上野・五條天神社で古式ゆかしい追儺式「うけらの神事」が2月2日に開催。鬼を祓う“方相氏”が登場!
平安時代に起源をもつといわれ、古くから日本に根付く鬼を祓う行事「追儺(ついな)式」。東京都台東区の五條天神社でも古式ゆかしい追儺式「うけらの神事」が2025年2月2日(日)に行われる。豆まきの前には、「方相氏(ほうぞうし)」と呼ばれる役が登場して鬼たちと対峙するなど、物語を感じる流れがユニーク。ぜひ現地で拝観しよう。
物語を見ているような神事の流れ
上野公園に隣接する五條天神社では、毎年2月の節分の日に「うけらの神事」が行われる。日本で古くから医薬の祖神と崇められる神様・大己貴命(おおなむじのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)の二柱を祀る同神社で行われる、悪鬼を祓い新春を迎える追儺式だ。豆まきがメインの節分祭とはひと味違っていて、古式にのっとりまるで物語を見ているような神事が次々と行われる。
行われる神事は「節分祭」、「蟇目式(ひきめしき)」、「病鬼との問答」、「豆まき」の4つ。あらすじを紹介すると、「節分祭」では宮司が祝詞を奏上してから、方相氏と呼ばれる鬼祓い役が入場する。次に、宮司が弓と矢を使って鬼や病を祓う「蟇目式」が行われる。その後、赤鬼と青鬼が境内に現れ社殿に侵入しようとするが、方相氏がそれを全力で阻止する。さらに問答を行う副斎主(氏子年番)が進み出て「病鬼との問答」が行われ、鬼たちに元の古巣に帰るように諭すと鬼たちは罪を悟り神前から退散する。すかさず「鬼は外」の掛け声とともに年男・年女が「豆まき」を行うというものだ。
さまざまな「祓え」の儀式で鬼を追い払う
途中から登場する方相氏は4つの目をもち熊の皮を頭に被った異形の者で、一見怖く見えるが実は病鬼を退散させる役。神事のなかで四方に矢を射るような仕草をする「四方舞」を披露する。また、「蟇目式」では鏑矢(かぶらや)が使われるが、射ると鏑に空けた穴から風が入って笛を吹いたように「ボー」という音を響かせる。この音により悪いものを追い払うという意味があるそうだ。
「『うけら』が焚かれるなか『四方舞』や『蟇目式』が行われ、ついに居場所がなくなった鬼たちが出現してきて、それらを諭し退けるという流れです」と教えてくれたのは五條天神社の禰宜・瀬川さん。ちなみに「うけら」とは薬草の名前。若芽が食用になるキク科の植物で、根は健胃薬として用いられる。翌日の立春の日にうけらを焚きながら餅を焼いて食べると一年間無病健康に過ごせると江戸の頃から伝わり、社殿では神事が行われている間はうけらを焚き続けて邪気を祓っている。
神事の中でさまざまなお祓いが行われ、現れた鬼もついには退散する「うけらの神事」。「豆をまくだけではなく、鬼たちとの問答もあり楽しんでもらえるのでは。昔は社殿内で行っておりましたが、今は外の舞台で行っておりますので怪我のないように参拝していただければ」と瀬川さん。大まかな流れを把握した上で神事を拝観すれば、より楽しめること間違いなし!
開催概要
「うけらの神事」
開催日:2025年2月2日(日)
開催時間:15:00~15:40ごろ(豆まきは1回)
会場:五條天神社(東京都台東区上野公園4-17)
アクセス:JR・地下鉄上野駅、京成電鉄本線京成上野駅から徒歩5分
【問い合わせ先】
五條天神社☎03-3821-4306(9:00~17:00)
取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供
香取麻衣子
ライター
1980年生まれ。『散歩の達人』編集部でのアルバイト経験を経て、2010年からライターとしての活動を開始。あだ名はかとりーぬ。『散歩の達人』では祭り&イベントのページを長らく担当。青春18きっぷ旅や山歩きなどのんびりと気ままにお出かけするのが好き。あとビールや美術館めぐりも大好物。