「円安のせいで…」はどう英語に訳す? 【北村一真 月曜日の「英借文」】#6
北村一真さんによる英作文トレーニング! #6
英語学習者から大きな支持を得ている英語学者、北村一真さん。英文読解についての著作の多い北村さんですが、自身の英語力の基礎は、英作文によってつくられたと言います。
真の英会話力を効率的に身につけるには、「英借文」というコンセプトで英作文のトレーニングをするのがいちばん。数々の英語学習者を「上級」に導いてきた北村一真さんの指導で、毎週英借文のトレーニングをしてみましょう!
※「NHK出版 本がひらく」より
「英借文」のコンセプトについては第0回をお読みください。
トレーニング開始!
まずは【例題】の和文英訳問題に独力で挑戦してみて下さい。この時点では瞬時に訳す必要はなく、少し時間をかけても大丈夫です。ひとまず英文ができたら、[解答・解説]に進んで、ポイントとなる表現を確認しましょう。解説を一通り理解したら、【練習問題】に取り組んでみましょう。
【例題】以下の和文を英語に訳しましょう。
円安のせいで海外旅行に行きにくくなった。
[解答・解説]
It’s become harder to travel overseas because of the weak yen.
The weak yen has made it harder to travel abroad.
[語句]
「円安」:the weak yen
「海外旅行に行く / をする」:travel abroad , travel overseas
日本語にできるだけ忠実に考えると、「円安が原因で海外旅行に行くのがより難しくなった」ということなので、1つ目の解答例のようになります。しかし、英語では2つ目の例のように原因に当たるものを(ここでは「円安」)をS(主語)にして、S make(s) it harder to …のような言い方をごく自然にするので、「○○のせいで…しにくくなる」といった日本語をこのタイプの表現にスムーズに置き換えられるようにしておくと便利です。今年の3月に東京地裁が旧統一教会に解散命令を出した際、オーストラリアのABCニュースに識者として出演していた神田外語大学のジェフリー・ホール氏はそれがもたらす結果について、It’s just going to make it harder for them to practice their faith and gather money…のように説明していました(URLから飛ぶか、二次元コードでその部分を確認できます)。これも日本語で言うならば、「(解散命令の結果として)単に信仰を実践しにくく、資金を集めにくくなります」のような言い方が普通かもしれませんね。もちろん、逆に「しやすくなった」だとmake it easier to …という言い方が使えますし、形容詞を変化させることで様々な応用が可能です。
【練習問題】
1. このアプリのおかげで自分の毎日のスケジュール管理がやりやすくなった。
2. 天候のせいで予定通りイベントを開催できなかった。
[語句]
「アプリ」:app
「スケジュール管理」:「スケジュールを管理する」と考えると、manage one’s scheduleなどが使えます。
「予定通り」:as scheduled
[解答]
1.
This app has made it easier for me to manage my everyday schedule.
Thanks to this app, it's now easier for me to manage my everyday schedule.
ポイント:「…のおかげで、○○が~になる」のような言い方を「…が○○を~にする」と置き換える癖をつけておくと、1つ目の例のような英語をスムーズに出せるようになっていきます。もちろん、日本語に沿って、thanks to… 「…のおかげで」という表現を使い2つ目のように表現することも可能です。
2.
The weather made it impossible to hold the event as scheduled.
We couldn’t hold the event as scheduled because of the weather.
ポイント:makeの使い方は1と同じですが、ここは「できなかった」なので、made it impossible to…とする必要があります。また、2つ目の日本語に近い形を選ぶなら、「のせいで」というマイナスのニュアンスを表現するために、because of…やdue to…を当てるのがよいでしょう。
プロフィール
北村一真(きたむら・かずま)
1982年生れ。2010年慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大学受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、09年杏林大学外国語学部助教、15年より同大学准教授。著書『英文解体新書』『英文解体新書2』(ともに研究社)、『英語の読み方』『英語の読み方 リスニング篇』(ともに中公新書)、『英文読解を極める』(NHK出版新書)、『文法知識と読解力を高める上級英文解釈クイズ60』(左右社)。共著『上級英単語 LOGOPHILIA』(アスク)など。
ヘッダーデザイン:明石すみれ