子ども食堂 最前線 孤食解消から地域交流の場に
子どもに無料か、低額で食事を提供する「子ども食堂」は今や孤食や貧困の支援だけにとどまらず、地域交流の場の一つとして溶け込んでいる。認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえが実施した全国調査によると、子ども食堂の数は昨年1万カ所を超えた。食堂と一口に言っても形態や役割はさまざま。市内18カ所が加盟する「ふじさわこども食堂・地域食堂ネットワーク」では各所のメンバーが交流を深め、食材確保や寄付獲得など運営に必要なノウハウ、抱える課題を情報共有。持続可能な運営を図っている。
形態・役割さまざま
2023年6月に発足した同ネットワーク。食堂となる会場は教会や寺院、居酒屋、メニューは定番のカレーや豚汁、いなりずし、ポトフなどで、時間帯もそれぞれ異なる。祭りや芋掘りといったワークショップを開く食堂もあり、一つとして同じ食堂は存在しない。それらのまとめ役として代表を務めるのが、川本修三さん(62)。自身も第4木曜に「六会ご縁食堂」を運営しており、先月24日には「スタミナカレー」を振る舞った。常連のシニアや初めて訪れた親子連れなどが食事を共にし、和気あいあいと会話を楽しんでいた。
好循環な仕組み
子ども食堂は、NPOや市民団体がボランティアで月に1〜2度開催するケースが多く、同ネットワークが立ち上がったことで、加盟一覧を巡る利用者もいる。
運営側も横のつながりを持ち、手洗いの講義や実践など食品衛生を学ぶほか、食品や備品の情報をLINEで共有。必要な量だけ「フードバンクふじさわ」(鷲尾公子代表理事)から分配される仕組みが築かれている。
川本さんは「子ども食堂は利用者のみならず、運営スタッフのやりがい創出にもつながり、寄付者も含めると関わる人全てに良い循環ができている。母子家庭や独居高齢者はもちろん、誰でも利用できる地域のたまり場」と説明する。
新生フードバンク
子ども食堂や支援を必要とするひとり親世帯に食品を届ける活動を行うフードバンクふじさわが先月3日、一般社団法人として再出発した。
2021年にふじさわ福祉NPO法人連絡会を母体に設立された同団体。個人や企業から寄付された食料を、市社会福祉協議会やボランティアの協力で同団体が保管・仕分けを行った後、子ども食堂のほか、高校生までの子どもを持つひとり親世帯に月に1度、藤沢、大庭、村岡、明治、長後各地区で配布している。
運び込まれる食糧のうち、冷凍食品などには冷凍庫や冷凍車が必要となる。法人格ではなかった同団体はこれまで休眠預金などの支援制度に申請することが難しく、鷲尾さんが会長を務める認定NPO法人が申請し、冷凍庫や1トンの容量を持つ冷凍車を購入していた。「法人格を得て、今後は申請がしやすい」と鷲尾さん。企業からの支援も受けやすくなる。「法人でないと企業の活動費として認められず、経営者のポケットマネーから出してもらっていた。今後は胸を張って取り引きができるのでは」と期待感を示す。
「今、フードバンクの現場に最も必要なものはお米とお金」。全国的に米不足となる中、市に米の支援を要望し、市社協の協力で、1世帯3カ月分でプラス5キロを確保できた。「設備面も整ってきたが、運搬費や冷凍車の維持費などの運営費が足りない。法人化で寄付が受けやすくなることを期待する」。現場では物価高で困窮する家庭が増えていると実感。「支援を待つ一人でも多くの人に届けたい」とした。