ポンツクピーヤ、満杯のフロアから感じた未来への手応えと愛のある空間
ポンツクピーヤ『それじゃあまた明日っ!』2025.02.23(sun) 下北沢DaisyBar
京都を拠点としながら活動を重ねているポンツクピーヤが2月23日に東京・下北沢DaisyBarでワンマンライブ『それじゃあまた明日っ!』を開催した。チケットはソールドアウトしてフロアは満杯。人気が着々と高まっていることが証明されていた。初の全国流通盤ミニアルバム『僕が間違えた日々の全て』のリリース、全国ツアーの開催も発表されたこの公演の模様をレポートする。
ギターのアルペジオが先陣を切ってライブがスタートしたと思ったら中断。演奏をすぐに再開し「こんにちはスーパーマン」がオープニングの曲だった。ギター、ベース、ドラムによる3ピースのアンサンブルが心地よい。サビに差し掛かると、掲げた拳を揺らしながら、高鳴る胸の内を示していた観客。彼らのライブを待ちわびていた人々がたくさん集まっているのを肌で感じた。
「ポンツクピーヤと申します。どうぞよろしくお願いします!」という挨拶を挟みつつも、序盤は曲の演奏がひたすら続いた。大石、吉元、中江のコンビネーションは歌でも絶妙極まりない。「いつかきっとなんて」「僕らの世界は回り続けて」の随所で響かせたコーラスのハーモニーが、各曲のメロディに深みを添えていた。大石がギターソロで盛り上げる場面も交えた「19歳」を経て、力強く打ち鳴らされたドラムのビート。「良いことがあれば悪いこともあるんですよね。だから最初ミスったって、ここから良くなっていけばいいじゃないですか。今日はどうぞよろしくお願いします!」と大石が観客に呼びかけた辺りから3人は絶好調を迎えていた。「悪いようにはせえへんから」「FAMILY」「アイニサイ」「忘れんぼ」……生々しい風景の描写、印象的なワードが散りばめられた各曲は、耳を傾けると自ずと想像が膨らむ。熱く昂揚できると同時に、物語に深く没入できる場面の連続だった。
大石の呼びかけからスタートした「clap your crazy!!」は裏拍で手拍子をする人々が実に楽しそう。「昨年と一昨年は全然東京でライブをしてなくて。ワンマンでたくさんのみなさんに集まってもらえて本当に光栄です。ありがとうございます。たくさん曲をやって帰ります!」――演奏が幕切れた直後の大石のMCは、楽しい時間を作れている喜びで満ちていた。
「みなさんはミュージシャンに恋をしたことがありますか? ミュージシャンというのはロクな生き物じゃないですよ。すぐ浮気するし、『夜ごはん食べたいから千円ちょうだい』とか(笑)。ミュージシャンに絶対に恋なんてしないようにお願いします」と言いつつスタートさせた「こんばんは暗闇」。この曲も歌詞に刻まれた言葉が物語を豊かに躍動させていた。続いてドラムソロ、3人にセッションを経て突入した「ロンリー」は、軽快なビートと美メロが融合。「朝が苦手なだけなのに」と「猫より弱い」は、起伏に富んだ展開を遂げるバンド演奏と叙情的なメロディを堪能させられた。
「僕が作る曲には僕とあなたがいて、『わかり合いたい』という気持ちがあるんです。でも僕とあなたは違う人間なので、わかり合えるはずがないんです。それは家族、恋人、友だちだって全部一緒。100%わかり合えるなんてないんですよね。それでも『わかり合いたい』と思うのは、おかしいことではないと思ってます」――ポンツクピーヤの根本にある人生観が窺われるMCを噛み締めながら聴いた「喫茶店に蔓延る」は、演奏のタメとキメを共有しながらアンサンブルの熱量を高める姿がスリリングだった。そして、長尺の展開の中でドラマチックな展開を重ね続けた「シット・バイアス・ミュージック」の後に迎えた小休止。大石は公演タイトル『それじゃあまた明日っ!』について語った。「まるで解散ライブみたいなタイトル(笑)。友だちとかに『それじゃあまた明日っ!』って言って手を振ってる時に、なんかたまらなく寂しくなるんですよね。『明日会えるかもしれないけど、その明日に僕は含まれてるのかな?』って。それでこのタイトルをつけて曲を作りました。今日までに練って練って、出来上がったデモを解体して作り直したりしてたら完成しなかったんですけど(笑)。当分この曲をリリースするつもりもないし、今日のために作ってきた曲なのでやってもいいですか?」と呼びかけてスタートさせた「それじゃあまた明日っ!」は、大石のギターと歌からスタートして、吉元のベース、中江のドラムが合流。3人が1つになって生むエネルギーが観客を開放的に盛り上げていた。
「死にたい夢」の直後、抱えている想いを語った大石。「僕は基本的に『楽しい』と『苦しい』を心の中で戦わせてる人生です。『難しいことは考えるな。ポジティブにいこうぜ』ってよく言われますが、やっぱり考えちゃいますよね。でも考えるのはいいこと。考えて考えて、それでも駄目な時に僕たちの音楽がありますので、そういう時に都合よく使ってやってくれればいいのかなと」――そしてスタートした「リビング・スーサイダル」が本編を締めくくった。観客の間から沸き起こった《ララララ》という歌声。ポンツクピーヤの音楽が、フロアにいる1人1人に愛されているのを感じた。
「初の全国流通盤ミニアルバム『僕が間違えた日々の全て』を4月16日にリリース」「全国ツアー2025『君と僕の間違い探し』を東名阪、仙台、福岡、京都の6ヶ所で開催(京都のみワンマンライブ)」――2つの発表が喝采を浴びて、「そのミニアルバムから1曲だけやりたいと思います。とにかくめちゃくちゃ歌詞が多い曲です」と言いつつ歌い始めた「エモーショナル・ララバイ」は、軽快なビートを躍動させながら温かなムードを醸し出していた。人間関係には家族、友だちとの関係とか、いろいろあって。すごくいがみ合っていても、いつかわかり合えるきっかけがあると思うんです。『いつかわかり合える日が来るよ』と思って書いた曲です」という言葉を大石が添えた「愛してるって言って」がラストを飾った。瑞々しいメロディを受け止めながら心を震わせていた観客。演奏が穏やかな余韻を残して幕切れた時、大きな拍手と歓声がフロアから届けられた。深くお辞儀をしてステージを後にした大石、吉元、中江。彼らが感じた手応えは、今後の活動の原動力となるに違いない。
取材・文=田中大 撮影=もがみゆうな