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原作未読・知識なしの“『吸血鬼ハンターD』の超初心者”ライターがリバイバル上映されたアニメーション映画『バンパイアハンターD』を観て度肝抜かれた!徹底レビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

菊地秀行先生の小説『吸血鬼ハンターD』を原作としたアニメーション映画『バンパイアハンターD』。本作が日本で初めて公開されたのはなんと、2001年でした。

25周年にあたる2025年、全国の劇場で1週間限定でリバイバル上映(一部劇場では期間延長あり)された本作を、ささいなきっかけから筆者(原作も未読、かつ、なんの予備知識もない”超初心者”)も鑑賞するべく劇場へ足を向けることとなりました。

結果、作品の圧倒的な迫力で描かれる耽美的な世界観と美しい描写にひたすら感銘を受けて帰宅することに……!

そんな無知な筆者が、『バンパイアハンターD』初心者だからこそ語れるかもしれない本作の魅力について、個人的に刺さったポイントを中心に好き勝手にレビューをしてまいります。原作ファンや古参のファンの方々には、生温かく見守っていただけますと幸いです……!

【写真】アニメーション映画『バンパイアハンターD』超初心者ライターがレビュー

アニメーション映画『バンパイアハンターD』について

まずは作品の情報を整理しておきましょう。

『バンパイアハンターD』は、菊地秀行先生の小説『吸血鬼ハンターD』シリーズの第3作「D-妖殺行」を原作とした、川尻善昭監督のアニメーション映画作品です。

本作はアメリカ等で先行公開されたのち、日本では2001年に初めて上映されました。その上映は英語版の音声(日本語字幕)であったそうですが、のちのDVD化の際に豪華声優陣による日本語吹き替えという形で、オリジナル日本語バージョン版が発売されることに。

そこから時を経た2025年、本作の25周年を記念してそのオリジナル日本語バージョン版が1週間限定で全国リバイバル上映をする運びとなりました。

さらにその上映は、当時のオリジナルフィルムを現在の最新技術で高いクオリティへと進化させた「リマスター映像」となっており、当時劇場で鑑賞したファンの目にも懐かしくて新しい作品に映ることに!

しかも、その高クオリティに生まれ変わった本作は、同年3月26日にBlu-rayでの発売も決定。Blu-rayは「劇場公開(英語)ver.」に加え、「オリジナル日本語ver.」の2パターンを収録するという豪華仕様となっており、ファン待望の商品となっています。

『バンパイアハンターD』の魅力を語る

このリバイバル上映のニュースに触れるまで、本作の存在すら知りえなかった筆者。しかし、SNS上では一般のファンはもちろんのこと、著名な声優さんたちが『バンパイアハンターD』の感想や、鑑賞を勧めるような発信をしているのを目にしていて──

筆者を劇場へと向かわせることになった理由は、そんなささいなきっかけでした。

本稿では、そんな原作未読で知識が1ミリもないまま鑑賞した筆者に、個人的に刺さりまくった本作の魅力を、各項目ごとに綴っていきます。

美麗な映像ときめ細かい演出

物語が始まって早々、まず目を奪われたのはその美麗で繊細な描写でした。

走る馬車の動き、飛び交うコウモリ、翻るマントになびく長髪、そびえ立つ古城……すべてにおいて細かい部分まで表現されていて、圧巻の迫力。強大な力を持つ「貴族(=バンパイア=吸血鬼)」たちに恐れをなす人々の空気感までもが伝わってくるかのようなその繊細な表現に、まず心を奪われて行きます。

本作は吸血鬼が登場するためもあってか、全体的に夜のシーンが多く登場しますが、際立って目を惹くのが闇のシーンでの光の使い方。駆け抜けていく馬の目が赤く光っていたり、Dの背景となる月光の美しさがまばゆいばかりだったり──美しい光が効果的に差し込まれています。

全編を通して、こうした光の使い方が絶妙であり、それらがより一層闇を引き立たせているかのように感じました。

また、数少ない昼間のシーンでも、場面によって太陽の照りつけ方や角度までもが異なっており、時に高温で乾燥した空気感を醸し出していたり、その明るさで影(に潜む敵)を鮮やかに印象づける役割を担っていたりと、とにかく「光と影」を強く意識させられる演出があちこちに。

さらには、純粋種の吸血鬼であるマイエル=リンクが鏡に映らないという細かい演出も作品を盛り上げている要素のように思われます。

終盤では、本作が実は「SF」要素も含んだ作品であることを納得させられる、実に斬新な表現も出て来たり、とにかく美しい映像ときめ細かい演出に唸らせられるばかりです。

オタク心をくすぐる主人公「D」

そして本作に登場する魅力的なキャラクターたち。その筆頭はもちろん、人間と「貴族(バンパイア)」の混血児である「ダンピール」の主人公「D」。

ゴシック衣装に身を包み、長いマント、背中には長剣を1本だけ携え、その肌は陶器のように美しく、透けるほど白い。そして顔の造形の美しさ。

誰しもが思わず目を奪われる美しさを持つD。ダンピールという身の上ゆえ、人間にも吸血鬼にも区分されず、人間界では存在を疎まれています。仮に人間に受け入れられたとて、不死身の吸血鬼の血を受け継ぐDにとって、あっけなく一生が過ぎ去ってしまう人間に思いを寄せるのはあまりにつらすぎる宿命。

