第34回「主体的に考えること」
「私たちの未来は、私たちで作る!」
あなたの「困りごと」、「モヤモヤ」、「お悩み」、もしくは、「変えていきたい社会の課題」などを通して、みんなで一緒に「これから」を考えていく番組です。
今回は、原宿で行った街頭インタビューの声にスタジオの3人がこたえました。
仕事柄、教育について考える機会が多くて。学校が「子ども主体、子ども主役の場にならないといけない」と思っています。
今の子どもって、小中高の12年間、自分で学ぶことも、何を学ぶか、学び方も、選べません。大人の会社員が今から12年間、「なんのために仕事をするんだろう」ってわからない状態でひたすら仕事をさせられる、ずっと監視されているっていう状況は耐え難いですよね。でも、子どもはその状況にあるっていうのはおかしいなと思います。
子どもたちが活動やプロジェクトを行う中で学びを深めていくということが潮流としてあるんですが、そればっかりになってもいけないし、座学が得意な子もいますよね。だから、選択肢を増やしていくっていうのは必要かなと。
小泉:なるほどね、たしかにね。私たちが子どもの頃、どうだったかな。選択肢って、そんなになかったよね。
大石:なかったですけどね。近くの公立小学校に入って、中学校まで出て、みたいな感じでしたよね。
小泉:学校の選択肢はあって、小学校から私立に行く人とかもいたし、余裕があれば外で塾に行ったりスポーツとか自分が得意なことを習いに行く、みたいな選択肢はあって。今もそれは自由なのかもしれないけど、学校内になかなかないっていうのは…学生たちが主体で何かを達成する経験って、学校だからできることなのに、それがあまり行われていないのはもったいないかも、っていう気はしますよね。
上村:先生の数が足りないのかなって思います。子ども達の選択肢を増やすには、そこを見守る大人の数が必要ですもんね。
小泉:激務なんだもんね、学校の先生って。それもあるよね。
今もあるかもしれないけど、昔は生徒会っていうのがあって。そういう人たちを上手に育てて、主体となってもう少し何かできるとか、何かやりようはあるかも。選挙に行かないとかもさ…日本のこの間の選挙も投票率が50%ちょっとだったじゃないですか。学校の中で選挙制みたいなものを小さい時から学んでいると、「ここの場は自分たちが主体となっているんだ、だって学生なんだから」っていう感覚が芽生えるといいんじゃないのかな。
大石:そうですね。選択するっていうことは、社会をつくることと繋がっていることだから。
上村:小学校のときに好きだった時間がクラブ活動の時間なんです。部活とは違うもので、月に1回、好きなものを選んでやるあの時間が好きでしたね。ああいう時間がもっとあれば、いろいろなことに触れられるのになって思ったり。
大石:ちなみに、何に入っていたんですか?
上村:お菓子が食べたくて、茶道部に入ってました。笑
小泉:私も料理部、バトン部とかで、今でもちょっと回せるんだけど。1年間やっただけでも習得できるものってあったりするじゃないですか。あれよかったよね、私も好きでした。自由に選べるっていうのも、大人になった気分になれるっていうかね。
上村:部活とはまた違って、1年に1回くらい自分に選択権があるって言うのが嬉しかった気がします。
小泉:そうですよね。
上村:そして、多様化が叫ばれる中、世の中が大きく変化しているにも関わらず説明もないまま謎のルールや校則を生徒に強いる学校は、少なくありません。例えば…「靴下の長さは膝からくるぶしの1/3以下の長さ」「下着は白」「ダウンジャケット禁止」「恋愛禁止」など。みなさんもつい首を傾げたくなる校則、学校にありましたか?
小泉:私たち、ド昭和じゃないですか。
大石:はい、ド昭和。
小泉:だから、スカートの丈とかが長い時代ね。あとは髪の色とかはあった気がするけど。なんか、「破るのがルールだぜ!」みたいなムードがもうちょっとおおらかにあったかなっていう気はしますけど。笑
大石:ちなみにきょんさんは?
