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【なにぶん歴史好きなもので】戦国大名今川氏、武田氏を支えた地元の武士団を深掘り!「戦国武将岡部氏と朝比奈氏」展に行ってきました/藤枝市郷土博物館

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この秋は駿河の戦国時代と戦国武将に注目!


歴史好きの編集者が、藤枝市郷土博物館で12月8日まで開催されている特別展「戦国武将岡部氏と朝比奈氏 戦国大名今川氏、武田氏を支えた藤枝・岡部発祥の武士団」に行ってきましたよ。
今川氏・武田氏に仕えた一族の歴史について、同館学芸員の海野一徳さんに教えてもらいました。

取材/鈴木淳博(静岡新聞社編集局出版部)
イラスト/たたらなおき
 

今川義元ら戦国大名を支えた武士団に焦点

――今回の展示は戦国時代に活躍した「岡部氏」と「朝比奈氏」の歴史を紹介しているそうですね。両氏はどのような一族なのでしょうか。

海野 岡部氏と朝比奈氏は、藤枝・岡部を発祥の地とする中世の豪族です。ともに同じ藤原氏(岡部氏は藤原南家、朝比奈氏は藤原北家)をルーツに持つ一族ですが、戦国時代にはそれぞれがいくつかの系統に分かれ、異なる運命をたどることになります。

藤枝市郷土博物館学芸員の海野さん。岡部・朝比奈氏の歴史にとても詳しい

――有名な武将といえば、誰が挙げられるでしょう。

海野 戦国ファンの中で人気が高いのは岡部元信でしょうか。今川義元の家臣として仕え、桶狭間の戦いでは自軍が崩壊する中、最前線の鳴海城にこもり、主君である義元の首を取り返しました。今川家滅亡後は武田氏に仕え、徳川軍に包囲された高天神城(掛川市)で壮絶な討ち死にを遂げたことでも知られています。

――猛将を輩出した一族だったんですね。では、まず岡部氏の歴史について教えてください。

海野 諸説あるのですが、平安時代末期に藤原清綱という人物が駿河権守(ごんのかみ)に任命され、岡部郷に土着したといわれています。

岡部氏を名乗った息子の泰綱は源頼朝に仕えた御家人で、鎌倉幕府の歴史書『吾妻鏡』にも出てきますよ。源頼朝が上洛する際、泰綱もぜひ同行したいと願い出ましたが、肥満で馬に乗れなかったため、頼朝から「お前が乗れる馬をしっかり用意しろ」と言われたという逸話が記されています。

岡部氏発祥の伝説描いた絵巻は必見

――今回の特別展では、岡部氏ゆかりのどんな品が見られますか?

海野 まずは岡部氏発祥の伝説が描かれた『岡部氏家譜絵巻』を見ていただきたいですね。岡部家には先ほどの史実とは別に、「祖先は狼が連れてきた子どもだった」とか「家が断絶しそうになった時、鶴と狼が後継ぎとなる赤子を連れてきた」といった伝説が残っています。絵巻は江戸時代に描かれたものですが、赤子をくわえた鶴が三保の松原を飛び立つ様子や、狼が子どもをもたらすシーンが描かれています。

岡部氏の発祥伝説を描いた岡部氏家譜絵巻(宝泰寺蔵)。赤子をくわえた鶴や狼が描かれていて面白い

――そのほかの見どころも教えてください。

海野 藤枝市仮宿にある岡部氏居館伝承地には、かつて万福寺という菩提寺があったのですが、そこに安置されていた平安時代後期の木造阿弥陀如来坐像もこの機会にぜひ見てほしいです。この仏像は岡部家当主の方が戦時中に東京へ移した後、大阪の岸和田市へ寄贈され、岸和田城天守閣で展示・保管されていました。今回、約100年ぶりに藤枝へと戻ってきた目玉展示の一つです。

――なぜ岸和田に保存されていたんですか?

海野 今川家臣に岡部正綱という武将がいるのですが、彼は駿府の人質だった徳川家康(当時は竹千代)と幼馴染だったといわれています。今川家滅亡後は武田氏、そして徳川氏に仕官し、最終的に彼の孫が岸和田藩6万石を賜る大名へと出世しました。ちなみに正綱の子・長盛は「岡部の黒鬼」と称された武将でしたが、今回の展示では彼が合戦で使用して功名を立てた「丸子槍」が展示されています。

岡部氏の菩提寺・万福寺の本尊だった木造の阿弥陀如来像。大阪・岸和田から約100年ぶりに里帰りした

今川家の筆頭家老まで出世した朝比奈氏

――朝比奈氏の方はいかがでしょうか?

海野 朝比奈氏は朝比奈谷を拠点とした一族です。岡部氏に比べると、歴史書に登場するのは250年ぐらい後になります。岡部氏と同様、戦国時代は今川氏に仕えますが、今川氏親(義元の父)の時代になると、三浦氏と朝比奈氏が二大筆頭家老と位置付けられるほどの出世を果たしました。

――朝比奈氏ゆかりの品はどんなものがありますか。

海野 今川家家臣だった朝比奈信置が所有していたという薙刀の写しを展示しています。武田信玄の駿河侵攻後、武田家臣となり、持船城の守備などを任された人物です。武田氏傘下となった駿河の武将たちは「駿河先方衆」といわれましたが、信置はその筆頭としての地位を与えられていました。

朝比奈信置が所有していた薙刀の写し(一乗寺蔵)


――徳川の時代になると、朝比奈氏はどうなったのでしょう。

海野 武田氏が滅亡すると、朝比奈谷の朝比奈氏は帰農しました。その後はひっそりと暮らしていたと思われますが、家康が大御所となり駿府へやってくると、端午の節句に「朝比奈ちまき」を献上したという記録も残っています。食べると戦に勝てるといういわれを持つ縁起物で、長らくその製法は途絶えていましたが、近年、保存会が復活させて地元で作られるようになった郷土食です。

――今も地域に根付いた歴史が語り継がれているんですね。その他にもいろいろな文化財が展示されていて、じっくりと楽しめそうです。お話を聞かせていただき、ありがとうございました!

<DATA>
■藤枝市郷土博物館・文学館

住所/藤枝市若王子500(蓮華寺池公園内)
電話/054-645-1100
開館時間/午前9時~午後5時
休館/月曜
入館料/大人400円(団体20名以上320円)、中学生以下無料

特別展期間中は館内で静岡新聞社の本も販売。「静岡県の歩ける城70選」や「まんがでわかる今川義元ものがたり」など、地元の歴史が気軽に楽しめる書籍がずらり!ぜひ手に取ってご覧ください。

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