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ご先祖さまがあの世に還る日。最後はエイサー道ジュネー…沖縄のお盆・旧盆行事「ウークイ」今年は2025年は9月6日(土)

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沖縄の旧盆は、年間行事の中でも特に重要な伝統行事のひとつです。 旧暦7月7日の七夕からはじまり、13日のウンケー(ご先祖さまのお迎え)、15日のウークイ(お送り)まで、およそ1週間にわたって盛大に執り行われます。 先祖を敬い、家族で大事な時間を過ごす1週間。 2025年は、9月4日(木)~9月6日(土)が旧盆にあたります。 本記事では、6日のウークイ(お送り)についてご紹介します。

お盆の最終日・ご先祖さまが帰る日「ウークイ」

旧盆の最終日「ウークイ」は、3日間滞在したご先祖さまがあの世(グソー)に還る日です。 この日もウンケーやナカヌヒーと同じく朝からお茶や食事などをお供えして、晩にはウークイ(御送り)を行います。 昔からウークイは夜遅いほどいいとされ、ご先祖さまを追い立てるようにグソーに帰してしまっては失礼にあたるとされています。 最近では、翌日仕事のある家族のことも配慮して夕方から行うのが一般的となっています。

ウークイ(御送り)のお供えもの

朝いちばんのウチャトゥー(お茶)と三度の食事をお供えするのはナカヌヒーと同じですが、ウークイは「重箱チュクン」をお供えします。 チュクンとは、餅重の二重重ねとウサンミー重ねのこと。 ウサンミーとは神さまやお仏壇へお供えする重箱料理で、お餅重とおかず重で一対になっています。 そのほかにも親戚縁者が持ち寄った御馳走やお菓子、果物もお供えします。 お供えした重箱の上には、グソーのお金である「ウチカビ」をお供えしえます。 お供えする枚数は、一般的に主人は5枚、そのほかの家族は3枚ずつとされます。 わらを主な原料としており、全面に銭型の模様が打ちつけられている、ウチカビ。 ウチカビ1枚あたりは、グソーの価値で50万円から2000万円ともいわれます。 ウチカビを焚き上げることで、故人がグソーで困らないように、という意味がこめられています。 ウークイでお供えするウチカビは、グソーまでの自動車賃やグソーの税金と考えられています。

ウサンミ(ご先祖様を迎えるためのお供え物)

「ウ(御)」+「サン(三)」+「ミ(味)」=ご祖先様への基本の食供 ウサンミ(御三味)とは、仏壇や墓前にお供えする基本的な供物のセットのこと。 「三種類の食べ物を供えるもの」という意味があり、基本は三皿または三種類の料理や供物を三の倍数で供えることが重要とされている。 一般的には「主食系」「野菜系」「たんぱく質系」の三種類で構成されている。 重箱の一段目(上段)に主食系、二段目(中段)に野菜系、三段目(下段)にたんぱく質系を入れる。 なおウチャヌク(餅、小麦粉でできたお団子)は、仏壇・墓前の最重要供物のひとつとされており、ウチャヌクが入っていれば簡略ウサンミとして成立するという考え方もある。 注意点 ・人間が食べる前に必ず霊に供える ・お供えた物を家族で「ナーチャー(お下がり)」として食べることも多い ・お供えする前にはヒラウコー(線香)を立て、「お供えしました」とウートートー(拝み)する

ウークイの進め方

ウークイは「ムートゥヤー」の家長がお仏壇に報告する拝みからスタートします。 沖縄では、仏壇を継承する家を「ムートゥヤー」または「ムチスク」と呼びます。これは、本土でいう「本家」に相当します。

1. はじめに仏壇のある家の主人(ムートゥヤー/ムチスク)は、ヒラウコウという6本のお線香をまとめた平べったい形状のお線香を二枚立てます。 お線香の形状は、本州のお線香とは異なっています。「家族一族全員で、ご先祖さまをおもてなしすることができました。」と感謝のことばを唱えます。 2. 続いて集った親族全員が、ヒラウコウ1/2を立てて、ご先祖さまに感謝の気持ちをお伝えします。 この際、それぞれ名前と干支もお伝えします。 3. 全員がヒラウコウを立て終えたら、主人はご先祖さまに日ごろの守護の感謝と子孫繁栄を願います。 また集った全員が手を合わせて「また来年もいらしてください。」と祈ります。

