森下龍矢(ジュビロ磐田ユース出身)や三戸舜介(JFAアカデミー福島出身)が躍動。1年後のW杯に向けた”森保ジャパン”のサバイバル
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
日本代表は”6月シリーズ”の2試合を戦い、アウエーでオーストラリアに1-0と敗れたが、ホームでインドネシア6-0と大勝して、3月にW杯出場を決めていたアジア最終予選を首位で終えた。森保一監督は1年後の本大会に向けたテストとして、初招集の選手を含むフレッシュな選手を積極的に起用。アウエーのオーストラリア戦は予選突破に本気モードの相手に対して、最終予選の出場経験があるのはキャプテンを任された鎌田大地(クリスタル・パレス)とDF町田浩樹(サンジロワーズ)だけで、チャレンジの度合いが強すぎたと考えられる。
一方でインドネシア戦が相手の状況も違うが、何よりオーストラリア戦の時より今回のメンバーたちの練度が上がっていた。右ウイングバックで起用されて、町野修斗のクロスから豪快な右足ボレーで、チームの4点目を叩き込んだ森下龍矢も「オーストラリアに敗戦したから全部を変えるとか、根っこから変えるとか、そういうことは絶対ないので。やっぱりオーストラリア戦、もちろんそれを踏まえて変えることもありますけど、基本的な根っこのところはずっと同じ」と振り返る。
「1週間通して、若い選手で1回も入ってない選手、あるいは僕みたいに、たまに来る選手もいれば、そういう感じのチーム編成であったので。それがどんどん良くなっていったんじゃないかなと思います」
そう語る森下はジュビロ磐田ユースの出身で、明治大学、サガン鳥栖、名古屋グランパスを経て、現在はポーランドのレギア・ワルシャワで活躍している。2023年6月に行われたエルサルバドルとの親善試合でA代表デビュー、その年の9月には欧州遠征のメンバーに選ばれたが、4-1で勝利したドイツ戦から大幅にスタメンを入れ替えたトルコ戦でも出番なく終わった。当時まだ名古屋に在籍していた森下にとってショッキングな出来事だったようだ。
「あの時はすごく悔しかったです。トルコ戦で”1分でも出てえ”って思って、もう一所懸命アップしてましたけど、残念ながら出ることできなくて。やっぱり、あの時の悔しさがあるし、もしかしたら今回もそうなるんじゃないかって、ちょっと過ぎることもありましたけど。そこがたくましさですかね。海外に行って、出たらやるんだという、何かたくましさみたいなものを自分でキープしたまま代表活動に取り組めた」
そう振り返る森下に加えて、JFAアカデミー福島の出身で、中学時代を静岡県の御殿場市で過ごした三戸舜介(スパルタ)が、左サイドから躍動的なプレーを見せて、左からのクロスで鎌田の先制点をアシストもするなど、衝撃的なA代表デビューで、来年6月の本大会まで競走が活性化されることを印象付けた。三戸は初めてという左ウイングバックに「アップダウンで体が慣れていないところがあった」と振り返るが、外目からはそうしたことも家事させない躍動感だった。
どこで使われようと「目に見える結果、ゴールだったりアシストが一番大事」と三戸。3-4-2-1なら2シャドーが本職に近いポジションになりそうだが、現在の”森保ジャパン”でウイングバックもできることをアピールできたことは大きい。そのほか、インドネシア戦は左センターバックで初出場となった鈴木淳之介(湘南ベルマーレ)が攻守で存在感を見せれば、終盤には森下に代わって右ウイングバックに投入された18歳の佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)が、史上4番目の若さでのA代表デビューと思い難い、堂々としたプレーを見せた。
そうした選手の活躍を助けたのはキャプテンの遠藤航(リバプール)やオーストラリア戦に続くスタメンとなった鎌田大地(クリスタル・パレス)、この日のゲームキャプテンを務めた久保建英(レアル・ソシエダ)といった従来の主力メンバーの助けによるところが大きい。こうした流れだけを考えれば、オーストラリア戦でフル出場した元清水エスパルスの鈴木唯人(ブレンビー)にとっては少しハードラックなところもあるかもしれない。それでも鋭い仕掛けでチャンスを生み出すなど、2シャドーのポジションで存在感を示したことも確かで、移籍が決まったドイツのフライブルクで、さらに持ち味を強めていけるか注目される。
その鈴木と同じく、オーストラリア戦でフル出場し、敗戦の悔しさを味わった静岡市出身の関根大輝(スタッド・ランス)も、昨年10月の追加招集から3度目の代表活動でようやく試合デビューできたことは確かな前進だ。右サイドバックとしてブレイクした関根だが、攻撃的な3バックを用いる日本代表では右センターバックで使われることも想定して取り組んできた。途中、町田と3バック中央でスタメン起用された渡辺剛(ヘント)が立て続けに負傷交代する難しい状況で、関根自身は及第点のパフォーマンスだったと言える。
オーストラリア戦に敗れた後は起用法に批判も強まったが、2試合をトータルすれば森保監督の狙いがプラスに出た部分も多く、有意義な6月シリーズになったと言える。7月にはJリーグの選手がベースとなるE-1選手権が韓国で予定されており、清水エスパルスからの選出があるかどうかも注目されるが、そうした静岡県勢のアピールに限らず、ここから北中米W杯の本大会まで、残り1年間での競争に注目していきたい。