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【2024年7月時点】日本の病院数はいくつ?医療施設動態調査から読み解く課題とは

「みんなの介護」ニュース

阿部 洋輔

日本の病院数の現状と推移

全国の病院数と病床数の最新データ

日本の医療体制を考える上で、病院数は重要な指標の一つです。厚生労働省が公表している「医療施設動態調査」の最新データによると、2024年7月末時点での日本の病院数は8,064施設となっています。また、病床数は1,470,615床という結果になっています。

これらの数字だけを見ても、日本の医療提供体制の規模がわかりますが、さらに詳しく見ていくと、興味深い傾向が浮かび上がってきます。例えば、病院数は前月(2024年6月)と比較すると3施設減少しており、病床数も440床減少しています。

このデータから、日本の医療提供体制が少しずつ縮小傾向にあることがわかります。しかし、これは必ずしもネガティブな変化ではありません。この変化の背景には、医療の効率化や地域のニーズに合わせた再編といった要因があります。

病院数の経年変化

病院数の推移を長期的に見ると、さらに興味深い傾向が見えてきます。厚生労働省の「医療施設調査」のデータを元に、過去10年間の病院数の推移を見てみましょう。

このデータから、日本の病院数が徐々に減少していることが明確に見て取れます。2013年から2024年までの約11年間で、476施設が減少しています。これは年平均で約43施設の減少ペースです。

この減少傾向の背景には、医療の高度化・専門化、在宅医療の推進、病院の統廃合、人口動態の変化などさまざまな要因があります。これらの要因により、単に病院数が減少しているのではなく、社会のニーズに合わせて医療提供体制が変化していると捉えることができます。

病院の種類別内訳

次に、病院の種類別の内訳を見ていきましょう。2024年7月末時点のデータによると、病院は以下のように分類されています。

これらの数字から、日本の病院の大多数が一般病院であることがわかります。しかし、注目すべきは療養病床を有する病院の数です。全体の約41.5%の病院が療養病床を持っているという事実は、日本の医療が急性期医療だけでなく、長期的なケアにも重点を置いていることを示しています。

地域医療支援病院の存在も重要です。これらの病院は地域の中核的な医療機関として、他の医療機関や介護施設との連携を強化する役割を担っています。数は決して多くないかもしれませんが、各地域の医療体制の要として重要な役割を果たしています。

以上のデータから、日本の病院が単に患者を治療する場所としてだけでなく、地域の医療・介護ニーズに応じて多様な機能を持つように変化していることがわかります。この傾向は、今後の超高齢社会においてますます重要になっていくでしょう。

地域別にみる病院数の実態

都道府県別の病院数比較

日本の医療提供体制を理解する上で、地域ごとの病院数の違いを知ることは非常に重要です。2024年7月末時点での都道府県別の病院数を見ていくと、興味深い傾向が浮かび上がってきます。

病院数が最も多い都道府県 東京都:635施設 大阪府:501施設 福岡県:449施設 北海道:524施設 兵庫県:341施設 病院数が最も少ない都道府県 鳥取県:43施設 島根県:46施設 福井県:67施設 山梨県:60施設 滋賀県:58施設

これらの数字を見ると、人口や面積との関連性が想像できますが、単純に人口や面積だけで病院数が決まるわけではありません。例えば、北海道は面積が広大なため、面積当たりの病院数では必ずしも上位ではありません。

また、注目すべきは東京都と大阪府の病院数の差です。東京都の人口が大阪府の約1.5倍であるのに対し、病院数は約1.27倍にとどまっています。これは、大都市圏での医療需要の高さと、それに対応する医療提供体制の違いを示唆しています。

人口当たりの病院数の地域差

単純な病院数の比較だけでなく、人口当たりの病院数を見ることで、各地域の医療アクセスの状況をより正確に把握することができます。ここでは、人口10万人当たりの病院数を都道府県別に比較してみましょう。

このデータから、興味深い傾向が見えてきます。人口当たりの病院数が多い県は、比較的人口が少なく、高齢化が進んでいる地方県が多いのです。一方、人口当たりの病院数が少ない県は、大都市圏に集中する傾向にあります。

この傾向には、地方の高齢化、都市部の効率化、交通アクセス、歴史的背景などの要因が考えられます。これらの地域差は、単に数字の違いではなく、各地域の医療ニーズや社会構造の違いを反映しているのです。

地域医療構想と病院数の関係

2015年から各都道府県で策定が始まった「地域医療構想」は、2025年の医療需要と必要病床数を推計し、そこから逆算して現在の医療提供体制を見直すという取り組みです。この構想は、病院数や病床数の地域差に大きな影響を与えています。

地域医療構想の主な目的は、医療機能の分化・連携の推進、在宅医療の充実、医療従事者の確保・養成です。これらの目的を達成するために、各地域で病床機能の再編、病院の統廃合、在宅医療の推進といった取り組みが行われています。

これらの取り組みの結果、病院数や病床数に変化が生じています。例えば、2024年7月末時点で、療養病床を有する病院は3,344施設となっていますが、この数字は地域医療構想の影響を受けて変動しています。

また、地域医療支援病院の数(704施設)も、地域医療構想の中で重要な役割を担っています。これらの病院は、地域の医療機関との連携を強化し、効率的な医療提供体制の構築に貢献しています。

地域医療構想は、単に病院数を減らすことが目的ではありません。むしろ、限りある医療資源を効率的に活用し、地域のニーズに合った医療提供体制を構築することを目指しています。そのため、今後も病院数や病床数の変動が続くことが予想されますが、それは地域の実情に合わせた最適化のプロセスだと捉えることができます。

