「弱音を吐かない美徳」は本当に美しいのか? 日本人の心に残る“武士の美意識”がもたらす影とは【眠れなくなるほど面白い 図解 メンタルの話】
弱音や不満を「言ってはいけない」というストレス
弱音を吐かないのは美徳なのか?
日本には「出しゃばってはいけない」「わがままを言うべきではない」「個人的な感情は言ってはいけない」といったものが美意識としてあります。
これは日本の武士の美意識の名残かなと思います。武士は戦う集団なので、不安や弱音を押し殺して戦わなくてはいけない。そうやって集団の規律を保つ。出しゃばったら殺されたりもするので、できるだけ敵をつくってはいけないし、もちろん弱みを見せてもいけない。これが、武士の伝統的な美意識だったりします。
こういう武士的な美意識が、何か不満や悩みがあっても「辛い」とか「苦しい」という感情を言ってはいけない、言うことは美しくないという、日本の文化に受け継がれているのかなと思います。しかし、そうやって弱音を自分のなかにしまい込むと、そのうち「ストレスを受けている」ことが自覚できなくなり、徐々にメンタルを病んでしまいます。
また、言えないことで、より被害が深刻になることもあります。たとえば性の問題です。性的な虐待があっても恥ずかしいから言ってはいけない。親にも言ってはいけない。迷惑をかけちゃいけない。そうやって、自分のなかにしまい込むことで、長期にわたって被害を受けるケースもあります。日本人は基本的に人前で弱音を吐きません。しかし、それは必ずしもよいことであるとは言えないのです。
言うことは美しくないという日本の文化
日本人の美意識=武士的な美意識
出しゃばってはいけないわがままを言うべきではない個人的な感情は言ってはいけない
自分の「辛い」「苦しい」といった感情を言ってはいけないという文化
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「ストレスを受けている」ことに自覚がないまま徐々にメンタルを病んでいってしまう
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心身の異変が起きてからメンタルの限界に気がつく
性的虐待や暴行といった重大な問題も言いにくい社会になっている
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 メンタルの話 』監修:益田 裕介