GDPで日本超え!日本人より休んでいるのに多く稼ぐドイツ人の「幸せな働き方」とは?
短時間労働、有給消化率100%でもGDP世界3位!日本人の働き方とどこが違うの?
SBSラジオ「IPPO」で毎月最終月曜日に放送している「IPPO差がつくビジネス書講座」。1万2000冊以上のビジネス書を読破し、3000冊以上の書評を書き続けている研修講師、コンサルタントでビジネス開拓アドバイザーの大杉潤さんに、おすすめの一冊を教えてもらいました。聞き手は新城健太アナウンサー。
新城:大杉さん、今月おすすめのビジネス書を教えてください。
大杉:世界で最も労働時間が短いと言われているドイツ人の働き方に関する本を紹介します。タイトルは「GDPで日本を超えた!のんびり稼ぐドイツ人の幸せな働き方」(ぱる出版)です。
ドイツは2023年に名目GDP(国内総生産)で日本を抜き、世界3位になりました。ドイツの人口は日本の約3分の2で8000万人ほどです。それでもGDPで日本を超えたということは、日本人の働き方がドイツに比べて非効率なのではないかということになりますね。
新城:そうですね…。
大杉:著者は元NHK記者の熊谷徹さん。ヨーロッパ駐在を経てフリージャーナリストとしてドイツ駐在34年と、ドイツのことを知り尽くしている方です。なぜドイツが短時間で効率よく稼げるのかを解説しています。
新城:とても気になりますね。
仕事は1日10時間まで
大杉:ドイツではいろいろな労働環境に関する仕組みがしっかりしているので、労働者のモチベーションを高めているのかなと思います。
例えば、1日10時間以上の労働が法律で禁止されています。また、毎年2~3週間の連続休暇を取るのが常識で、有給休暇の消化率は100%です。さらに、それとは別に、病気やケガの場合は「傷病休暇」が認められていて、なんと6週間まで100%給与が出るんです。すごいですよね。
新城:それは驚きですね!日本の超ホワイト企業の説明ではなく、ドイツという国の話ですよね?
大杉:そうです。中小企業も含めてどの企業もそうです。
新城:はぁーっ!そんなに休めるんですか?
大杉:仮病で休むんじゃないかという話もありますが、そこは仕組みがしっかりしていて、診断書の提出が必要で、万が一不正がばれたら即刻解雇です。なのでそんなリスクを犯す人は誰もいなくてモラルハザードの問題もありません。
過剰なサービスを減らし休日を確保
新城:逆に言うと、その状況で日本より多く稼いでいるということですよね?一体、何が起きているんでしょうか。
大杉:この本で一番おもしろい肝の部分は、ドイツ社会には「長期休暇は全ての働く者の権利だ」という合意がしっかりあるということです。経営者も労働者も含めてです。
具体的には、社会全体のサービスレベルを下げることで、サービスを提供する側もちゃんと休めるようにしています。
例えば、日本ではコンビニが24時間開いてますが、そうではなくても構わないと。休日は多くの店が閉店し、商店街が閑散としています。それが当たり前という合意が社会にあるんです。
新城:サービスの必要・不必要を判断して削ぎ落とす潔さを感じますね。
大杉:そうですね。日本はとても便利な国ですが、ドイツから見ると日本は「過剰サービス」なので、その分働く人にしわ寄せが行ってしまうんですね。
管理職に課される部下の健康管理
大杉:そのほかにも、ドイツではデジタル化によってペーパーレスや効率化が進んでいます。また職場では、管理職に対して「部下の健康を守る義務」が課されていて、心身を病む社員が出た場合は管理職の責任となります。そこが徹底しているので、「疲れたら休め」「無理するな」となるんです。
新城:上司が配慮していても部下が患ってしまう、どうしようもないパターンでも管理職の責任になるんですか(笑)?
大杉:そうですね。ただ、傷病休暇が認められているので、休みを活用して、きちんと回復して出てきなさいという考え方なんです。
このように、ドイツでは社会全体に労働者の権利を尊重する意識が徹底されているので、ブラック企業は許されないですし、(ブラックだと)人の採用も当然できなくなる社会なんです。だから日本が学ぶ点はかなり多いと思います。
新城:冒頭から驚きの連続です。有給消化率100%、1日10時間以上の労働は法律で禁止…。いやぁドイツに生まれてみたかったなぁという気持ちになりますね(笑)。
大杉:忙しいアナウンサーやメディアの方には別世界かもしれませんね。
新城:大杉さん、ありがとうございました。来月もよろしくお願いします。
※2025年1月27日にSBSラジオ「IPPO」で放送したものを編集しています。今回お話をうかがったのは……大杉潤さん
1958年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に22年間勤務の後、東京都へ転職して新銀行東京の創業メンバーに。人材会社、グローバル製造業の経営企画・人事責任者を経て、2015年に独立・起業してフリーランスに。現在はフリーの研修講師、経営コンサルタント、ビジネス書作家。合同会社ノマド&ブランディング・チーフコンサルタント。
著作は「12000冊のビジネス書を読んで試した経営コンサルが名著100冊からすごい時間の使い方を抜き出して1冊にまとめました」(WAVE出版、2024年)など。