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え、本って全部読まなくてもいいの? 教えて! 読書猿さん

NHK出版デジタルマガジン

え、本って全部読まなくてもいいの? 教えて! 読書猿さん

読むのが遅い、何を読んだらいいのかわからない……そんな読書にまつわる悩みの数々を、「正体不明の読書家」読書猿が一挙に解決! 固定観念から自由になり、読書を楽しむ方法をやさしく伝える『苦手な読書が好きになる! ゼロからの読書教室』。発売から1週間を待たず増刷が決定しました!
増刷を記念して「第1部 本となかよくなるために……しなくてもいいこと、してもいいこと」より「第1回 全部読まなくてもいい」を公開します。
※本記事用に一部を編集しています

遠い森の奥に、小鳥たちの言葉を聞き分けられる不思議な力を持った博士が暮らしていました。博士は友達になったフクロウにヒトの言葉と文字を教えました。
フクロウは本を読む鳥になりました。夜はテーブルや床に投げ出された博士の本を読み、昼は本の話ができる人を探して方方を飛び回るようになったのです。
今日もフクロウは空を飛んでいます。うなるような女の子の声に惹かれて、窓に引き寄せられて……

全部読まなくてもいい

少女とフクロウ

もう! こんな分厚い本読めないんだけど!

別に全部読まなくてもいいんじゃよ。

な、何者?

見てのとおりただのフクロウじゃよ。

ただのフクロウが喋るわけない!

本を読むフクロウじゃから、人と話すくらいはわけないのじゃよ。

いやいやもっと無理があるでしょ! だいたいどうやってページをめくるの?

細かいことはいい

細かいことはいいんじゃよ。それより、今晩中にその本を読まなきゃいけないんじゃろ?

そんなことまで! そうだ、本を読むフクロウなら、代わりに読んでよ。

いやいやページがめくれないのじゃよ。

使えない!

そうでもないんじゃよ。本の読み方くらいなら教えてやれなくもないんじゃよ。

ページもめくれないのに?

猟犬は銃を撃てなくても、立派に狩りの手助けができる。それと同じじゃよ。

フクロウのくせに、微妙にいい感じのことまで言う! ……待って。つまり本を読むのは自分でやらなきゃいけないのね。それに本の読み方なんてわざわざ教えてもらわなくても……。

そうかの。たとえば、さっき、最初のページを開こうとしたじゃろ?

あたりまえでしょ。偉そうなこと言って、本の読み方も知らないの?

それはこっちのセリフじゃよ。

そうする以外に何があるっていうの?

その本はパッと見でも380ページはあるじゃろ。しかも、そのあせり具合。今日まで一度も開いたことがないのに締切は明日で、間に合わないと悩んでおると見たが、どうじゃ図星じゃろ?

小さいくせに上から目線! というか見たままですけど! ……そういえば、さっき全部読む必要はないとか言わなかった?

いかにも。

期待はしてないけど、どういうことか聞いてあげなくもないよ。

読みたいときに読めばいい

ほっほっほ。本なんか読みたいときに読みたいように読めばいいんじゃよ。

それだったら私、本なんか読みたくない。

まあ、それも人生じゃ。今、本から遠ざかっても、本は静かに待ってくれる。また読みたいときがやってきたら、そのときの理由で読めばいいだけの話じゃよ。

そんな未来の話じゃなくて、私は今困ってるの!

読み方は目的によって変わる

まあ、待て。ここからが肝心の話じゃよ。オホン、本の読み方などというものは、何のために読むかで変わる。たとえば辞書を最初から最後まで読む者はあまりいない。

当たり前じゃない。辞書は知らないことを調べるための本だもの。

そうじゃない。辞書を「調べるため」に使うからじゃよ。どんな本も調べるために読むときには、必要なところを探して、そこを読むことになる。で、読書嫌いのお前さんが何のために読もうとしておるのじゃ? 締切があるところからして、大方学校の課題じゃろう。

読書感想文よ。あなたの話を聞いていると、「あとがきだけ読んで、後は想像ででっちあげろ」みたいなズルを勧めてきそうなんだけど。

ひどい言われようじゃ。じゃが、よい発見もある。今の言葉、お前さんは、最低でも「ちゃんとした読み方」と「ちゃんとしてないズルの読み方」、その2つがあることを知っておることになる。

やらないけどね。

「本の読み方なんてわざわざ教えてもらわなくても」と言って、本の読み方は世界にたったひとつしか無いと信じて疑わない、とんだ石頭になるところじゃったぞ。

違うっていうの?

そりゃもう、たくさんある。多くのヒトは、本の読み方を改めて教わることはない。だから、いろんな読み方、本との付き合い方があることにも気付かないのじゃよ。

「通読」は読書感想文に向かない

鳥類にそこまで言われたくない。

ではニンゲンを代表して答えてみるのじゃよ。ズルじゃない読書とは何じゃ?

普通の、ちゃんとした読み方。えーと、つまり、最初のページから順番に頁をめくって最後まで読み通すこと。……じゃないの?

それもまた「通読」というひとつの読み方ではある。しかし、焦っているお前さんに重要情報じゃ。実は、通読は、読書感想文のために向いた読み方とは言えんのじゃよ。

ええっ! 先にそれを言ってよ!

楽しみのためにする読書なら、最初から順番に読むのが良いじゃろう。じゃが、さっきも言ったとおり、書物には、目的に応じて、それ以外にもいろんな読み方、付き合い方があるのじゃよ。

じゃあ、それ以外にどんな読み方があるっていうの?

まとめ

本の読み方はひとつではない
適した読み方は目的によって変わる

「通読」は万能ではない
最初から最後まで通して読む「通読」は目的によっては適さない

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読書猿(Dokushozaru)

正体不明の読書家。著書に『アイデア大全』『問題解決大全』(共にフォレスト出版)、『独学大全』(ダイヤモンド社)。幼い頃から読書が大の苦手であった自身が、読書家となるまでに培った経験が、本書に注ぎ込まれている。

絵:北澤平祐

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