奈良・生駒市郊外の隠れ家レストランで実力派シェフがお届けするイノベーティブフレンチ『Chez Kurahashi(シェ クラハシ)』
奈良・生駒市郊外の隠れ家レストランで実力派シェフがお届けするイノベーティブフレンチ『Chez Kurahashi(シェ クラハシ)』
学研北生駒駅から徒歩10分ほど。
閑静な住宅街と緑豊かな自然、県道沿いに散在する郊外型店舗など、いかにも“奈良らしい”ロケーションの中に店舗を構えるフレンチレストラン『Chez Kurahashi(シェ クラハシ)』。
2023年にオープンした翌年、『ミシュランガイド奈良2024』に“セレクテッドレストラン”として掲載された。
カジュアルに利用できるカフェ『THE SOUP.』と併せて運営されており、近隣のみならず県内外から多くのゲストが訪れるという。
今回はシェフの料理を詳しくレポートするため、レストラン『Chez Kurahashi(シェ クラハシ)』にお邪魔させていただいた。
前菜
こちらはコースの前菜。
下からアスパラガス、ライムとオイルでマリネした蛸、不知火(しらぬい)、フロマージュブラン(フレッシュチーズの一種)、柑橘(大将季 だいまさき)のコンフィチュール、ヘーゼルナッツ。
アスパラの香りとタコの風味、柑橘の酸味やソースの甘み、それぞれの味覚の間をフロマージュブランの淡さが取り持つ。
柑橘の使い方が大胆で面白い。
まさにシェフの世界観への導入となる一品だ。
メイン(お肉)
こちらはメイン。
北海道産 経産牛のステーキと春キャベツとナッツ、ラルド、丸麦のリゾット、レモンのコンフィ。
経産牛は国内で注目を集めだしたのはここ1~2年だが、赤身肉が好まれるフランスでは元来評価が高い。
「肉の主張が強すぎず、主役になり過ぎない」とシェフが説明してくれた通り、脂の余計な甘みや臭みがなく、他の食材の風味を阻害しない。
肉質の柔らかさは生産者によるものか、シェフの腕か。
レモンや柑橘パウダーの香りを立たせるためか、全体的に控えめな味付けだが、そこを炙ったラルド(背脂の生ハム)の塩味がキュッと引き締める。
肉の見た目のインパクトとは裏腹に、調和のとれた非常に上品な一皿。
デセール
ブランマンジェ。
表面にはココナッツ、中にはブラッドオレンジのソルベとプラリネ(ローストしたナッツを砂糖で煮詰めてキャラメリゼしたもの)。
ふわふわのブランマンジェはほんのりと甘く、他の食材の持つ甘みや酸味のつなぎとなる。
エディブルフラワーは奈良・葛城市の寺田農園さんや奈良・生駒市のひらひら農園さんから。
≪創造性と調和≫倉橋 功治シェフ
「フランスに行かなければ今の自分の料理はありませんでした」。
出身は広島の東広島市。辻調理師専門学校を卒業後、大阪の一流ホテル内のレストランで8年間腕を磨いた。
「このままでは創造性が育たないと思った」という倉橋シェフは一念発起しフランスへ渡るのだが、そこで得た経験・知見が彼の料理を大きく変えた。
ミシュランが「イノベーティブ・フュージョン(革新的融合)」というジャンルを定義づけたのが2013年。
倉橋シェフがフランスへ渡った2016年は、料理人にとって非常に刺激に満ちた時代だったのではないだろうか。
フランスの人気ブラッスリー『Clown Bar』などで修業を積んだ倉橋シェフは、同じく現地で活動していた渥美創太シェフ(パリ・MAISON)、北村啓太シェフ(東京・アポテオーズ)たちとも親交を結んだ。
そんな倉橋シェフのお料理は、食材の合わせ方や見せ方に独創性を感じさせつつも、調和のとれた優しさが印象的。
一皿に盛り込む食材は3~4種類程度に抑え、それぞれの食材の表情がぼやけないようにする。
「コース料理を食べ終わった後に、“どの料理が印象に残ったか”が思い出せない料理は作りたくないんです」という倉橋シェフの言葉通り、主役・脇役関係なく、どの食材も、お皿の上で個性を発揮しながら一つの調和された情景を作り出す。
今回は取材用にコースから3品抜粋してご用意していただいたのだが、コースを通して食べた時、一皿一皿の調和がさらに全体のストーリーのつながりとなってシェフの描く世界を見せてくれるのだろうという期待を感じさせてくれるお料理だった。
次回はぜひプライベートでゆっくりと味わってみたい、『Chez Kurahashi』はそう感じさせてくれるレストランである。
Chez Kurahashi(シェ クラハシ)
●住所/奈良県生駒市上町3406−1
●営業時間/ランチ 11:00-15:00、ディナー18:00-22:00
ランチ、ディナーともに完全予約制
●電話番号/0743-87-9406
●駐車場/有