群馬クレインサンダーズ・辻直人が主将として心掛けていること、レギュラーになる選手となれない選手の差とは?
Bリーグ・群馬クレインサンダーズSG辻直人選手が大阪市内の株式会社グラッドキューブを訪れ、金島弘樹代表取締役CEOと対談しました。かねてより親交の深い2人の対談は大盛り上がり。社会貢献活動「スリーピース」や、主将として考えるリーダーの役割や組織論、趣味の競馬談議など真剣な話から笑えるトークまで盛りだくさんの内容です。2回連載の2回目、じっくりご堪能ください。
【ゲスト】
群馬クレインサンダーズ
辻直人
1989年9月8日、大阪府羽曳野市出身。京都・洛南高時代にウィンターカップ2連覇、青山学院大時代に2年連続で大学4冠と輝かしい実績を残し、2012年に東芝ブレイブサンダース入り。Bリーグ発足後も川崎ブレイブサンダースの中心選手として活躍し、2021年から広島ドラゴンフライズ、2023年から群馬クレインサンダーズでプレー。日本代表としても2014年アジア大会、2016年リオデジャネイロオリンピック世界最終予選、2018、19年ワールドカップ予選などに出場した。身長185センチ、体重82キロ。
【聞き手】
株式会社グラッドキューブ代表取締役CEO
金島弘樹
大学卒業後、金融機関でトップセールスとして活躍。2007年に合同会社GladCubeを設立し、2008年、株式会社グラッドキューブに組織変更。2016年にSPAIAをローンチ。SaaS事業、マーケティングソリューション事業とともに規模拡大し、2022年9月28日に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たす。2025年5月21日には米国デラウェア州に子会社「SPAIA,Inc.」を設立。競馬AI技術を活用したグローバル展開を本格化。
■「コツコツ準備している人には不思議とチャンスが来る」
金島:2024-25シーズンは35歳にもかかわらず、3ポイント成功率はリーグ2位の43.5%と過去最高のスタッツを出しました。平均ターンオーバー数も0.86です。凄いですね。
辻:ありがとうございます。
金島:慰労会をしたら、私はいつも背中の筋肉を触るんですよね。柔らかいゴムまりのような筋肉で、力を入れたら強い、本当にすごい綺麗な筋肉です。自分自身も野球をやってたので、後背筋とか気にしていたんですけど、去年、辻選手の筋肉を触った時にシーズンですごい活躍するんじゃないかみたいなことを言ってました。そしたらこの数字が出たと。それで先日も触ったら昨年より仕上がりが良かったですね。結構早めに仕上げてますよね。
辻:そうですね。6月から始動して、段階を踏めてますね。
金島:2025-26シーズンも楽しみですが、一方でオリンピックの解説とか、いろいろなメディアに露出してますよね。どういうセカンドキャリアを歩むのか、いつか考えなければいけない時期が来るよという話もしたり。目標は何歳でしたっけ?
辻:40歳までは一戦でやりたいなと思ってます。
金島:キングカズさんみたいに58歳までとか。
辻:いや、もう凄すぎます。
金島:僕が46歳で、辻選手が35歳。50メートル走るだけでも壮絶なイメージですが、58歳になってもあんなに走るのは凄いですよね。群馬クレインサンダーズではキャプテンも務めていますが、意識していることはあるんですか?
辻:こういう言い方すると年を感じるんですけど、最近の若い選手は僕が若い時よりも、自立してるって言うか、自分はこうだっていう選手が多いんですよね。僕がルーキーの時は先輩についていくのに必死で、ミスしないように、ちょっとビビりながらやってました。今の若い選手は自分が得点を取ってやるとか、自分を持ってる選手が多いんですよね。
金島:なるほど。先輩も怖いし、メンタルが弱い人はそこで潰れちゃうけど、強い人はそれによってプレッシャーを乗り越えていけるという半面、今の人たちもアグレッシブにやるけど、その分プレーを乱したり、チームと違う方針に行ったり、そういうリスクもあるようにも思えますね。
辻:仰る通りですね。
金島:どのように改善していくか、監督やコーチがやることでもあるんでしょうけど、キャプテンとしてはどうなんですか?
