Yahoo! JAPAN

【鎌倉 イベントレポ】鎌倉アップデートアカデミアvol.3-「声を届ける」のデジタル実装を考える

湘南人

画像出典:湘南人

2025年4月11日(金)、江ノ電長谷駅から徒歩2分のオルタナティブスペース「古民家ゆりいか」にて「鎌倉アップデートアカデミア vol.3」が開催されました。

画像出典:湘南人

鎌倉市議会議員・藤本あさこさんが主宰する「鎌倉アップデートチャレンジ」と、古民家ゆりいかの共催による当イベントは、鎌倉市民の意識や知見をアップデートすることを目的に開催されており、今回で通算4回目を迎えます。

「声を届けること」のデジタル実装を考える

今回のテーマは「“声を届ける”のデジタル実装を考える」。
ゲストには、AIエンジニアでSF作家の安野貴博さん(オンライン登壇)と、安野さんとともにAIプロジェクト「デジタル民主主義2030」を推進する「チーム安野」のメンバーお二人を迎え、政治におけるAIの活用について意見を交わしました。

画像出典:湘南人 安野貴博さん

冒頭で藤本さんは、鎌倉市の課題を市内だけで解決するのには限界があると話し、「業界の第一線で活躍する方を招き、外部の視点を取り入れつつ鎌倉の現状と重ねて議論することが、このイベントの目的」であると説明。

2024年の東京都知事選に無所属・政党支援なしで立候補した安野さんは、デジタル技術を活かして市民の声をオープンに取り入れる姿勢が大きな反響を呼び、わずか1ヶ月の選挙活動で全体5位となる15万票を獲得しました。

「今回は、安野さんが掲げてきた『市民の声を反映する仕組み』への取り組みや、進行中のプロジェクト、今後の展望についてお話を伺いたい」という藤本さん。

画像出典:湘南人 藤本あさこさんと安野貴博さん

「4年間の議員活動を通じて、市民の声が行政に届かず、議員の発信も市民に届かないというミスマッチを実感してきた。今年3つの選挙を控える鎌倉で、この課題をどう乗り越えていくかが課題」と述べます。

また、鎌倉市がスマートシティの一環として、市民の声を可視化し、政策に反映する「合意形成プラットフォーム」を導入していることにも触れ、新しい技術やアイデアに前向きな鎌倉だからこそできることがあると伝えました。

画像出典:湘南人 チーム安野のメンバー、青山さん(左)と 根本さん(右)

会場には「チーム安野」のメンバーである根本さんと青山さんが参加。根本さんは、日本の行政・政治をアップデートするAIプロジェクト「デジタル民主主義」を推進し、自治体や行政との連携を担当。青山さんはエンジニアとして、AIの開発や関連システムの設計を手がけています。

安野さんは、もともと大学でAIに関する研究に取り組んでおり、その後はエンジニアとしてAI関連サービスの開発に従事。2社のスタートアップ起業を経て、現在はSF作家としても活躍しています。

「昨年は東京都知事選に出馬し、政治の分野にもチャレンジした。それぞれの活動は一見バラバラに見えるかもしれないが、私の中ではすべて『テクノロジーを使って未来を構想し、実装していく』という一つのテーマでつながっている」と自身の歩みについて説明。

画像出典:湘南人

また、「AIは『政治には関係ない』と思われがちだが、AIの仕事に関わってきた経験を通して、選挙にも十分活用できると思った」と政治とAIの親和性についても言及。都知事選において15万票を獲得した要因は、AIを活用した「双方向型の選挙」を実現した点にあると分析します。

「これまでの選挙は、候補者の考えを一方的に伝える“ブロードキャスト型”が主流だったが、インターネットやAIの進化によって、有権者の声を候補者が受け取る“ブロードリスニング型”が可能になった」と説明。

選挙活動の新たなスタイル

画像出典:湘南人

「聴く・磨く・伝える」の3ステップで選挙戦を展開した安野さん。

「聴く」のステップでは、ネット上のさまざまな声を集め、AIで可視化。NewsPicks(YouTubeの番組)で石丸伸二候補と対談した動画に寄せられた約2〜3000件のコメントをAIを使って分類・グループ化することで、全体の意見の傾向を把握。その他、SNS上の膨大な意見も同様に収集し、同様に分析、可視化しました。

「磨く」のステップでは、ウェブ上に掲示板を設け、誰でも安野さんのマニフェストに修正提案ができる仕組みを導入。15日間で104件の提言を受けたマニフェストは85件のアップデートを実施。安野さんは「どんな政治家でも完璧な政策は作れない。多様な視点を受け入れ、取捨選択しながらマニフェストを磨いていく事が重要」と話しました。

「伝える」のステップでは、自身の政策を学習させた「AIあんの」というAITuber(AIを活用したYouTuber)によるライブ配信を行い、誰でも自由に質問できる仕組みを提供。「質問にはオンラインと電話の両方で対応。1万件近く寄せられた質問にそれぞれ個別の回答ができた。さらに質問の内容を分析し、把握することで多くの学びが得られた。」

