まで演じてこられた方々のことを考えるとプレッシャーはあるのですが、僕にとっては初挑戦なので、作品の歴史にリスペクトを持ちながら、今の29歳の京本大我が出来るヴォルフガングへのアプローチを大事にしようと思っています。未熟さもたくさんありますが、それも含めてさらけ出して、自分なりに自信を持ってお届けしたいなという気持ちです。舞台はナマモノですし、帝劇で主演も初めてなのでそういう怖さはありますが、それを忘れられるくらいヴォルフガングに熱中してスタートを切れたら、と思っています。なるべく守りに入らずに、“攻める”気持ちで行きたいです。ヴォルフガングだけでなく、京本大我自身の心もあえて尖っていたい。腰が引けたくないし、心持ちだけは常に強く前を向いていたいです。勿論謙虚さは持ちつつも、舞台に挑む上での“尖り”が、ヴォルフガングの役柄にも良い影響を与えられたら良いなと思います。

『エリザベート』を経て久しぶりに帝劇に帰ってきたので、重みを知っているからこそ感じるプレッシャーと、逆に噛み締められる想いがあります。僕が帝劇に立つことを待ってくださっていた方々へは恩返しになると思いますし、何より作品が本当に素晴らしいので、観ていただける事が本当に嬉しいです。歴代の素晴らしいヴォルフガングがいらっしゃる中で、僕はかなり初々しく映ると思うんですけど(笑)、おこがましいかもしれませんが、何回も観ていらっしゃる方がご覧になっても、新しい作品を観ているくらいの新鮮さを感じていただけたら嬉しいです。荒削りな部分も沢山ありますが、頑張っていきたいです!

本作は2024年8月19日(月)~9月29日(日)まで東京・帝国劇場で上演。10月8日(火)~27日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、11月4日(月)~30日(土)まで福岡・博多座でも公演が行われる。

取材・文・撮影=吉田沙奈

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