辻:組織なので、与えられた役割と違うことをしてしまったりすると試合の流れも変わってしまうし、大きく勝敗に関わってくる場面もあるので、そういったところは監督やアシスタントコーチが指導したりするんですよね。君が与えられている役割はこうだよと。
金島:学生の時から雑誌に載ったりして、まだ抜けきれていないのかもしれませんね。プロとしての自覚という面で。
辻:そうですね。なので、結構フラストレーションを溜める選手が多いんですよ。カリカリしたりとか、落ち込む選手もいるし。そういった選手を僕がフォローしたりとか、お前の強みはここだからチャンスは絶対に来るからとか。でもコートに立たないと自分は評価されないし、まずは与えられたことを全力でやる。そうしたら絶対にチャンスは来るからっていう話はするんです。
金島:なるほど。選手のポテンシャルはプロに行くレベルですから相当高いと思うんですけど、レギュラーになれる人と試合に出れない人。その差って何なんですか? 会社員でも自分はやっているのに評価されないという側と評価する側で視点が違ったりするんですけど、そのあたりどうなんでしょう?
辻:上に行く選手は負けず嫌いというのが絶対的に必要だと思います。負けず嫌いだから向上心に繋がっていくと思うんですけど、そうじゃない選手は自分はこうだからっていうこだわりが強すぎて、求められている役割と違うことをしてしまって、チャンスをもらえなくなります。そこで落ち込んで、もういいやってなる選手はそこで止まるんですけど、いつかチャンスが来ると信じて、コツコツ準備している人には不思議とチャンスが来て、何かきっかけをつかむタイミングが出てくるんですよ。そういう選手はやってきた分バーンと跳ねて、一気にチャンスをつかむ。
金島:なるほど。勉強でも仕事でもプレーでも、よく言われるのは積み重ねが重要であり、かつ負けず嫌い、いわゆる諦めない気持ちってことだと思うんですけど、コツコツと学んで勉強して、いつか花開いてバーンといく人って仕事でもあるので、聞いていてすごく参考になりましたね。バスケットファンや起業家の方、ビジネスマン、主婦の方とか、いろんなところで参考になる考え方です。僕も参考になりました。
■データで可視化されれば選手としても助かる
金島:僕たちはSPAIAというメディアを運営しています。野球やサッカー、バスケなど様々な「SP」スポーツを「AI」で「A」アナライズするということで「SPAIA」。SPAIA競馬はアメリカのラスベガスに拠点を構えてスタートすることになって、今後世界12カ国に対して競馬のAIサービスを展開していこうと考えています。競馬だけでなく、スポーツ選手のフィジカルやフォームチェックとかもAIで分析したいと思ってるんです。フォームチェックはどうしてるんですか?
辻:自分の感覚ですね。なので、そういうのはめっちゃ欲しいと思います。
金島:例えば、調子が良い時はボールをもらって何秒以内にシュートを打つけど、調子が悪い時は何秒以上かかるとか、ジャンプも調子が良いと50センチ跳べるけど、調子が悪いと48センチしか跳べないとか。そういうデータとかあったらどうですか?
辻:嬉しいです。シーズンに入ったら試合も多くなって疲れてくるんで、調子の波も出てくるんですよ。昨シーズンは10月、11月が良かったんですけど、ちょっと膝がおかしいかなってなってきたタイミングで調子が悪くなりました。慢性的にだんだん痛くなってきたんで、そういうのがデータで分かるとケアをしようとか対策も考えられると思います。
金島:状況の変化が多い中で、いろんなタイミングでシュートを打ってますが、腕の角度もいろいろ変えて打つんですか? それとも常に同じところで打つんですか?
