建設現場のノウハウ・技術「失われる可能性」8割超が危機感 野原グループ調査
建設DXに取り組む野原グループの「BuildApp総合研究所」は2025年5月21日、建設産業従事者を対象に、建設現場のノウハウや技術の喪失に関する調査を行い、その結果を発表した。
調査は2025年3月21日~31日、20代~70代の建設産業従事者1257人を対象に、インターネットで行った。
生産性向上や業務効率化の遅れが目立つ業務プロセス...最多は「施工管理」
建設業の倒産件数が目立っている。物価高に加えて、建設現場での職人不足やと人材の維持・確保にともなう人件費の高騰などから、事業の継続を断念するケースも少なくない。そうしたなか、日本人の5人に1人が後期高齢者となる「2025年問題」ともあいまって、建設業の人材不足の解決は喫緊の課題となっている。
調査ではまず、「ベテラン技術者の引退に伴い、現場の段取りや関係会社との情報伝達、現場連携といった仕事のノウハウがどのくらいの期間で失われる可能性があるか」を聞いた。その結果、5年以内に「その可能性がある」と回答した人は44.4%(1年以内=4.9%、3年以内=12.6%、5年以内=26.9%の合計)。さらに、10年未満(21.3%)、10年以上の期間をかけて徐々に(15.2%)まで含めれば、合計で80.9%だった。
これに関連して、「アナログ業務が多く、生産性向上や業務効率化が遅れていると思う業務プロセスはどれか」という質問では、最多は「施工管理」33.3%で、次いで「営業」28.4%、「施工・専門工事」27.2%、「見積・清算業務」24.3%などが上がった。
続いて、ノウハウや技術の継承についての質問として、「ベテラン技術者の持つ仕事の段取りや関係会社との伝達・共有・連携に関するノウハウが若手に十分伝えられていないと感じるか」と聞いたところ、「非常にそう思う」(16.5%)と「ある程度そう思う」(37.8%)の合計54.3%が、若手に十分に伝えられていないと実感していた。
ノウハウや技術の継承の具体的なやり方では、多い順に、「口頭での指導」36.2%、「打ち合わせ」33.3%、「図面への手書きメモ」26.3%など、アナログな方法に依存する現状が浮き彫りになった。さらには、「特に方法は取られていない」も26.9%いた。
では、「どのようにすれば、ベテラン技術者の持つ仕事の段取りや関係会社との伝達・共有・連携に関するノウハウが、若手に伝えられるようになるか」。これを聞くと、多かった回答は、「ベテランと若手が一緒にプロジェクトを進める」47.2%と、「ノウハウ引継ぎの仕組み作り(引継ぎ期間を設ける・ノウハウの継承を評価する制度を作る等)」34.9%が上がった。
だが、「ノウハウを継承するのは難しい(経験や勘に頼る部分が大きいため)」も29.6%という結果になった。22.7%は「BIMやデジタルツールを活用する」としており、ノウハウや技術伝達のデジタル化への期待が寄せられている。
なお、BIM(Building Information Modeling/ビルディング インフォメーション モデリング)は、建築設計に用いられるソフトウェアで、設計から施工、維持管理に関する情報を一元化して運用できるものだ。
BuildApp 総合研究所は、「BIMツール導入により、資材手配や協力会社との調整といった現場の段取り業務を代行・標準化させることで、建設現場を円滑に進めるノウハウや技術を次世代に継承し、品質を保ちながら一連の建設作業を遂行することが期待されています」と指摘している。