【「JAZZ ART せんがわ 2024」の「宇宙の仙川」】 巻上公一さんが総合プロデュース。「音楽」が生まれる瞬間を見た
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は11月7日から東京都調布市の調布市せんがわ劇場で行われている即興音楽のフェスティバル「JAZZ ART せんがわ 2024」の2日目プログラム「宇宙の仙川」。同フェスは音楽家、詩人の巻上公一さん(熱海市)が総合プロデューサーを務める。
今年17回目の「JAZZ ART せんがわ 2024」。巻上さんは初回から関わる。先週は静岡市駿河区での「しずおか連詩の会」に詩人として参加。先々週はロシア連邦アルタイ共和国から招いたグループ「チュルク・カバイ」の国内ツアーのアテンド、その前の週は「熱海未来音楽祭」。聞けば、近く開かれる東京・新宿区での演劇公演の音楽も制作しているという。八面六臂とはこのことか。
9日夜の演目は「宇宙の仙川」と題した、イタリアのパーカッション奏者アンドレア・チェンタッツォさん、ベーシストの藤原清登さん、サックスの纐纈之雅代さんのトリオ演奏。即興による8曲は、3者が互いの音に感応し、一つの楽曲を構成していくさまが実にスリリングだった。纐纈さんのサックスは何度か聴いているが、この日も安易なビブラートが一切ない、甘さを排した鋭利な演奏。満月に振りかざした日本刀のギラつきを感じさせる。
藤原さんのアップライトベースは時にうなり、時に歌い、時に沈黙する。開放弦を多用しているからだろうか。ベース単体から「アンサンブル」が聴こえる。チェンタッツォさんのパーカッションのセットは、左右に配した大小のシンバル4枚が仏塔を思わせる。ノートパソコンを駆使して電子音を出しながら、音程の異なる打楽器をひっぱたいたり、小突いたり、なでたり。
当意即妙、全身解脱。3人から立ち上った言霊ならぬ「音霊」が上空で交わる様子が浮かんだ。「音楽」が生み出される瞬間を見たような気がした。(は)
<DATA>
■JAZZ ART せんがわ 2024
会場:調布市せんがわ劇場
住所:東京都調布市仙川町1-21-5
<演目>
▼11月9日(土)
トーク「いま、祭:フェスティバルを考える」
時間:午後1時~2時
出演:ペーター・ゲスナー(演出家、せんがわ劇場初代芸術監督)、岸野雄一(スタディスト)、巻上公一(JAZZ ART せんがわ総合プロデューサー、音楽家、詩人)
「40年前ボクは仙川に住んでた」
時間:午後4時~5時
出演:しりあがり寿(live painting)=静岡市出身=、坂本弘道(vc、etc)
「『思春期』と『叫び』のはざまにノイズ有り」
時間:午後7時~8時10分
出演:Eric NORMAND (b、 etc)×Philippe LAUZIER(b-cl)、中村としまる(no-input mixing board)
▼11月10日(日)
「子どものための音あそび」
時間:午前11時~11時40分
出演:巻上公一とすずめのティアーズ[佐藤みゆき(vo, kaval)、あがさ(vo, gt, frame dr)]
「世界地図を飛び越える快感ポリフォニー」
時間:午後2時~2時10分
出演:すずめのティアーズ[佐藤みゆき(vo, kaval)、あがさ(vo, gt, frame dr)]、 服部将典(bass)、久下惠生(dr)、巻上公一(thermin)、纐纈之雅代(sax)