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介護業界で離職率をさげ、人材定着を図るために事業所ができることとは?

ささえるラボ

介護業界で離職率をさげ、人材定着を図るために事業所ができることとは?

執筆者/専門家

山本 武尊

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/23

介護事業所・介護施設では苦労をして人材採用をした職員には、長く一緒に働いてもらいたいと願っています。一方で介護職員側の視点としては、常によりよい条件で働きたいという気持ちもあります。お互い気持ちよく働きたいのに、様々な要因からそれが難しく、結果として離職に繋がってしまう…。

この記事では、入職した介護職員が離職することなく、長く働き続けるにはどうしたらよいかを「介護事業所・介護施設で行うべく、人材育成・人材定着とは」という観点から見ていきます。また同時に介護職員に心掛けていただきたいことについても解説をしていきます。

介護業界の現状と抱える課題

人材定着について考えていくには、まず介護業界の現状と課題について知っておく必要があります。
今回は以下の3点について見ていきましょう。
1.慢性的な人手不足
2.給与に対する不満
3.不規則な労働環境

1.慢性的な人手不足

高齢化が進む日本において、介護の需要は高まっており、その結果介護業界では人材不足が慢性的な課題となっています。

有効求人倍率は、近年改善されつつあるものの、令和3年の調査では、全産業の有効求人倍率が1.03倍なのに対し、介護関係職種は3.65倍と非常に高い数値となっています。※1
また、2040年には介護人財における不足人数は57万人に上ると予想され、国内だけでは補うことができず、外国人などの労働力を頼る必要がある深刻な状況となっています。※2

どの産業においても人手不足はありますが、介護業界では特に顕著であり、完全に「売り手市場」の状況が続いております。
※1 出典:厚生労働省有効求人倍率(介護関係職種)の推移(暦年別)
※2 出典:厚生労働省介護人材確保に向けた取組

2.給与に対する不満

介護業界は、全産業と比較をして低賃金なイメージが強い業界です。

厚生労働省の調査によると、社会保険・社会福祉・介護事業に携わる人の平均年収が370万円前後であるのに対して、全産業平均年収は490万円となっており、処遇改善加算等によって改善傾向にありますが、それでもまだまだ全産業と比較すると約100万円の差があるのが現状です。※
※ 出典:厚生労働省業種別の賃金(年収)の状況

3.不規則な労働環境

こちらも近年改善の傾向はありますが、まだ課題感を抱えている事業所も一定数あるのは事実です。
特に入所系サービスや24時間対応の介護事業所では夜勤や休憩、年次有給休暇が取りにくいなどのソフト面で整備が不十分な職場が多い印象です。

このような事業所では、まさに介護業界で働く人の“想い”に支えられている現状があるのではないでしょうか。ただし、想いだけでは長期的に働き続けることは難しいのです。

事業所は人材定着のために何ができるのか?

介護業界の現状と課題を見たところで、ここからは実際に事業所側ができる取り組みについて考えていきます。
この記事では入職3年以内の人材定着と、経験を積んだ入職10年以上の人材定着に分けて見ていきます。

入職3年以内の人材定着はコミュニケーションと人材育成が肝!

出典:https://mynavi-kaigo.jp/media

介護労働安定センターの調査によると、離職した介護職員の勤続年数は1年未満の者が34.4%、1年以上3年未満の者が25.5%となっていて、離職者の約6割が勤続年数3年以内に離職をしていることがわかります。※
このことから、入職して短い期間での離職は介護業界において重要な課題であるとわかります。

ここでは入職3年以内の離職率を下げるための特に有効な取り組みをご紹介します。

1.コミュニケーションの機会を増やすこと
2.マニュアルの整備
3.研修体制の整備
※ 出典:公益財団法人 介護労働安定センター令和4年度介護労働実態調査 「事業所における介護労働実態調査 結果報告書」

1.コミュニケーションの機会を増やすこと

入職して間もない職員は特に、一緒に働く同僚や先輩との人間関係を大事にします。介護職員の離職において最も多い理由は、職場の人間関係であると言われています。※
人間関係が原因の離職を予防するためには、新卒・中途問わず、入職後はきめ細やかなフォローをする体制を取ることが大切です。

具体的には直属の上司との面談の実施(入職1年以内は最低月に1回の頻度)を行い、仕事の内容や人間関係などに関する悩みを1人で抱え込ませない工夫が必要です。
※ 出典:介護労働安定センター令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について

2.マニュアルの整備

よくマニュアルの整備と伝えると、「そんなマニュアルなど作成をしている時間はない」や、「ただでさえ業務が多忙であるので誰も読まない」「マニュアル作成は時間の無駄」、などの声をよく現場では聞きます。

