魚の泳ぎ方を水中ロボットに応用? <アミメハギ>は尾びれ閉じることで加速することが判明
アミメハギはカワハギ科に属する小型種で、浅海の藻場などで見られる魚です。
このアミメハギを観察すると、ホバリング状態から加速して前進しようとする前に、尾びれを閉じる傾向が見られるといいます。
金沢工業大学工学部機械工学科の福江高志研究室、のとじま臨海公園水族館、岩手大学の研究チームは、本種が直進遊泳するときの力学的特性に関する研究を実施。研究の成果が『nature scientific reports』に掲載されました(論文タイトル:Relationship between caudal fin closing motion and acceleration capability of Rudarius ercodes balistiform locomotion)。
アミメハギ
アミメハギはフグ目カワハギ科アミメハギ属に分類される魚で、主に浅海の藻場や岩礁などで見られます。
名前の通り体に網目模様を持つほか、カワハギ科でよく見られるカワハギと比較して小型であり、体長は8センチほど。浅場の釣りで時々見られるものの、あまり食用にはならないようです。
アミメハギの遊泳
浅海ではお馴染みの魚であるアミメハギですが、本種はホバリング状態から加速して前進しようとする前に、尾びれを閉じる傾向が見られるといいます。
そのような中、金沢工業大学工学部機械工学科の福江高志研究室、のとじま臨海公園水族館、岩手大学の研究チームは、アミメハギが尾びれを閉じることにより、「平均加速度(アミメハギが泳ぐ速度に達するまでの平均的な加速度)を向上させている」と仮説を立て、水槽観察およびCFD(コンピューターを用いた流体の流れをシミュレーションする手法)を用いて検証を実施しました。
平均加速度が最大30%増加
検証の結果、アミメハギは尾びれを閉じることにより、平均加速度が最大で30%増加することが判明。さらに、尾びれの開き角が小さくなるにつれて、加速性能が向上することが明らかになったのです。
これは、尾びれを閉じることにより発生する推力は低下するものの、抗力の低下が上回ることから、相対的に前進の加速能が高くなるからとされています。
また、尾びれを開くと加速能力が小さくなる一方で、背びれと尻びれから流出した逆カルマン渦が尾びれから発生したカルマン渦によって補強。その結果、推進効率が向上し輸送コストが削減されることがわかったのです。
ロボット分野での活躍が期待
今回の研究結果は、アミメハギが加速時に尾びれを閉じるとうい動作が流体力学視点においても優位であり、本種が必要に応じて尾びれを閉じ加速することにより、生存率を高めていることを示唆するものとなりました。
また、バイオミメティクスの視点においては、水中ロボットの加速性能向上に役立つ可能性があるほか、複数のひれの動きを連携させることによる前進能力の高い推進機構が得られる可能性が期待されています。
(サカナト編集部)