4. 供えた重箱料理から二、三品を取り出してひっくり返し上の方に重ねます。これは”ウハチを抜く”といい、ご先祖さまに「ウハチ(お初=最初のおかず)」を差し上げている、という意味です。

5. 続いてウチカビを焚き上げます。まずムートゥヤー/ムチスク(家長)がウチカビを焼き、燃えつきたら仏壇にお供えしていたお酒をかけていきます。 このとき、ウチカビの炎が青く光ると、ご先祖さまに感謝の気持ちが通じているといわれています。続いて家族や集った一族の順でウチカビを焼いていきます。

6. 最後に仏壇のお供えものをおろして、カビバーチというウチカビを焚きあげる容器のなかにお花、お茶、ウハチ(最初のおかず)、ソーローハーシまたはソーローメーシ(精霊箸:おはし代わりの植物)を入れていきます。

ヒラウコー(沖縄の伝統的な線香)

「ヒラウコー(平御香)」とは、沖縄独特の板状・帯状につながった線香のこと。 1枚に6本が連なっており、折って使うこともあるが、基本的には束のまま焚くことが重要。 ヒラウコーがつながっている理由は以下。 1)家族・祖先・子孫の連続性と一体性を象徴 沖縄の先祖祭祀では、「家族」や「門中(親族集団)」をひとつの魂の流れと考えるため、線香が1本1本バラバラであるよりも、束になって一緒に燃えることが重要。 2)霊を迷わせないため 1本1本を別に焚くと、霊が分かれて迷ってしまうという考え方も一部地域に存在する。束ねて焚くことで、確実に霊が来るべき場所に来られるとされている。 3)効率性と風雨対策 沖縄の墓前や拝所は、風が強く湿気も多い。細い線香ではすぐ消えるため、束で燃やすことで火が安定しやすい。 本数による意味 祈りの対象によって、本数を変えることがある。 お仏壇へご先祖様への拝みに用いる本数は「ジュウニフン(十二本)」 ヒヌカン(火の神)など神様へ用いる本数は「ジュウゴフン(十五本)」 一般的な御願行事で家長など家族の代表以外であれば「サンブンウコー(三本御香)」

ウチカビ(あの世のお金)

「ウチカビ」は、沖縄におけるあの世のお金(死後の通貨)。 供養や冥福を祈るために仏壇や墓前で焚き、ご先祖様があの世での生活に困らないように送るとされている。 ウチカビを焚く時間帯は、一家全員でウートートーをした後、夜が一般的。 重要なのは「霊を送り出す拝みの後に炊く」ことで、ウークイより前に燃やすと、お金だけ持って早く帰ってくれという意味になってしまうと言われている。 なぜ黄色なのか? 1)中国由来の文化 ウチカビは、中国の冥界文化「紙銭(ジージェン、紙のお金)」が由来とされている。 中国や台湾、ベトナム、華僑社会などでも、冥銭(あの世のお金)=黄色の紙が基本。 古代中国では、黄色は「皇帝」「天子」「神聖」を表す最上位の色だから。 2)沖縄で黄色は神の色を表す 沖縄の民俗信仰において、黄色や金色は「神仏が好む色」「浄化・祝福・守護の象徴」「太陽や火の色と重なる霊魂のエネルギー源」と認識されている 3)火で燃やすと、黄色は「金」と認識される 黄色い紙を燃やすと金色のように明るく燃える。ウチカビは燃やして使用するので、燃えて金色に見えることから「金銭」や「財」の象徴と解釈された。 ウチカビの丸い模様は昔、各家に型があり手打ちしていたそうです。 ウチカビを燃やす時の注意点 ・焚く前にご先祖様への声かけを忘れないこと(無言で焚くことは「捨てた」ことを意味することもある) ・火が途中で消えるのは届かない兆しとされるので、再度祈り直す ・ウチカビを無造作に扱うのは不敬なので丁寧に扱う ・他人のウチカビの火に自分のものを混ぜない(宛先が混ざってしまうため) ・燃え残りは家の外の土に埋めるか流すか、白布などに包んで処分し、家の中には持ち込まない(穢れを避けるため)

