Crystal Kay「Love Myself」インタビュー――CKからの<自分をね 愛してあげて欲しい>というメッセージ
――今年デビュー25周年を迎えたクリスタル・ケイさん。13歳でデビューしてから歌と共に歩んできて、10代、20代、30代…と、年代ごとに歌との向き合い方は変わってきていますか?
「変わってきましたね。10代の頃は洋楽っぽい曲を歌いたいと思っていました。“全米チャートにあるようなカッコいい曲じゃないとイヤ!”みたいな(笑)。歌う曲もそういう感じで選んでいました。で、20代は葛藤の時期。ちょうど「恋におちたら」をリリースしたのが19歳だったんです。(ドラマ主題歌になったことで)それまで以上により多くの人に聴いてもらった曲ではあるんですけど、自分の中では、やりたいテイストとは違うというか…。「恋におちたら」も今聴くと、すごくR&Bなんですけどね(笑)。ただ、デビュー当時からやってきたものと比べたらガラッと雰囲気が違う気がして、自分が歌いたいものと求められるものとの間でバランスを取るのが結構大変でした」
――ニューヨークに行ったのは20代後半?
「はい。そこで自分のアイデンティティがわかり始めた気がします。“自分のユニークさをもっと受け入れてあげればいいんだ“って思えましたし、ニューヨークでの経験が自信にもなりました。そのあたりから、”もっと人のために歌わなきゃいけないんだ“っていう気持ちに、シフトしていった気がします。多分、ニューヨークでの私はQuarter-life Crisisだったと思うんです」
――Quarter-life Crisisって、20代後半から30代くらいの人たちが、自分の人生や生き方に漠然とした不安や焦りを感じやすい時期、状態のことを指す言葉ですよね。年齢的にもちょうど渡米の時期と重なります。
「そうなんです。もう本当にどうしたらいいのかわからないし、迷っていましたね…。でも、そのときに同世代のみんなが同じように悩んでいるんだなっていうのも感じられて。そのときに、“自分のためじゃなく、みんなのために歌わなきゃ!”って。そこからは私なりのJ-POPを届けたいと思って、みんなが言いにくいことを代弁したり、希望が感じられたりするメッセージを意識した歌に変わっていきました」
――10代の頃のような“自分が歌いたいのはコレ!”ではなく?
「“みんなはどういう歌が聴きたいんだろう?”とか、“こっちのほうがみんなに伝わりやすいかな?”っていう気持ちにフォーカスできるようになったのかな?…ちょっと大人になりました(笑)」
――そうした気持ちの変化の中で迎えた25周年イヤーは、前作の「That Girl」、今回の「Love Myself」に込められたメッセージから、“自分らしさ”をテーマに活動されているように感じました。
「個人的に、2年くらい前から“セルフラブ・ジャーニー”が始まっているんだと思います。だから「Love me」(2022年12月7日配信)もリリースして。自分を大切にすることがどれだけ重要なことなのか?っていうのが、やっとわかり始めました。自分のことをちゃんとわかって、受け入れて、大好きでいてあげないと、自分自身がいいヴァージョンの自分になれないし、人を愛するとか、優しくするとかっていうのも難しくなってくるんだなぁって。それに気付いたのは、私の場合、失敗した恋愛だったんですけど(苦笑)。でも、特に今は何がリアルかもわからない時代で、SNSとかも毎日見て、自分と比べてっていう感じだと思うので。そうじゃなくて、もうちょっと自分に意識を向けてあげる。プラス、ちゃんと“boundary=境界”も作ってあげないと…って思うんです」
――境界というのは、自分を守るという意味でも?
「そうです。境界もいろんな張り方があると思うんですけど、自分を大切にする…ちゃんと“NOって言う”とか、“これは欲しい”とか、“これはいりません”とか、その意思表示ってすごく大事だし、必要だと思うんです。恋愛にも、仕事にも、それからメンタル的にも。特に日本人はNOって言えないから、それによって自分を犠牲にしてしまうことも多い気がしています。でも、それでいいパフォーマンスができるはずないから、ちゃんと自分にとってのいいもの、悪いものを知っておくことが大切だと思って。そこがしっかりしていると世界が変わって、自分もベターになるし、周りもベターになるし。…って言うのを、自分にも言い聞かせてる感じです(笑)」
――そんな中、今回完成したのが「Love Myself」。まさしく今のクリスタル・ケイさんのテンションにぴったりの1曲だと思うのですが、手掛けたのは「恋におちたら」、「幸せって。」などでおなじみのMisako Sakazumeさんですね。プロデュースはご自身ですが、“誰にどんな楽曲を”っていうところから考えられたんですか?
