カスハラ対策 ビジネスネーム・クレーマーの声を穏やかにする技術
客からの迷惑行為や、理不尽な要求を受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題になっています。
ビジネスネームを導入!
さまざまな対策が広がるなか、仕事中に本名以外の名前を使う「ビジネスネーム」を導入している企業があります。一足早く、去年6月からビジネスネームを使っている、レザークラフト(革細工)の材料などを扱う大阪市のレザークラフトフェニックス 横井友哉さんのお話です。
レザークラフトフェニックス 横井友哉さん
私以外の全てのスタッフが、ビジネスネームを持っている状態です。カスハラであったり、女性スタッフがいるんですが、何かあってからやったら怖いなと。SNSで名前検索したときに、例えばプライベートのアカウントが分かってしまったり、トラブルに繋がりかねない。逆恨み、恋愛感情、そういうのがあってはいけないので導入しました。うちも小売店で、日々たくさんのお客さんと相対する中でなくはなかったんですよね。理不尽なことで叱られたりとかいうことがあったので近い将来もっと大きなトラブルになるんじゃないか、という懸念は持っていたんです。自分たちの大事な従業員なので、トラブルに巻き込まれるリスクを抑えるのが経営者側の仕事と考えたときには、決断してやるまでは早かったですね。
本名を明かさないことで、カスハラなど、懸念されるトラブルを防ぐもの。横井さん以外の13人のスタッフの方がビジネスネームを持っていて、店頭販売での対応や、オンラインショップでのメールのやり取りなども、全てビジネスネームを使っているそうです。
「長嶋翔平」「やまとあすか」好きな名前で仕事
では、実際にどんな名前を使っているのか、再びレザークラフトフェニックス横井さんに伺いました。
レザークラフトフェニックス 横井友哉さん
野球が好きなスタッフ、彼のビジネスネームが「長嶋翔平」。ミスター長嶋(茂雄)さんと、今をときめく大谷翔平さんからとったと言っていましたね。あとは推しのアイドル、アニメキャラなのか分からないですけど、キャラクターからとったり、奈良県出身のスタッフは「やまと・あすか」という名前だったり、ユニークなものが多いですね。1年経って、ずいぶんビジネスネームとして浸透してきたので、名前呼ばれるときも、ビジネスネームで呼んでもらっていたりしますね。僕らの業界だとビジネスネームを導入しているところは、おそらく他にないので、取引先さんも好意的、面白いね、と言っていただくことが多いですね。仕事のオンオフを切り替えたり、プライベートな方に尾を引かない、トラブルを持って帰らないという意味では、すごく意義のある制度だなとは思っていますね。
どんな名前にするか結構悩んでいたスタッフの方もいたそうですが、横井さんがビジネスネームを提案してから、導入まで1ヶ月かかっていないということでした。さらに、普段と違う名前を名乗ることで、仕事へのスイッチが入りやすいという思わぬ効果もあったそうです。
AIを使ってクレーマーの声を穏やかに!?
カスハラ対策、ここまではビジネスネームについてでしたが、実は今、「AIを使ってクレーマーの声を穏やかにする」という技術の開発が進められています。ソフトバンク株式会社 ソフトボイスプロジェクト代表 中谷敏之さんのお話です。
ソフトバンク株式会社 ソフトボイスプロジェクト代表 中谷敏之さん
お客様のお叱りの、怒りの声を柔らかくする。怒っているのは分かるけれども、怖くない声にするサービスです。コールセンターで、カスハラ、暴言などで苦しんでいる電話のオペレーターさんが多い、その方々を、どうにか楽にさせてあげたい、安心して働けるようにしたいということを目的に、お客さんの声からどうやって守るか考えたときに、AIを使って、その声自体を変えてしまうのがいいんじゃないかなと思って始めました。怒りを抑制できる音声って、好まれるのがロボットのような音声、若い声、アナウンサーのようないい声。その3つで始めたんですね。言葉が強くなる方はいらっしゃるので、AIを使って「心の盾」を設けることによって、お客様と対等な関係の中で、適切な応対をして、お客様にしっかりと満足を提供できるようにしたいと思っています。
言葉自体はそのままで、声のトーンなどをAIを使って変えることによって、話を聞く側のストレス、心理的な負担を和らげるというものです。ロボットのような音声は長い時間は聴けないので、今は、綺麗な声になるのを目指しているそう。この技術、来年度の事業化を目指していて、コールセンターなど多くのところで使ってほしいということです。