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【上海発】海外帰りシェフの自由な発想炸裂!フュージョンビストロ2選

東京ディープチャイナ

【上海発】海外帰りシェフの自由な発想炸裂!フュージョンビストロ2選

不景気とは言われるものの、日々新しいお店がオープンし、新しいブランドが立ち上がっている上海。

そんななかいつも話題になるのが、コロナがきっかけで海外から帰国した中国人が手がけているお店です。

共通点は、海外にいたからこそ見える中国文化の魅力。彼らの視点を通した中国の味、デザイン、ライフスタイルは、同じく海外帰りの中国人たちの共感を集め、また海外に出たことがない若い層には新鮮に映っているようです。

今回は、そんな海外帰りオーナーシェフの注目店二つをご紹介したいと思います。

まず一つ目のお店は『Yaya’s』
アメリカで建築を学んでいた新疆出身のオーナーが開いた手打ちパスタのお店です。このサイトの読者なら、パッと「ウイグル料理とパスタって相性良さそう!」と思ったのではないでしょうか。

オーナーでシェフのDan Liさんは、「国籍、出身地、背景が多様な人たちが集まる上海だからこそ受け入れられたのかも」と自身の料理について話しています。

ここ数年、上海に住む若い子たちが「街の包容性」という言葉をよく使うようになっていますが、Dan Liさんの味はそれを体現したかのような仕上がり。私も『Yaya’s』の料理を食べてから、未来の上海料理の定義は、こういう斬新な融合料理になっていくのかもしれない、と思いました。

店内には「面」の文字。カウンターでワインを飲みつつオープンキッチンを眺められる

人気No. 1は「慢炖羊肉醤手工大寛麺」(88元)。

和訳するなら、「煮込み羊ミートソースのパッパルデッレ」。羊ソースが絡んだなめらかな幅広手打ちパスタに、サワークリームを混ぜながら食べます。以前3人でいろいろ頼んでシェアしたとき、おいしくてすぐなくなってしまってこれだけお代わりしたことがあるほど。

「このパスタ、上海に来ないと食べられないんだよー」と全世界の人に自慢したくなる一皿です。

羊ミートソースとサワークリームが相性ばっちり

もう一つのお勧めは「咸蛋黄風干猪肉芝士吉他長麺」(88元)。

「咸蛋黄(アヒルの卵の塩漬け)」のカルボナーラです。チーズたっぷりで、ペーコンは旨味たっぷりの豚頬肉で、正統派カルボナーラに大差をつけて勝ってしまいそうな味。
一人ランチで『Yaya’s』に来るとき、私は大抵これです。

見た目も芸術的。各味にベストな太さの手打ちパスタを合わせてくる

『Yaya’s』はナチュラルワインをいろいろ揃えていることでも人気のお店。おつまみも手を抜かず、斬新な発想のメニューが揃っています。

お勧めは、オリーブオイルが効いたナスのディップをナンのような薄焼きサクサクの餅につけて食べる「椒麻烤茄子泥」(48元)と、カタクチイワシの貴州風マリネ「貴州酸湯鳳尾魚」(48元)です。

休日の午後に、この2皿で延々ワインを飲むのが理想

ほかにも、麻婆ラザニア、ブッラータチーズと泡菜、油泼パスタなど教えたいメニューが多数。

上海に来た際にはぜひ行ってほしいお店です(人気店なので要予約)。

もう一つのお勧め店は『Alors』

フランス、デンマークなどで料理の修行をしていた中国人(私の知人の旦那さんです)が開いたお店で、料理はフレンチをベースにしたフュージョン。

場所はコロナ以降ガラッと雰囲気が変わった「田子坊」内です。在住者はなかなか行かないエリアですが、このお店のオープン以降「田子坊」は食事に行く場所になった気がします。

内装はカジュアルだけど、料理はびっくりするほど本格派。在住欧米人の常連も多い

人気No. 1は「鱿魚焼椒醤皮蛋」(78元)。

青椒(ピーマン)と皮蛋のソースで食べるイカのグリルです。長らく食べていなかった、というかあまりしっかりフレンチを食べてこなかった私でも、中国っぽい食材なのに、「フレンチってそうだった……」としみじみ感動してしまう味。ピーマンのソースがまろやかでイカにぴったり。でも、確かに中華。いろいろ考えてしまう一皿です。

フレンチだけど、全然肩肘張る必要なし。みんなでシェアしながら食べられる雰囲気

個人的なイチオシは「南瓜泥杏鮑魚菇」(68元)。

クリーミーなカボチャのソースで食べるエリンギのソテーです。ホタテか思うジューシーさ。風味もやさしくて、あらためて「フレンチってこうだった……」と感動(中華だけど)。

絶対的エースのメイン料理が、肉でも魚でもないという斬新さ

もう少し中華寄りのお勧めは「梅干菜鶏翅」(88元)。

紹興料理でよく使われているイメージの梅干菜(高菜を干したもの)とタケノコが入った手羽餃子です。梅干菜の旨味が手羽の油に溶け込んでいて絶品。ワインで乾杯したとしても、ここだけビールを頼みたくなります。

梅干菜はもう少し日本の中華料理でも取り入れていったほうがいいと思う

締めは「面疙瘩」(68元)。

英語メニューには「新疆ニョッキ」と書かれていました。面疙瘩は日本でいうすいとん(小麦粉を練ったもの)ですが、これを芋でつくったとのこと。上には香ばしく焼いたキノコ、スープはクリーム系、パラっとかかっているアクセントはなんと酸豆角(発酵させたササゲ)です。

バラバラなようでいて、すごくまとまっていて完成された一皿でした。

クリーム系のパスタに酸豆角が合うという新たな発見

今回は以上二つのお店を紹介しましたが、今後もユニークなビストロはどんどん登場しそう。

でも、ほんの2〜3年前まで、上海の人たちはフレンチもイタリアンも「正宗(本場の味)かどうか」を重視していた気がします。私も、「なので上海はイタリアンのお店はイタリア人シェフが、フレンチのお店はフランス人シェフがいるんですよ」と、何度もアテンドやコーディネートの仕事時に説明していました。

が、「フージョンもおもしろくておいしくて新しい」ということが伝わると情勢は一気に逆転。この変化の速さも、未知の料理が定番になっていくスピード感も、上海の食事情を追いかける楽しさだと思います。

(萩原昌子)

店舗情報

Yaya’s

上海市静安区銅仁路329号
12:00-21:30

Alors

上海市黄浦区泰康路200弄120号
12:00-24:00

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