就寝中の寝室にコウモリが侵入し、子供が狂犬病で死亡「咬傷がなかった」と両親(カナダ)
カナダ保健当局は今月2日、オンタリオ州に住む子供が狂犬病で死亡したことを明らかにした。家族が目覚めてコウモリが寝室にいることに気づいたものの、子供に咬傷が見当たらなかったため、病院に連れていかなかったという。米ニュースメディア『CBS News』などが伝えた。
【写真】コウモリと接触した場合は「咬傷がなくてもすぐに治療を始めるべき」と医師
2日、オンタリオ州ハルディマンド・ノーフォーク・ヘルス・ユニットの最高医療責任者、マルコム・ロック医師(Dr. Malcolm Lock)が理事会で明らかにしたところによると、同州サドバリー北部の地域で子供が就寝中、コウモリが持っていたウイルスに晒された。
ロック医師は説明の中で、「家族が目覚めると、寝室にコウモリが1羽いた。そこで両親が子供の状態を確認したところ、咬傷や引っかき傷、唾液の痕などがなかったため、狂犬病ワクチンを接種しなかった。ところが残念ながら、その子は死亡してしまった」と明かした。
また、オンタリオ州の最高医療責任者、キーラン・ムーア医師(Dr. Kieran Moore)は声明で、子供は狂犬病の症状が現れたため、9月初めに入院したことを明らかにし、「人がオンタリオ州内で狂犬病に感染したケースは、1967年以来初めてのこと」と説明した。
今回の事例を受けて、ロック医師は「オンタリオ州南部地域では近年、狂犬病に感染したコウモリの割合が10%未満だったのが、16%にまで増加した」と指摘し、「コウモリと何らかの形で接触した場合は、咬傷がなくてもすぐ治療を受け、必要であれば狂犬病ワクチンを接種すべきである」と述べた。
なお、狂犬病は、コウモリ、アライグマ、キツネ、スカンクおよびペットなどにも確認され、引っかかれたり、咬まれたりした際に、動物の唾液と直接接触することで人間に感染する。
初期症状は脱力感、不快感、発熱、頭痛などがあり、インフルエンザに似ている。咬まれた部位に不快感や痒みなどを伴う場合があり、症状が現れる前に治療を行えば、その効果は非常に高い。ただ神経系を侵し、脳や脊髄の炎症を引き起こす致死性のウイルス感染症であり、錯覚や幻覚などの神経症状が現れると、最終的には呼吸停止を引き起こし、致命的となる。
米疾病予防管理センター(CDC)によると、狂犬病の潜伏期間は数週間から数か月に及び、暴露された場所や重症度、年齢によって異なるという。そのため、保健当局は次のようにアドバイスしている。
「もし、狂犬病の疑いのある動物に噛まれた場合には、傷口を石けんと水で15分間徹底的に洗浄し、直ちに医師の診察を受けることが必要である。」
連邦政府のデータでは、カナダでは1924年以来、28件の人間の狂犬病が報告され、全員が死亡している。保健当局によると、カナダでの狂犬病患者のほぼ全員がコウモリから感染したか、他国に滞在中に狂犬病ウイルスへの暴露があったそうで、このニュースには次のようなコメントが寄せられた。
「これは悲劇。」
「部屋にコウモリがいるのを確認しておきながら、子供をすぐに病院に連れて行かなかったことが悔やまれる。」
「コウモリの歯は小さいが鋭く、咬傷が分からないことがある。親を責めるのはやめよう。彼らは狂犬病の危険性を理解していなかったのだろう。」
「親の気持ちを考えると心が痛い。彼らは苦しんでいるに違いない。」
「これはいい教訓になったと思う。私も、コウモリとの接触で狂犬病の予防注射が必要だなんて知らなかった。」
「この子を助けられたかもしれない…。そう思うと、やはり辛いニュース。」
ちなみに2021年には米イリノイ州で、就寝中コウモリに首を噛まれた男性が狂犬病に感染した。男性は公衆衛生局に狂犬病の治療を受けるよう忠告されたものの、これを拒否し1か月後に死亡した。
画像は『LBC 「Child dies of rabies after parents discover bat in bedroom」(Picture: Alamy)』より
(TechinsightJapan編集部 A.C.)