おわら風の盆をもっと楽しめる【八尾おわら資料館】越中八尾の伝統的な町家で哀愁漂うおわらの魅力を体験
越中八尾に秋の訪れを告げる「おわら」
富山県富山市八尾町。富山と岐阜とを結ぶ飛騨街道の要所として栄え、古くから養蚕業や和紙の製造などにより富山藩の収益の6割以上を賄えるほどの豊かさを誇りました。
そんな八尾町に秋の訪れを告げる「おわら風の盆」は、毎年9月1日~3日にかけて行われる流し踊り。この時期に日本を襲う台風などを鎮め、五穀豊穣を祈願する祭りで、編み笠を目深に被った男女が哀調ある音色を奏でる胡弓や三味線、越中おわら節の唄に合わせて踊りながら、情緒豊かに町を流します。
伝統的なおわらについて学べるのが、八尾町東町にある「八尾おわら資料館」です。
おわらの歴史に触れる「八尾おわら資料館」
八尾おわら資料館があるのは、八尾町の旧町と呼ばれる東町。
現在に引き継がれている新踊りの振り付けや後進の育成に私財を投じて“おわら中興の祖”と呼ばれる初代おわら保存会会長の医師・川崎順二さんの自宅だった場所にあります。
2000年、旧川崎邸を改築し、資料館としてオープンしました。
納税の呼びかる唄や運動を促す唄も!?
歌詞や踊りについて学べる「資料展示室」
風情ある街並みと幻想的な流し踊りで、いまや全国的に知られるようになった「おわら風の盆」。特徴ある民謡や胡弓の調べを耳にしたことはあっても、どんなことを唄っているのか?など、実は富山県民でも詳しくないという人はいるのでは。
資料館の「資料展示室」では、そんなおわら節の歌詞や意味、楽器や衣装の由来など、おわらのいろはを学ぶことができます。
たとえば「唄」ひとつとってもーー
おわらの唄は「七七七五」を基本の形式としていて、俳句のような季語はありません。
さらに驚きなのが、唄のバリエーションの数が多く、いくつあるのかもはっきりわかっていないのだとか。
というものも、おわら節は、七七七五の「五」の前に「オワラ」を入れること以外に決まりはなく、だれでも自由に唄を作ることができるから。
そのため、役場が出した納税を呼びかける唄、健康促進のための運動の唄など、さまざまな歌詞が存在していました。こうして生活の中におわらを取り入れることで、普及にもつながると考えられていたんです。
数ある唄の中には、頭に五文字を加えるものや、字余りなどもあり、そうなると唄い手の技量も必要とされるそう。
長い歴史の中で淘汰され、消えてしまった唄も多くあります。それらの中で、唄い手たちが歌い継ぎ、聴く人々の心に響くものが残っていくのだそうです。
踊り手の衣装や、地方の楽器も展示
2階の展示室では踊り、唄や楽器を演奏する地方(じかた)といった、おわらの重要な要素についても紹介されています。
踊り手の衣装は町ごとに異なっていて、その特徴や柄についての解説もあります。はっきりとした決まりはないものの、およそ25歳までの独身男女に与えられるのだそう。
宵闇に映えるぼんぼりの灯りの下で耳にすると、思わず胸が締め付けられるような哀愁をかきたてる胡弓と三味線の音色も、おわらの大きな魅力のひとつ。
館内では、おわらの歴史だけでなく唄や楽器についても職員の川井直紀さんが詳しく教えてくれました。
「胡弓や三味線はおわらにおいて重要な楽器ですが、皮が猫や犬だと知ると、子供たちは驚きますよ」(川井さん)
さらに弓は馬のしっぽでできているので湿気によって音が変わりやすく、地方の人は特に気を配るのだそう。いろんな側面からおわらを知ると、本祭をより面白く感じられそうです。
八尾の伝統的な家屋を再現した「町屋棟」では三味線体験も
「町屋棟」は、格子戸と日本瓦葺き、漆喰仕上げが美しい町屋の佇まい。おわらが生まれた八尾の伝統的な町屋を再現した、歴史の重みを感じる空間です。
ここではVRなどのデジタル展示や、三味線の演奏を体験することができます。
三味線体験は事前予約制で30分、3000円(税込)。この日は、おわら保存会の新井弘さんが、丁寧に手ほどきしてくれました。
基本的な持ち方や仕組みを教わりながら、30分。まったくの初心者でも時間内の体験だけで簡単なフレーズを弾けるようになります。
おわらの魅力を資料館でより深く感じられるように
「八尾よいとこ おわらの本場 二百十日を オワラ 出て踊る」
唄に出てくる「二百十日」。
おわら風の盆が行われる9月1日は立春から数えて210日目で、古くから風の災難が多い厄日とされてきました。風を鎮め、豊作を願う「おわら風の盆」、その意味や歴史を知ると、もっとおわらと八尾の町を好きになるかもしれません。
出典:KNBテレビ「いっちゃんKNB」
2024年8月23日放送
記事編集:nan-nan編集部
【八尾おわら資料館】
住所 富山県富山市八尾町東町2105番地1
営業時間 9:00~17:00
定休日 年末年始
※臨時休館あり