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【梅川リポート16】不動産業の挑戦と再生 妙高市唯一の不動産会会社社長に聞く、逆境を糧にした経営の歩み

にいがた経済新聞

ハセガワ不動産管理システム株式会社(新潟県妙高市)は妙高市唯一の不動産専門会社である

ハセガワ不動産管理システム株式会社(新潟県妙高市)は妙高市唯一の不動産専門会社であり、地域に根ざしながら幾多の困難を乗り越え、今日の事業基盤を築いてきた。

平成12年に長谷川定英初代社長(現会長)が自宅の一室を改装して創業した同社は、平成20年のリーマンショックによる大打撃を経て、賃貸市場の厳しさを痛感したという。派遣切りの影響で空室が一気に増加し、これまで満室だったアパート群が閑散とした状況へと一変。経営者やオーナーを悩ませる厳冬期を迎えた。

この窮地を打開する契機となったのが、平成23年の「レオパレスパートナーズ」への加盟である。当時直営店の撤退に伴い、地域の不動産業者がフランチャイズ店として事業を引き継ぐ必要が生じた。条件の厳しさから他社が辞退する中、同社の古川聡代表取締役社長の決断で同社が引き受けた。空きスナックが並ぶビルを改装し、新たな店舗を開設。管理物件数は一気に拡大し、会社の柱となった。最盛期には自社物件の倍近い売上を誇り、法人契約や建設現場の宿舎利用などによって安定した収益を確保したという。

レオパレス21パートナーズの上越店

しかし、レオパレスを巡る施工不良問題も影を落とした。募集停止により一時は物件の8割が稼働不能となる事態に直面したが、法人需要の継続利用に支えられ、大きな落ち込みは避けられた。加えて、古川社長は競合との差別化を図るため、早期に敷金の廃止や「スーパーゼロゼロプラン」の導入、365日24時間駆け付けサービスの展開など、入居者の利便性を重視した施策を次々と実行した。水漏れや鍵の紛失といったトラブルにも即応する体制は、入居者からの厚い信頼を得ている。

事業の柱は売買と賃貸に大別される。売買では自社分譲と仲介、賃貸では仲介と管理を主軸とし、四本柱の経営を展開する。かつては分譲が収益の中心であったが、新築需要の停滞により近年は仲介に比重が移る傾向にある。複雑な権利関係が絡む土地取引や相続登記の遅れなど、地域特有の課題にも直面するが、粘り強く対応を続けている。

一方で、妙高高原地区では新たな潮流が生まれている。香港やシンガポールを中心とする外国人投資家による不動産購入が急増しているのだ。民宿や旅館をリノベーションし再活用する事例や、農地を取得し開発を進める動きもある。古川社長は香港人の不動産会社と連携し、1億円規模の取引を成立させた実績を持つ。海外送金の遅延や行政手続きの複雑さなど課題は多いが、旺盛な需要は地域経済に新風を吹き込んでいる。

こうした経営の根底にあるのは、「お客様の喜びを我が喜びに」という理念である。会長時代の「1/100秒のサービス」という思想を受け継ぎつつ、より分かりやすく顧客感動を追求する言葉に置き換えたものだ。古川社長は元中学校教員(社会科)としての経験を活かし、人を変えるのではなく自らを変える姿勢を貫いている。社員の自主性を尊重し、顧客満足を超える感動を提供する姿勢は、組織の活力につながっている。

さらに古川社長は妙高市倫理法人会の会長を務め、地域経済研究会にも関わるなど、経営を超えた社会活動にも積極的だ。政治的立場を明確にしつつも、地域発展を優先する姿勢は一貫している。倫理法人会で学んだ「自己変革」の精神を経営に持ち込み、社員教育や人材育成に生かしている点も特徴的である。

同社の歩みは、逆境を突破する果断な決断と、地域に寄り添う柔軟なサービス改善の積み重ねである。レオパレスパートナーズとしての成功、外国人市場の開拓、顧客第一主義の徹底。いずれも「困難の中に機会を見出す」という古川社長の信念に裏打ちされている。地域に根差した不動産業の在り方を模索し続ける姿は、今後も注目に値するだろう。

ハセガワ不動産管理システム株式会社の古川聡代表取締役社長

(文・写真 梅川康輝)

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