「前作「That Girl」の☆Taku(Takahashi)のときもそうだったんですけど、25周年という大きいタイミングですし、メッセージ性の強いものを書いてくれるのはSakazumeさんだなと思って」
――Sakazumeさんにはどんなリクエストをされたんですか?
「リクエストしたことは…(キーが)高くない。踊りたくなる。1回聴いたら忘れられない。歌詞に関しては、女性目線で、みんなが元気になるような前向きなもの。それくらいかな。(Sakazumeさんは)同じ女性だし、私のことも昔から知ってくれているので、そこまで細かくは言いませんでした」
――「Love Myself」が手元に届いたときは…。
「“わっ、めっちゃいいじゃん!”って感じでした。場面を作るのがすごく上手で、今回もしょっぱなから<無いモノばかり 見つけ上手で>って歌詞が入ってくるから、“さすがだな!”って思いました。で、“これはアレンジが大事だよね”ってことになったんですけど、これが結構苦戦したんです。なかなかピンと来るものがなくて。私のイメージは“ディスコファンクな感じにしたい”だったんですけど、それってすごく繊細な調整が必要なんです。音のテイストとビートのパターンで同じディスコファンクでも年代が変わってきちゃうから、いい塩梅のところを見つけるのが本当に大変でしたし、時間もかかりました」
――紆余曲折の末、UTAさんに?
「そうなんです。ノリ(木梨憲武)さんの「伝えなくちゃfeat. AI, Crystal Kay, DOUBLE,福原みほ, Full Harmony,林 和希, JAY’ED,松下洸平, Mhiro,露崎春女」のレコーディングでスタジオに行ったらUTAくんがいたので、“アレンジして〜!”ってお願いしたらOKしてくれたんです。少しずつイメージに近づいていく中で、せっかくディスコファンクにするからにはシンセ、シンセしたくない気持ちが湧いてきちゃって。“生感や温かみが欲しいんだけど、どうにかならないかな?”って相談したら、UTAくんが“じゃあ、生にしよう”と言ってくれました。だから、ストリングスも、ブラスも、全部生なんです」
――豪華!
「しかも、録音にも立ち合わせてもらったんです。ギター、ベース、ストリングス、ホーンセクション、全部のパートで、“こうしてください、ああしてください”ってやらせてもらって。朝から晩までかかってすごく大変でしたけど、その倍以上に楽しかったし、すごくやりがいがありました」
――1音1音にこだわりが詰まっているんですね。
「そうですね。「Love Myself」のような楽曲は、お利口さんな感じだと本当もったいないので。“もっと動いて、もっとグルーヴ感を出したほうが、絶対に良くなる!”と思ったんです。ちょっと面倒くさかったかもしれないですけど、みなさん素晴らしいミュージシャンたちばかりで、私がやりたいことをその場でやってくださったので、すごくありがたかったです」
――イントロも印象的でした。
「そう、イントロ! イントロについてもSakazumeさんにリクエストしました。最近の曲ってインパクトのあるイントロがあまりないので、“印象に残るイントロがほしい”って話をして。そしたら、ちょっとマイケル(・ジャクソン)っぽい、いい感じのイントロがついてきたので、“イェーイ!”と思って(笑)。レコーディングもそんなノリでブースに入って、気持ちよく歌えました」
――イントロの有無が歌い手に与える影響って…?
「イントロがあると準備できるし、ライブでも盛り上がりますよね。“あ、この曲!”ってなったりするから。もちろん曲のスタイルによって、いきなり始まったほうがドラマチックな場合もあるんですけど、全部ないのはちょっとつまらないかな…」
――最初の楽曲のリクエストのお話では、“みんなが元気になるような前向きなもの”という話題も出ましたけど、本当にこの楽曲を聴いていると元気が出ます。
「ありがとうございます!」
――<自分をね 愛してあげて欲しい>というメッセージは、クリスタル・ケイさんのセルフラブ・ジャーニーにも通じると思うのですが、世の中には、わかっていてもできない、なかなか自分を受け入れられないという人もたくさんいると思うんです。そういう人たちにクリスタル・ケイさんなら、どんな声をかけてあげますか?
