「玉木ガチ恋」勢も登場。30歳女子が国民民主党・玉木代表の若者ウケを考察、最大の武器は?
なぜ玉木氏は若者世代に刺さったのか?
10月に行われた衆議院選。自民・公明が過半数割れし、結果は大荒れとなった。そんななか大躍進を遂げたのが国民民主党だ。若者向けの政策を基盤に、巧みなSNS戦略で認知度を広げた玉木雄一郎氏の戦略は、30歳の私から見ても見事だったとしか言いようがない。今の若者はバズっていない政治家のことは知らないのだ。
文字を読む習慣がある私でも「政策とか徹底的に調べるのダルいな~」という気持ちはすごくわかる。
普段ニュースを見ない、文字を読む習慣がないSNS世代の若者にとっては「投票に当たって下調べをする」ことは結構苦痛だ。それゆえ、自ら積極的にSNSでの活動を重視した「国民民主」が若者世代に支持を広げたのはとても納得できる。
では、玉木雄一郎氏の何が若者に刺さったのか。周囲の20代から30代の若者の声を聞いた。
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写真加工は当たり前。「ビジュ」重視の世代
国民民主党は政治に興味のない若い世代からの圧倒的支持を受け、今回の躍進につながった。「賃金を上げる、手取りを増やす」というキャッチコピーが刺さったのは前提として、玉木雄一郎代表(25年3月3日まで代表の役職停止)の「ビジュアル」も若者支持に大きくつながった一因だったようだ。
若者言葉を借りると「ビジュがいい」のである。
玉木氏は御年55だが、すらりとしたスタイルと優しげな笑顔を持つ「イケオジ」だ。年配層と違って、若者層は政治家に対する知識が少ない。となれば、見たものから得た印象が大切になる。周囲の友人やSNSでの若い層の反応から、玉木氏が爽やかな男前で「聡明そう」「清廉潔白そう」という印象を抱いたのだ。
「ビジュがいい」は若者にとって重要な要素である。「ルッキズム」という言葉が浸透してきたにもかかわらず、令和の若者は以前よりビジュアルに厳しい判断基準を持っている。
メイク技術は発展し、整形も当たり前。なおかつ、SNSに掲載する画像や動画は加工が必須だ。盛れてない姿を晒すのは言語道断だ。
嫌われる石破氏、対して「玉木ガチ恋」勢が登場
メディアに登場する政治家もビジュアル基準価値を向けられる対象になる。現に、石破茂首相は見た目のだらしなさで時々炎上している。石破内閣の発足に伴う記念写真撮影の際には「シャツが出ていてだらしない」と批判され、農家に視察にいけば「おにぎりの食べ方が汚い」と嫌悪感を向けられてしまった。
若者は石破首相の身なりや振る舞いがありのまますぎて受け入れられないのだ。「人目に付く写真や動画なのに、なんで見た目に気を付けないの?」と思ってしまうのである。
このような石破首相の失態により、清潔な見た目の玉木氏の株が反比例的に上昇していく。SNSには「玉木ガチ恋」という動画さえ投稿されており、ビジュ良しのおかげで若者からの人気を盤石にしているのだろう。
他党の切り抜き動画は流れてこなかった
私は仕事以外のほとんどの時間をSNSに費やしている中毒者だ。TikTokもかなり長い時間見ているが、選挙期間中は玉木氏の生配信の切り抜きが大量に流れてきた。特に興味がなかったので最初は流し見でスワイプしていたが、それでも何度も目にした。
生配信では、くだけた口調の玉木氏が視聴者のコメントを拾って、小粋に返す様子が流れている。たった数分の動画だが、玉木氏の明るい人柄が見える気がして好感を持った。
生放送だからこそ準備している感じがなく、自分の言葉で話しているような雰囲気があり、国民に寄り添って考えてくれている気になるのだろう。生放送の魔力だ。
玉木氏が熱い演説をしたり、自ら掲げている政策の説明を噛みくだいてみたり…といった切り抜き動画が流れてきて、国民民主党の主張は調べずともなんとなくわかるほどだった。国民民主党の政策は若者向けをアピールしているため、コメント欄は絶賛の嵐。
「どの党を応援したらいいんだろう」と悩む若者は、国民民主党が同世代の人たちに絶賛されているのを見て、さらに共感を募らせていく。
ちなみに、選挙期間中に他党の政治家の動画はほとんど見なかった。
庶民アピールはあざとい。絶妙なバランス感覚が必須に
玉木氏のSNS活用は今に始まったことではない。「永田町のYouTuber」と自らを称して、数年前から一発撮りで歌う「THE FIRST TAKE」風の動画を投稿していた。
TikTokで2億回再生を超える『魔法の絨毯』など若者に人気の曲を取り入れることで、親しみを持ってもらう下地を作っていたのだろう。
この「THE FIRST TAKE」風の動画は、目論見通り選挙期間中に「面白すぎる!」とバズっていた。
生放送やSNS、YouTubeをうまく使っているところは、石丸伸二氏と似ている。しかし論破癖があって怖い印象のある石丸氏より、優しげな人格を押し出した玉木氏の方が支持されたのかもしれない。
SNS展開はよい事ばかりではない。使い方を間違えれば炎上し、有権者にそっぽを向かれてしまう諸刃の剣だ。
今回の選挙中にも、「時短のためにコンビニでお弁当を買って車内で食べました」という旨のポストをした政治家が、「コンビニ弁当で我慢した、みたいな言い草」「コンビニ弁当は別に節約でも苦労の証でもない」と炎上した。
他にも同様の炎上事例が複数あり、「あざとい庶民アピール」は嫌な感情を抱かせてしまうことが明らかになった。
この「あざとい」と「わかる!」の差を一言で説明するのは難しい。玉木氏も下手すれば「若者に媚びすぎ」と取られそうなところを、絶妙な感覚で回避した。
このバランス感覚こそ最大の武器なのかもしれない。
不倫を叩く感覚がピンと来ない
ここまでSNS展開という観点から人気の理由を探ってきたが、前述のように「減税・手取り増」を掲げた点が最も大きい。物価や税金は上がるのに、賃金は上がらないこの世の中。「苦しい生活をなんとかしてくれそう」と若者が期待を寄せたのだ。
若者ももちろん「政治とカネ」や憲法問題、夫婦別姓などの論点が全く気にならないわけではない。しかし、何よりも「手取りが増えて生活が豊かになること」が今の若者の最大の望みである。税金と物価高に喘ぐ私の実感もそうだ。
玉木氏の不倫騒動後も「政策をしっかり実行してくれれば良い」という声が多かった。昨今の芸能人の不倫報道にウンザリしている若者は多い。独身もしくは既婚でも子供がいない若者世代は、不倫を熱心に叩く感覚がピンと来ないのだ。
斎藤知事問題で若者の目も厳しくなる
これからの選挙にSNS展開は外せないことは間違いない。しかし、ルール無用ではない。斎藤元彦知事のSNS広報が公職選挙法に抵触している疑惑なども湧き上がっている。国民、そして若者の目はますます厳しくなっていくに違いない。
選挙活動で「バズる」は必須だが、これまで以上に嘘を吐けないようになるかもしれない。政治家たちは真摯に選挙に臨んでほしいものだ。
若者の願い「とにかく手取りが上がりますように」という願いが早めに叶ってほしい。
(コクハク編集部/チルダ)
(コクハク編集部)