未公開の貴重な写真も展示される「東京大空襲80年―新たな記録を探し続けて―」が5月25日まで『すみだ郷土文化資料館』で開催中
1945年3月10日の東京大空襲から80年。その後の4月、5月にも空襲を受け、大きな被害が出た墨田区域。開館以来25年、調査・研究を続けてきた『すみだ郷土文化資料館』による新たな記録と資料が公開される「東京大空襲80年―新たな記録を探し続けて―」が、2025年5月25日(日)まで開催されている。
新たな記録が調査・研究された成果を6つのコーナーに分けて紹介
80年前の東京大空襲で人々の生命や家屋、財産に大きな被害が出た墨田区。しかしその実態の解明はいまだ不十分なままだ。本展では、新たな記録を各所に求めて調査・研究した成果が6つのコーナーに分けて紹介される。
注目は、墨田区内で3代続く『工藤写真館』の初代、故・工藤哲朗氏による写真だ。両国橋両岸地域の空襲の被害状況が撮影されており、空襲下と焼跡を撮影したパノラマ撮影など7点が展示され、その大部分が未公開の写真となる。
学芸員の石橋星志さんは、「空襲被害を撮影した写真は、東京など6大都市では報道関係者の撮影が多く、直接間接に軍の許可や支援がある人によるものが大半です。地方においては、写真館主の撮影が多いですが、東京では珍しいものです。ネガの確認ができておらず、時系列が確定できませんが、空襲による火災を写した写真は特に貴重なものです」と語る。
また、東京都公文書館の調査からは、復興小学校の地下に設けられた「市民防護室」の建設資料が見つかったという。
「これまでも証言の中で、小学校の地下に逃げたという話やそこが多くの死者を出した場所になった話もありましたが、詳細は不明でした。今回の資料によって、昭和14~16年度(1939~41年度)にかけて建設されたことが判明。工事図面などを展示しているほか、当館所蔵の空襲体験画と合わせて展示し、体験者の証言と図面が重なっている様子、今回公文書が確認できていない学校にも地下室があったことも併せて紹介しています」
2階に常設展示されている、空襲体験画約30点と合わせて観覧したい。
調査研究の継続から生まれた、新たな成果も紹介
空襲による火災の延焼を防ぐために建物を取り壊して空間をつくる作業、建物疎開。調査によって判明していた部分と不明な部分があった資料を、東京都立中央図書館所蔵の建物疎開資料との突き合わせることによって、詳細な場所が分かる貴重な資料であることが今回確認された。
また、空襲の体験者に話を聞く際に避難経路も併せて確認することで、出来事と場所を関連付けて記録している避難経路図も展示されている。
「現在のその場所に立って、避難経路を追体験することも可能です。街の様子は変わっていても、体験がない我々には、現在の街を歩く中で感じるものも意味があるものと思っています」と、今回4人を加え、当時4歳だった王貞治さんをはじめ、15人の軌跡を紹介している。
「戦争を知る世代が減る中で、体験のない世代が平和について考え、平和を続けていく心を育てていくことが大事」と石橋さん。一過性ではない関心を寄せ続ける第一歩にしていきたい。
開催概要
「東京大空襲80年―新たな記録を探し続けて」
開催期間:2025年2月15日(土)~5月25日(日)
開催時間:9:00~17:00(入館は~16:30)
休館日:月(祝の場合は翌休)・第4火(祝の場合は翌休)
会場:すみだ郷土文化資料館(東京都墨田区向島2-3-5)
アクセス:東武鉄道東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅から徒歩7分。地下鉄浅草線本所吾妻橋駅から徒歩8分
入場料:一般100円、中学生以下・障がい者手帳などお持ちの方とその付き添いの方は無料
【問い合わせ先】
すみだ郷土文化資料館☏03-5619-7034
公式HP https://www.city.sumida.lg.jp/sisetu_info/siryou/kyoudobunka/info/kushu06.html
取材・文=前田真紀 画像提供=すみだ郷土文化資料館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。