【多摩市】ボランティアグループ繭 音訳者不足 存続に懸念 高齢化などが影響
豊ヶ丘を拠点にボランティアで活動する音訳グループ繭(銭廣芳子代表)が高齢化などを理由に担い手不足という課題に直面している。市の広報や市社会福祉協議会の「ふくしだより」など生活に欠かせない情報を音声に変換し、視覚障害者など目の不自由な人に提供している。発足から35年以上が経ち、コロナ禍を乗り越えた同グループは、存続に向けて会員の募集に力を入れている。
同会は1991年に設立し、目の不自由な人に向けて、生活するうえで必要となる情報の音訳のほか、依頼を受けた会員からの書籍や雑誌などの音訳をCDにして郵送している。当初はカセットテープに録音していたが、1997年からはパソコンを使った録音に切り替わった。
マイクを通し、パソコンの専用ソフトから音声を録音し、グループ内で共有・編集などを行う。発足以来35年にわたり活動を続け、多摩市広報や選挙公報などの音訳のほか、個人からは囲碁の棋譜や天文ガイド、専門書などの依頼が舞い込む。
パソコン導入直後には108人まで増えたボランティア会員は、現在約30人弱まで減った。豊ヶ丘の事務局では約10人でCDの郵送作業など事務にあたる。銭廣代表は「全国的に音訳者が不足している。家庭の事情や高齢化など人数が減っている」と話し、隔年で実施している研修会の参加者も減少している。
2022年の研修から会員になった女性は「当時はコロナ禍で家にいる時間が長くて、必要としている人がいるならと思い参加することにした。最初は難しかったけど、慣れてしまえば誰でもできると思います」と話す。
副代表を務める秦邦枝さんは「校正など何時間もかけて行っているが、ほとんどの人が主婦でボランティアとして参加している。家事の合間に作業するというか、作業の合間に家事をしているみたい」と笑う。また、「利用者の方の生の声を聞くという交流は絶やさない。利用者さんに頼られ、喜んでもらえるやりがいがある」と語った。
同グループでは来年4月から5回程度の研修会を実施し、担い手の育成を図る。そのほか、随時会員を募集している。