【岡田真理さん作「ぬくもりの旋律」】 「静岡人」4人が織りなすヒューマンストーリー
静岡新聞論説委員がお届けする“1分で読める”アート&カルチャーに関するコラム。今回は脚本家でスポーツライターの岡田真理さん(静岡市葵区)の初小説「ぬくもりの旋律」(河出書房新社)から。プロ野球を中心にさまざまなスポーツの現場を取材してきた著者は、テレビ朝日「セレブ男子は手に負えません」など連続テレビドラマの脚本家としても実績を残す。
主要な登場人物である、人気プロ野球球団の抑え投手、スポーツ紙の中堅記者、スポーツ選手の代理人を務める弁護士、世界を駆け回る女性フォトジャーナリストは、そろって静岡市の出身。中学生年代から30代半ばの現在まで、物語の中でそれぞれが行き合い、すれ違う。
「地元が同じ」であることが、彼らを互いに引きあわせたり、時に互いを遠ざけたり。人生と人生の重なる部分、個人史と個人史の接点に、必ず「静岡」が顔を出す。4人はどこか楽観的な行動原理が共通していて、著者自身の静岡県人としての思考が読み取れてうれしい。
「この地区でいちばん偏差値が高く」と紹介される御門台高のモデルは、清水東高か。スポーツマスコミの取材作法や原則が詳細に描かれているのも興味深い。表紙はJR身延線竪堀駅(富士市)。(は)
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河出書房新社、1760円