病院数から見える医療・介護の課題と展望

高齢化社会における病院数の在り方

日本の高齢化は世界に類を見ないスピードで進行しており、これは医療提供体制にも大きな影響を与えています。2025年には65歳以上の人口が総人口の30%を超え、2040年には35%を超えるとも予想されているほどです。

この急速な高齢化は、病院数や病床数の在り方にさまざまな課題をもたらしています。例えば、医療需要の変化、地域差の拡大、医療費の増大、医療従事者の不足などが挙げられます。

これらの課題に対応するために、病院数や病床数の単純な増加ではなく、以下のような方向性が考えられます。

病床機能の転換:急性期病床の一部を回復期病床や慢性期病床に転換し、高齢者のニーズに対応する。 在宅医療の強化:病院完結型の医療から地域完結型の医療へ移行し、在宅医療を充実させる。

さらに、地域包括ケアシステムの構築やICTの活用なども重要な取り組みとなります。これらにより、単に病院数を増やすのではなく、限られた医療資源を効果的に活用し、高齢化社会のニーズに対応した医療提供体制を構築することが求められています。

病院と介護施設の連携強化の必要性

高齢化社会において、病院と介護施設の連携は極めて重要です。2024年7月末時点での病院数8,064施設に対し、介護老人保健施設は全国に約4,300施設、特別養護老人ホームは約8,500施設あります(厚生労働省「令和4年介護サービス施設・事業所調査の概況」より)。

これらの施設間の連携を強化することで、高齢者に切れ目のないケアを提供することが可能になります。

病院と介護施設の連携強化には、医療・介護の継続性確保、医療資源の効率的利用、高齢者のQOL向上、医療費・介護費の適正化といった利点があります。

連携を強化するための具体的な取り組みとしては、以下のようなものが考えられます。

退院調整の強化:病院の退院支援部門と介護施設のケアマネジャーが密接に連携し、スムーズな退院・入所を実現する。 情報共有システムの構築:ICTを活用し、病院と介護施設間で患者・利用者の情報を安全に共有できるシステムを整備する。

これらの取り組みにより、病院数の減少傾向が続く中でも、高齢者に適切な医療・介護サービスを提供できる体制を構築することが可能になります。

ICTを活用した医療提供体制の未来

ICT(情報通信技術)の進歩は、医療提供体制に革新的な変化をもたらす可能性を秘めています。特に、病院数が減少傾向にある中で、ICTの活用は医療アクセスの改善や効率化に大きく寄与すると期待されています。

ICTを活用した医療提供体制の主な取り組みとして、以下のようなものが挙られるでしょう。

遠隔医療の拡充:患者が自宅からビデオ通話で医師の診察を受ける遠隔診療や、慢性疾患患者の健康状態を遠隔で継続的に監視する遠隔モニタリングなどが実施されています。 AI(人工知能)の活用:診断支援や医療画像解析など、様々な分野でAIの活用が進んでいます。

これらのICTを活用した取り組みにより、医療アクセスの改善、医療の質の向上、医療費の適正化、患者の利便性向上、医療従事者の負担軽減といった効果が期待されます。

まとめ

高齢化社会の進展やICTの発展など、さまざまな要因が絡み合う中で、今後も病院のあり方は変化し続けるでしょう。特に注目すべき点は以下の通りです。

病院数の減少傾向 全体的な病院数は減少していますが、これは必ずしもネガティブな変化ではありません。むしろ、医療の効率化や地域のニーズに合わせた再編の結果と捉えることができます。 地域差の存在 人口当たりの病院数には大きな地域差があり、これは各地域の特性や医療ニーズの違いを反映しています。今後は、この地域差を踏まえた上で、各地域に適した医療提供体制を構築していく必要があります。 高齢化への対応 急速な高齢化に伴い、病院の役割も変化しています。急性期医療だけでなく、回復期・慢性期医療や在宅医療との連携が重要になっています。 ICTの活用 遠隔医療やAIの導入など、ICTを活用した新しい医療提供体制の構築が進んでいます。これにより、病院数が減少する中でも、質の高い医療サービスを効率的に提供することが可能になると期待されています。 病院と介護施設の連携 高齢化社会において、病院と介護施設の連携強化は不可欠です。切れ目のないケアを提供するためには、両者の緊密な情報共有と協力体制が必要となります。

これらの変化に対応しながら、限られた医療資源を最大限に活用し、すべての人が必要な医療を受けられる体制を構築していくことが、これからの日本の医療における大きな課題となるでしょう。

私たち一人一人が、この変化を理解し、より良い医療・介護体制の構築に向けて考えていくことが求められています。例えば、自身や家族の健康管理に積極的に取り組むこと、地域の医療・介護資源について理解を深めること、そして必要に応じて適切なサービスを選択し利用することなどが重要です。

また、医療や介護に携わる専門職の方々は、常に最新の知識や技術を習得し、多職種連携やICTの活用にも積極的に取り組むことが求められます。そして、政策立案者や医療機関の経営者は、地域の特性や将来の医療ニーズを的確に把握し、柔軟かつ効果的な医療提供体制の構築に向けて尽力する必要があります。

日本の医療は大きな転換期を迎えています。病院数の変化は、その一つの表れに過ぎません。これからの医療は、単に病気を治すだけでなく、人々の健康と幸福を総合的に支える存在へと進化していくでしょう。

その中で、私たち一人一人が自分の健康に責任を持ち、社会全体で支え合う仕組みを作っていくことが、より良い医療・介護体制の実現につながるのです。

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