ソーローメーシ・ソーローハーシ(あの世のお箸)

地域によって解釈が若干異なる。 メドハギ箸のみを指して「ソーローメーシ」と言うことが多い。 メドハギとは 野原や墓地周辺によく見られる茎の細い草本植物で、沖縄では「霊的に清い植物」「霊を導く草」とされている。 メドハギで箸を作ることで、ご先祖様専用のおはしを用意するという意味があり、敬意を示している。

ウークイの最後:ご先祖さまを門でお見送りする

仏前での拝みが済んだら、続いて家の外の門前でお見送り(ウークイ)をします。 ご先祖さまが護る家の中とは違い、魑魅魍魎(チミモウリョウ)が闊歩しているといわれている旧盆時期の夜。 御見送りの際にはアルミホイルに包んだ「ミンヌクー」を門前に置いておきます。

「ミンヌクー」とは、お盆に仏壇に帰ってくるご先祖さまにつられてくる無縁仏や餓鬼(チガリムン)に供えるもの。 お仏壇の提灯の足元など、下の方に置かれるウージの切れ端を差し、ウージのほかに野菜の切れ端なども入っています。 無縁仏や餓鬼(チガリムン)にも心を配ります。 1. 容器を門前に置いて、家長が線香(ヒラウコー2枚)をお供えし、「盆のおもてなしを滞りなく済ませました。お土産に御馳走とウチカビをお持ち帰りください。」と祈ります。 2. 集った一族・家族全員で合掌して「来年もいらしてくださいませ。」と唱えて、ご先祖さまを見送ります。 お見送りをした後のお土産は、「ウサンデー」と呼ばれます。 ウサンデーはご先祖さまが持ち帰りやすいよう、クワズイモの葉に包みますが、入手できない時にはアルミホイルでも大丈夫。 そのまま翌日まで門前に置くのが、昔ながらの風習です。 ウークイの儀式がすべて済んだら、お供えものを一族におすそ分けなどして片づけて、飾り付けの提灯などもその日で片づけてしまうのがご先祖さまへの礼儀とされています。 ハナイチ(花器)には、チャーギ(イヌマキ)やクロトン(ヘンヨウボク)などの植物を生けて、手早くふだんの状態に戻します。 これにて、ウンケーが無事終了。片付けはその日のうちにするのが恒例です。

ウークイのフィナーレ!エイサーが進む道ジュネー

旧盆の最終日、地域の青年会などによるエイサーが練り歩く。これが沖縄の夏の風物詩、道ジュネーです。 エイサーの音を聞くと太鼓の音で胸がおどって、ちむどんどんする、といいます。 旧盆の翌週末には「全島エイサーまつり」が沖縄市で行われます。 エイサーを楽しみながら旧盆の余韻を楽しみつつ、こうして沖縄の夏が過ぎていきます。

ご先祖さまと過ごす3日間。沖縄で受け継がれてきた感謝の心を感じよう

タナバタからはじまり、ウンケー・ナカヌヒー・ウークイと、ご先祖さまと過ごす大切な「旧盆」。 沖縄の伝統がいまもなお受け継がれ続けている、ご先祖さまへ感謝の心を示すときでもあります。 うちなーぐちに詳しくなくとも、最終日のウークイでは送り言葉を使えるといいですよね。 以下の送り言葉を覚えて、心穏やかに旧盆の終わりを迎えてみてはいかがでしょうか。 「マタン、ヤーヌンメンソーチ クミソーリ!(また来年もいらっしゃってください)」

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