辻:同じところです。でも、自分の中で得意、不得意がやっぱりあるんですよ。感覚では同じようにしてるのに、データで見ると実はちょっと違うとか、可視化される方が選手としても助かります。
金島:NBAのカリーとか、参考にしている選手、プレイスタイルが近い選手と比較して、データを並べてトレーニングをする。他の選手もデータを見て練習すればレベルが上がっていく。ファンとしてはめっちゃ面白いですね。
辻:そうだと思いますし、日本のレベルも上がりますね。
金島:そういうデータとかをもし今後SPAIAで提供できるようになったら、愉しさや観方が変わってくると思うんですよね。
■競馬の成績は過去最低!?
金島:バスケでは過去最高のスタッツを出しましたが、趣味の競馬のスタッツはどうですか?
辻:過去最低かもしれない(笑)。競馬もバスケも波があるんで。
金島:大きいの狙いすぎなんじゃないですか?
辻:かもしれないですね。性格的にワイドとか、複勝とかは無理なんです。やっぱり3連単に行っちゃいますね。
金島:万が一、億が一か分からないけど、ブロック、1000万円級ね、1回取りたいですよね。
辻:1回取りたいですね。
金島:SPAIA競馬のAI使ってます?
辻:まだ駆使できてないと思います。いろんなタイプのAIがあるじゃないですか。僕、結構信じるタイプなんですよ。これが二重丸(本命印)つけてるんやったらもう絶対来るやろって。最近のAIの実績みたいなのも出るじゃないですか。
金島:そうそう。AIの特徴を生かしてその予想がどれだけ当たってるのかっていうのを踏まえた上で、AIの印も予想ファクターの一つとして考えて、近走成績なんかも見て予想するっていう感じですね。新聞とかで見たら膨大な時間かかるでしょ。さらに予想家の予想を見たりしたら、情報が多すぎて混乱するじゃないですか。
辻:はい、混乱するんですよ。
金島:いずれね、SPAIA競馬にAIエージェントをつけようと思っていて。「3連単ばっかりですね。回収率で考えましょうよ」とか、「3連単じゃなくて3連複で買ってたら今日は〇万円勝ててたのに」とか。
辻:ああ、そういうの示してくれると。
金島:そう。自分で振り返ったりしなくてもAIが分析して教えてくれるようにしたら、3連単にこだわらなくてもトータルで勝てるようになるでしょ。スポーツでもそうですが、競馬も欲張りやから悪い癖が出てくるんですよ。そういうところにも気付けるような機能をSPAIA競馬で出していきたいなっていうのがあって。
辻:めちゃくちゃいいですね。
金島:競馬番組も出ますよね?
辻:そうですね。こないだも出させていただきました。僕、Xで買い目の公開をやりたいんですよ。買い目を出してバーンって当たったらめちゃくちゃ「いいね」がつくと思います。
金島:いつかSPAIA競馬の使い方をマスターして、企画でやってみてもいいんじゃないですか?
辻:やりたいですね。
金島:オフとか。
辻:はい。
金島:試合前とか。
辻:はい、わかりまし…試合前ダメです。試合前ダメ(笑)。
金島:分かりました。今回は群馬クレインサンダーズのキャプテン・辻直人選手にいろんな話をおうかがいすることができました。彼の責任感やバスケットへの思いとか、ビジネスの参考になった部分もあったとすごく感じています。2人で食事する時ってこんな話したことないから、僕も初めて聞くことばっかりだったんですけど、非常に参考になりました。人を引きつける能力がめちゃくちゃ高いなあと。
辻:今日は僕も新鮮な気持ちで参加させていただきました。本当にありがとうございます。バスケットの方もすごく盛り上がってますし、競馬の方も僕も参戦させていただけるということで、もっともっと盛り上げさせていただけたらなと思います。本当に今日はありがとうございました。
金島:ありがとうございました。またよろしくお願いします。
記事:SPAIA編集部