そうしたことからも、他者と交流することなく、ずっと生き続けていかねばならない運命を背負っているというその孤高さもまた、彼の美しさと魅力に拍車をかけているのでしょう。

そんなDの左手には人面疽「左手」が棲みついていて……!「左手」は寡黙なDの代わりとばかりに饒舌に語ります。そんな「左手」の、時に余計なことまで語るおしゃべりに対し、「黙れ」とばかりに左手を握って黙らせるD。

「オレの左手が疼くぜ……」という厨二病的セリフを思わず連想してしまうような、設定盛り盛りのDの存在に、オタク心もついつい疼いてしまいます。

そして戦闘シーンでは、圧倒的な強さも際立ちます。ダンピールだからこその、人間離れしたその強さ。彼の尋常ならざる強さもまた、さらに孤立を深める要素となっているのかもしれませんね。

さらにオタク心をくすぐるのは、シャーロットをめぐる闘いのシーン。長剣で斬りかかるDに対し、マイエル=リンクは硬化したマントで応戦します。自らのマントで闘えるという、実に吸血鬼らしい武器がまた心震わす要素であるとも言えます。

清々しいまでにムダのないストーリー展開

本作を鑑賞するにあたり、筆者のみならず、作品の知識ゼロ勢が最初に気になるのが「果たして前情報なしでも作品を楽しめるのだろうか」という点。

結論から言うと……安心してください。知識がなくてもまったく問題ありません。

美しく圧倒的な描写や心をわしづかみにするような美麗なキャラクターたちの登場はもちろんのこと、しっかりとした起承転結を持つストーリー展開に、初っぱなから世界観に引きずり込まれること請け合いです。

最初はわからない部分を持ったままストーリーが流れて行っていたとしても、観ているうちに、徐々にさりげなくそれらが明らかとなっていく展開が待っています。

しかも圧巻なことに、ちょっとした会話や絵ヂカラ、演出などですべてが理解出来るように表現されているのが本作の素晴らしさである、と言い切りたい。

説明口調のナレーションは一切なし。すべてを語らず、限られたセリフだけで自然に理解させていく圧倒的な説得力と、それぞれの生き様から浮かび上がる彼らの確固たる信念。

本作にはそうした魅力を感じずにはいられません。

また、終盤のクライマックスとなる、Dとマイエル=リンクとの闘い。「ここが見せ場」とばかりに長尺で魅せていくことも出来たはずですが、本作では実に清々しいまでに端的に決着がつきます。

そうした潔さもまた、かっこいい! の一言に尽きるのです。

物語の中で紡がれた何気ない一言をさらっと回収していくエンディングも、また非常に美しく、思わずハッとさせられる名場面です。

とにかく最初から最後まで、視聴者を完璧なストーリー展開にいざなっていくのが本作の最大の魅力なのかもしれません。

今や100%の再現は不可能……豪華声優陣の競演

ここまで、作品の内容に関する魅力について語って参りましたが、本作を彩る声優陣についても触れておきたいと思います。

主人公「D」役には田中秀幸さん、対峙するマイエル=リンク役は山寺宏一さん。吸血鬼ハンター側のヒロインポジションのレイラ役には林原めぐみさんと、今も第一線で活躍をするベテラン声優勢が満載の本作。

そんな中、とりわけ注目したくなるのが、すでに鬼籍に入られたベテラン声優の多さ……!

「左手」役の永井一郎さん、シャーロット役の篠原恵美さん、ポルク役の青野武さん、ジョン=エルバーン役の清川元夢さん、アラン=エルバーン役の辻谷耕史さん、ベンゲ役の藤原啓治さん、神父役石塚運昇さんなど……印象的なキャラクターを担ったみなさんの声で新たに再録ということが望めなくなってしまいました。

だからこそ! 2001年時点でのオリジナル日本語バージョンがこの令和に発売されることに、大いなる意義があるようにも思えます。

日本で初上映された当時の空気感も楽しめる──本作にはそうした魅力まで詰まっていると思われます。

最後に

最後に、25年もの時を経て『バンパイアハンターD』が再び脚光を浴び、リバイバル上映とBlu-ray発売という流れを作ったとされるYouTube動画をご紹介します。

それは、フリーライターのマフィア梶田さんと声優・中村悠一さんとのYouTube番組『マフィア梶田と中村悠一の「わしゃがなTV」』のとある雑談回。

以前中村さんに本作の存在を教えられた梶田さんが、DVDを購入し鑑賞した結果、その感想を生配信で熱く語ることに……! 彼の激アツ感想を聞いて興味を持ったリスナーが、ECサイトにてDVDを注文する流れとなりました。

「劇場で観てみたい」「Blu-rayを発売して欲しい」──そうした梶田さんの熱い思いや、こうしたムーブメントが公式に届いたのでしょうか。およそ半年後のリバイバル上映とBlu-ray発売のニュースが世間を賑わせました。

また、同番組ではまさかの「DVD『バンパイアハンターD』同時視聴」という生配信が行われ、本作の映像全編が流れるという、前代未聞の展開も! 

(アーカイブ公開期間は2025年3月14日(金)20:00頃から4月13日(日)23:59頃まで)

さらに、本作の音響監督を務めた三間雅文さんは、今回の件で当時の制作チームと再会したことを写真付きでSNSに投稿しています。

いわゆる「ファン」たちの声から25年の時を超えて叶った、『バンパイアハンターD』との再会。素晴らしい作品は時を超えてもなお、語り継がれる──その典型的な例となった作品ですね。

[文/おかもとみか]

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