画像出典:湘南人

これらの実践をもとに、現在は「デジタル民主主義2030」という新たなプロジェクトを始動。
さらに進化した「聴く・話す・見える化」を強化する3つのデジタルプロダクトを開発しています。

「デジタル民主主義2030」を構成する3つの柱

「公聴AI」・「いどばた」システム・「Polimoney(ポリマネー)」という3つの柱で構成されている「デジタル民主主義2030」。それぞれどういったものなのでしょうか。

画像出典:湘南人

「公聴AI」は、市民の声を集めて、意見の傾向を可視化するツールで、ブロードリスニングのさらなる進展が目的。現在、根本さんが自治体と連携しながら導入に向けた取り組みを進めています。

「いどばた」システムは全国民で井戸端会議をするような感覚で、誰もが自由に議論し、政策への提案ができる仕組み。国民の知恵を持ち寄って、アイデアに磨きをかけることを目指しています。

「Polimoney (ポリマネー)」は、資金の経路を可視化するダッシュボード。政治資金の透明化が目的で、青山さんがシステムを設計しました。

画像出典:湘南人

「現在の政策決定や予算配分は根拠が不透明。これは鎌倉市に限らず、多くの自治体に共通する課題だと思う。従来のパブリックコメントや自治会経由の意見収集では限界があり、デジタルを活用して市民の声を拾い上げる仕組みが必要」と、藤本さんもAIによる新たな仕組みの必要性を強調しました。

対面とネットの意見を融合させる

鎌倉で自治会長をしている男性は「自治会のイベントで話をする中で、住民の悩みに気づくことがある。住民一人ひとりの気持ちとデータを組み合わせることで、解決に近づくようなAIの使い方ができれば」と話しました。

画像出典:湘南人

「鎌倉市は高齢者も多い。AIを利用する属性に偏りが出ることで、意見が偏るのではないか」という参加者からの質問に、青山さんは「対面で生まれる議論とネット上の意見がつながることが大切」と説明。「従来の議論は『一度に一人しか話せない』『入りづらい雰囲気がある』などの課題があったが、AIを通じて、誰もが自分の意見を伝え、それを整理・共有できる仕組みがあれば、自治会長が住民の声に耳を傾けるような対話が広がる」と語り、市民の意見が政策に反映される「実感」と「つながり」を得られるシステムを目指して開発を進めていると話しました。

チャットボット体験会

イベントの後半には、開発中のチャットボットを実際に体験できる時間が設けられました。参加者はQRコードを読み取り、自身のスマートフォンでチャットを体験。この体験会は、今回が初の試みだそう。

使い方はシンプルで、参加者がAIとの対話を通して自分の考えや悩みを入力すると、AIが内容を分析し、重要なキーワードや共通項を抽出して可視化。それをもとに、より深い議論や政策提案へとつなげることが可能になります。

画像出典:湘南人

会話のペースはユーザー次第で、まるで人と話しているかのような自然な対話が可能。まだ開発段階ですが、日常的にこのツールが使えるようになれば、政治をもっと身近に感じられるようになるかもしれません。

AIが知識の差を埋めるカギに

「それぞれが持つ知識や内容に差があることで、議論することが難しくなってしまう。AIが説明することで市民の知識の差を埋めつつ、話を整理して前に進める手助けができるのでは」と藤本さん。

青山さんは、「議論の本質は他者の視点を取り入れて考えを深め、柔軟に変化させることにあるが、その仕組みはまだ整いきっていません。ただ、意見を蓄積することは可能なので、過去のやりとりを活用して議論を発展させることを可能にしていければ」と今後の展望について話しました。

画像出典:湘南人

一人ひとりの声が反映される社会へ

一人ひとりの声を丁寧にすくい上げ、政策に反映していく。そんな社会の実現に向け、デジタル民主主義は着実に広がり始めています。こうした変化を自らの手で実現するために、政治に関わることの重要性を再認識した今回の鎌倉アップデートアカデミア。

鎌倉では今年3つの選挙が予定されており、まずは4月27日(日)に鎌倉市議会議員選挙が控えています。身近な課題と向き合い、思いを届ける第一歩として、ぜひ投票所に足を運びましょう。

過去の「鎌倉アップデートアカデミア」Vol.0、Vol.1、Vol.2前編・後編の内容はこちらからご覧いただけます。

鎌倉アップデートアカデミアvol.3

開催日時

2025年4月11日 19:00〜20:30

開催場所

会場名 古民家ゆりいか
住所:〒248-0016 神奈川県鎌倉市長谷2丁目15−14

駐車場:なし

参加費

2,500円(税込) 別途ワンドリンク代500円(税込)

主催

鎌倉アップデートチャレンジ
古民家ゆりいか

【関連記事】

おすすめの記事