「これ、私も何かで知ったんですけど、“親友に喋るように自分に喋りかけてあげよう”っていうすごくいい言葉があって。親友に対して意地悪なことって言わないじゃないですか。でも、自分に対してだと“何やってんだよ、バカ”とか言っちゃいますよね?」
――確かに。同じ落ち込んでいるシチュエーションでも、親友なら元気付ける言葉をかけるけど、自分に対してはダメ出ししちゃいます。
「ですよね。親友だったら、“大丈夫! 次はできるよ”とか言ってあげるじゃないですか。それを自分に対してもやればいいだけ。簡単ですよね? まずはそこからスタートしてみるといいと思います。それから、独り言を大きな声でするのもいいですよ。例えば、すごく嫌なことがあったとして、そんなときは私は普通に自分に聞くんですよ。“なんでこんなに嫌な気持ちになってるの?”って。それに対して、“○○って言われたから”とか“自分がこんなことしちゃったから”とか、声に出して答えるんです。質問してあげると答えが出るし、それを口に出すことによって、“あ、そうか!”って気付く。多分、そうやって聞かないと気付かないっていうか、“何となく今日はこういう気分なんだな”って決めつけて終わっちゃうんじゃないのかな? でも、気付けたらアングルを変えられるので、大きな独り言はおすすめです(笑)」
――早速実践してみます(笑)。
――冒頭で年代ごとに変化してきた歌との向き合い方についてお伺いしましたが、歌うこと自体についてはどうでしょう。このタイミングでの変化や成長を感じることはありますか?
「この曲を聴いた人に、“ミュージカルが効いているのかもしれないね”って言われたときは、“やった!”と思いました」
――“ミュージカルが効いている”というのは?
「曲の主人公になりきる…みたいな。歌入れのときも、もっと表情を出すとか、ちょっと大袈裟なくらい癖をつけることを意識してやってみたんです。それによって自分の気持ちもアガったし、言葉が出てきたというか…。ミュージカルと音楽活動って、パフォーマンスという部分では変わらないんですけど、ミュージカルの場合は歌を届けるというより言葉を届けるほうが大事なんです。きれいに歌う必要はなくて、セリフや言葉が客席の一番奥に座っている人にまで感情がちゃんと伝わることが重要で。むしろ、ミュージカルでポップスを歌うようにきれいに歌っても何も響かないというか…。ただ、幸いなことに、『RENT』のモーリーン役も、『ピピン』でのリーディングプレイヤー役も、パフォーマーという要素がメインの役で、普段の私とあまり変わらなくて、自分らしさをフィーチャーしてよかったところがあったんです。そこはラッキーだったと思います。あと、歌うことで変わったところでいうと、パフォーマンスがやっと自分らしくなってきた気がします(笑)」
――のびのびできるようになってきた?
「かもしれないです。皮が剥けてきたというか、やっと自分を捨てて開放できるようになってきたというか。“遅いよ!”って感じですけど(笑)。でも、ライブを観てもらって初めて、私がどんな人なのかがわかると思います。多分、テレビなどで見ているイメージしかない人が多いと思うので。だから、たくさんの人にライブを観てもらいたいんです。ロックフェスとかも、これからどんどん出ていきたいなって思っています」
――歌うことが年々楽しくなってきている感じでしょうか?
「はい。それは自分で歌っていても感じます。“あ、今、自分楽しんでるな!”とか、“自分のすべてを見せられてるな。よっしゃ!”とか。そういうときって、余計なことを考えていないから、やりたいことが全部できるんですよ。だから、すごく楽しい!」
――そう聞くと、12月21日に開催される25周年 LIVE 『CKニーゴー~25TH ANNIVERSARY』が楽しみになります。今回の「Love Myself」が聴けるだけでもすごく元気をもらえそうなんですが、どんな内容になる予定ですか?
「本当、元気出しまくりなステージになります。25周年ということで初期の曲から最近の曲まで、全部盛り込んだセットリストになっていますし、かなり踊るので楽しみにしていてください」
――歌うことが楽しくてたまらないというクリスタル・ケイさんの今の想いが、“CKニーゴー”のステージで爆発すると思っていいですか!?
「はい! 爆発します!(笑)」
(おわり)
取材・文/片貝久美子
RELEASE INFORMATION
2024年11月22日(金)配信
Crystal Kay 「Love Myself」
LIVE INFORMATION
Crystal Kay Billboard Live Tour 2024
TOKYO
2024年11月26日(火) 1st stage open 16:30 start 17:30 / 2nd stage open 19:30 start 20:30
2024年11月27日(水) 1st stage open 16:30 start 17:30 / 2nd stage open 19:30 start 20:30
Crystal kay 25周年 LIVE 『CKニーゴー~25TH ANNIVERSARY』
■日程:2024年12月21日(土)
■会場:KT Zepp Yokohama
■時間:open 16:30 / start 17:30
■チケット:1F スタンディング7,700円(ブロック指定・入場時別途ドリンク代・税込)
2F指定席SOLD OUT
Special Guest:m-flo(☆Taku Takahashi & VERBAL) 決定!!
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