小泉:私は割と、スレスレを行くっていう感じで。
大石:なるほど、はい。笑
小泉:でも、「下着は白」「靴下の長さは膝からくるぶしの1/3以下の長さ」とかは、「今なの?」っていう。
大石:ね、ほんとですね。
小泉:白い下着なんて、なかなか…逆にハードル高くないですか?あんまり売ってないよ。あと、ダウンジャケットとかって軽くてすごく便利なものじゃないですか。寒い地方なんか特に。
上村:学生の子って、みんなダッフルコートとか着てますよね。
小泉:重いし、大変ですよね。お洗濯とかも大変じゃないですか?負担をかけているのは良くないなと思ったりします。
上村:そんな中、全国で増えているのが「ルールメイキング」。学校で決められている校則やルールについて、児童・生徒が主体的に関わりながら見直していこうという取り組みです。校則やルールに対する抗議ではなく、疑問に思う校則について1人の生徒が声を上げ、生徒と教員の間でコミュニケーションを重ねていきます。2019年に認定NPO法人カタリバが取り組みをはじめ、今年7月の時点で400校を超える学校で実践されているということです。
小泉:こういうことも、さっきの話につながりますよね。自分たちで主体となって、自分たちが疑問を投げかけていくことが成立したら成功体験として人生にすごく、いい影響が出る気がしますよね。
大石:学校だけじゃなくて職場でも、社会でも、いい経験に。
小泉:負けることも、いい経験だし。勝つことも、経験だし。これ、もっと広がって欲しい気がしますね。
M) 学園天国 / 小泉今日子
東京工科大学デザイン学部の”先生たち”が商品開発
クラフトビール「白蒲田」
お悩みから視点を広げて、こんな話題も紹介しました。
上村:今年7月に発売されたばかりのクラフトビール「白蒲田」。蒲田が発祥とされる羽付き餃子に注目して「飲茶的ビール」「仲間と語り合う瓶ビール」というコンセプトのもとで作られました。この商品開発を手掛けたのは東京工科大学デザイン学部の先生たちです。プロジェクトの中心メンバー小田敬子准教授にお話を伺いました。
大学で学ぶ学生って、本当に時代の先を考えてもらいたいし、これからのことを考えていく授業にしたいなと、モヤモヤしていたんです。
ちょうどうちの大学に企業から転職してきたばかりの職員がいて、「これからのグラフィックデザインはどうなるか」っていう話をしていたんですね。その職員はビールメーカーからやってきたということもあり、「産学連携でビールを作ってみよう」ということになりました。重要なポイントや学生の学びを言語化できないとまずいなと思いまして。それで、一旦、教員がやろうというのがスタートです。
製品を作る段階で、デザイナーが頭から参加することが大事だと、私は思っています。デザイナーが一連の行程を考えながらビジネスに参画していく形。今までの社会において、セクション分けみたいな形でビジネスが回ってきた中で、どういった形で人々に幸せを与えていくことができるかっていうことを大切に、リーダーシップを取れる人間が重要になっていくのではないかなと思っています。
小泉:すごくわかる!総合的に、みんながいい方向に持っていける視点がある人が最初からいるって、重要な気がしますね。これから学生たちを育てていく中でも、具体的に先生たちが経験することで広い視野を持った教え方ができる、っていうのはすごくわかる気がしました。
大石:ひとりひとりの顔が見えていくから。作る人、買う人、回収する人、っていうね。
小泉:例えば、ビールを作る人は「美味しい味のビールを作ろう」と思うだろうし、地元を盛り上げたい人は「どうやったら盛り上げられるだろう」って考えると思う。それを総合的に見ることができるのって、実はデザイナーとか、そういう人な気は、すごくする。
上村:あと、先生たちがまず自分たちで実践してみるっていうのは、その後学ぶ生徒達も納得感があるというか。
小泉:そうですよね。よく、「これは地元の学生さん達がやりました」とかあるけど。それだけだとそれで終わっちゃう。だけど、ビジネスという形で実現させて学びにできるっていうのはいい視点ですよね。
大石:高いハードルのところから学べるから。
上村:今までは、デザイナーの仕事は図面を描いてプレゼンテーションをすることだったそうなんです。これからは、リーダーシップを持って企画を作って、プレゼンをして、販売の促進をして、売上を立てるところまでがデザインだ、という思いを小田先生は持っているそうです。
小泉:いいと思います。例えば広告代理店みたいな人が入って、その人がそういう視点を持ってやることは結構行われているじゃないですか。でも、もう少し小さい規模で、デザイナーとかコピーライターとか、そういう人がこういう立場にいるのはすごく発展できる感じがしますね。大きなところばかりが仕事じゃなかったりするじゃないですか。特にこれからそうなっていく気がするから、いろいろな地方でそういうことが行われていくと街が活性化して広がっていくようなイメージを持ちました。
上村:そして、「オリジナルのクラフトビールをゼロから作っていく」という授業は東京工科大学で来年以降、計画されているということです。
小泉:大石さんは会社をやっていて、いろいろなもののデザインとかもあって、そのデザインって社内のデザイナーの方がやったりするんですか?
大石:そうですね、社内にもデザイナーはいますけど、デザイナーが商品の企画段階に関わるって理想的だと思う。
小泉:やっぱりそうだよね。
大石:最終的に手に取る姿を先導する人、それを表現できたり、リアルに形作れる人がリーダーシップを取るってすごく大事だと思います。そういうことを学びたかったもんね。
(TBSラジオ『サステバ』より抜粋)