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【高野寛さんの新刊「続く、イエローマジック」】 1980年代以降の「日本のポップミュージック界隈」が見えてくる

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は11月11日に初版発行(奥付)されたシンガー・ソングライターの高野寛さん(静岡県出身)の新刊「続く、イエローマジック」(mille books)を題材に。

1986年からの音楽遍歴を時系列でたどるウェブマガジン「ずっと、音だけを追いかけてきた」を起点にした単行本。源流は2018年の3枚組ベスト「Spectra」に収めた膨大なセルフライナーノーツという。

約40年間の「日本のポップミュージック界隈」の景色の移り変わりがよく分かる。いわゆるJ-POPの勃興と興隆、周囲のミュージシャンやバンドの交錯と交流、レコードやカセットからCDを経て配信に至る「音楽の聴き方」の変化といった、いくつも切り口が存在する。

それらがバラバラに置かれるのでなく、高野さん個人の「通史」として語られることで、スッと頭に入ってくる。この「読みやすさ」はかなり重要なポイントである。

さまざまな音楽家との共演の背景や、音楽スタジオ内外でのエピソードが楽しい。自他ともに認める「YMOチルドレン」の高野さんは、同じにおいを持つ人を見つけるのがとてもうまい。

読んだ人、一人一人が自分にとってお気に入りのエピソードを見つけるだろう。そうした作りになっている。

個人的にはビーチ・ボーイズの来日公演を客席で見ていたら、オープニングアクトだった星野源さんにステージ上からあいさつされた話や、京都精華大で教えていた時期の中村佳穂さんと共演した話が好きだ。

厳しい音楽業界をサバイブしてここにいる高野さんだから、楽ちんなだけのキャリアではなかったはず。だが、この本には音楽を愛し、音楽で仲間をつくり、音楽で自分を高める姿しか出てこない。いくつかの転機も、決して絶望せずネクストステップにしている。

音楽と高野さんの「信頼関係」のようなものが、読む人を勇気づける。元気をなくしたときにもう一度読もう。(は)

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