しかし実際には、マニュアルがないからこそ常に忙しいのです。やるべき職務、業務指導内容がまとまっていれば、指導をする人と、指導を受ける人の行き違いが生じにくく、業務の効率化も見込めます。最近では平易な言葉ルールブックに、図やイラスト、動画などで工夫をしているマニュアルも見られるようになりました。

3.研修体制の整備

研修体制が整っていることも人材定着においては重要です。
しかし、研修はやらないといけないから実施をするのと、主体的に実施をするのではその効果も変わってきます。

例えば、組織の課題に合わせた研修や、各階層に合わせた目的の研修、新人から管理職まで職員一丸となってプロジェクト化した研修などが有効です。ポイントは目的と研修の内容が職員に事前に共有できているかです。
結果として質の高い研修はスキルの向上のみならず、組織の課題発見となり、人材育成・人材定着に非常に有効となり得ます。

ベテラン職員の定着は、組織体制や評価制度の充実が肝!

出典:https://mynavi-kaigo.jp/media

次にベテラン層(一般的には10年以上)の離職率を下げるための取り組みを紹介します。

基本的なモチベーションは入職3年以内の介護職員と同じになりますが、ベテランならではの課題があり、その課題に対して放置をしてしまうと結果として、組織で長く働いてくれたスキルや経験値の高い人材を失う可能性があります。

1.仕事や役割が明確である組織体系
2.人材育成体制の構築
3.人事評価制度の充実

1.仕事や役割が明確である組織体系

近年では、リーダー、主任などの昇進に消極的なベテラン層がいます。その理由は責任ばかりが重くなり、相談相手や自分がミスを起こした際に責任を取ってくれる人がいない組織であるからというのも原因として考えられます。

一方で、人材定着に成功している組織では経験年数やスキルによってのキャリアパスや、事業所内での役割分担が明確であることがほとんどです。

2.人材育成体制の構築

コミュニケーションやマニュアル作成、研修の実施などと同時に、ベテラン層には人材育成にも注力してほしいと考えている事業所がほとんどです。

介護業界かつ同じ組織に10年もいれば、良くも悪くも組織のことが見えています。その視点を活かし、人材育成というフィールドで、後輩の育成にあたる仕組みを作ることで、入職したての職員にとっては安心して働くことができる環境、長く働く人にとっては役割があり、やりがいを感じられる環境になります。

3.人事評価制度の充実

目標管理をしている組織には人事評価制度が必ずあります。
ベテランはベテランなりの目標があり、その達成状況が賃金と連動をしていることが重要です。もちろん、利用者さんのケアを通じて感じるやりがいもあると思いますが、自身の行動に対し正当な評価をもらえることもやりがいに繋がります。

組織が職員一人一人に対して求めている人物像や、業務レベルを明示することで、職員も目指すべきところがわかり、モチベーションや組織への帰属意識の向上、そして、その結果人材定着を図ることができると言えるでしょう。

職員側も事業所任せではなく、自分ごと化して課題と向き合っていきましょう!

ここまで、介護事業所・介護施設が人材定着のために心掛けてほしい内容や、具体的な取り組みについて解説をしてきました。

最後に介護職員自身が心掛けてほしい内容を伝えたいと思います。
特にこれまでの職場では人間関係や環境に恵まれず、一人で無理をして頑張ってこられた方もいらっしゃるかと思います。もちろん状況は察します。特に転職を繰り返しているほどそうかもしれません。

一方でどうでしょう。転職をする中で、理想の職場環境には出会えましたでしょうか。
理想的な職場環境を追求するあまり、現実とのギャップに悩むことも少なくありません。自主的に組織を変革する介護職員として介護事業所を支えてみるという視点や、意識を持つことも時には重要です。

その際に、一人で悩むのではなく、前向きに改善が図れないか周囲と相談をし、検討していくのもよいのかもしれません。そのような少しの心掛けの積み重ねが理想の職場環境、そして介護に近づいていくのかもしれません。

最後に:事業所と職員が一体化し、課題と向き合うことが大切!

出典:https://mynavi-kaigo.jp/media

介護業界の人手不足は待ったなしの状況です。現場には、介護人材を補うと同時に、人材の定着も求められています。
本当によいケアがしたくて、利用者のことを考えているのであれば、労使双方とも離職に対して課題意識を持つ必要があると思います。

そのため、事業を運営する介護事業所・介護施設のみならず、そこで働く介護職員も一丸となって、この人材定着に取り組んでほしいと思います。

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