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進学の選択肢「通信制高校」 料金体系・教育内容・サポート体制 専門家が解説する「学費」の注意点

コクリコ

人気が高まり続ける通信制高校について、認定NPO法人カタリバ代表理事・今村久美さんに解説してもらう連載2回目。今回は、通信制高校の学費の仕組みと注意点に迫ります。

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通信制高校のリアルを、認定NPO法人カタリバ代表理事・今村久美さんに解説してもらう本連載。2回目は、通信制高校の学費についてです。

通信制高校は、一般的に「学費が安い」というイメージがあるかもしれません。ところが、基本的なカリキュラムに加えて、追加のオプションに別途費用が発生するケースが多くあり、学費の総額がわかりにくいという難点があります。

そこで、通信制高校の学費の仕組みと注意点について、今村さんに解説していただきました。

今村久美(いまむらくみ)
認定NPO法人カタリバ 代表理事。慶應義塾大学卒。2001年にNPOカタリバを設立し、高校生のためのキャリア学習プログラムの提供を開始。こども家庭庁こどもの居場所部会委員。東京都学校外での子どもの多様な学びに関する有識者会議委員。東京大学経営協議会学外委員。朝日新聞パブリックエディター。

学びを支える「サポート校」の実態

通信制高校の学費は、大きく分けて以下の2つで構成されています。

通信制高校の学費
1.基本的な授業料(教材費込み)
2.追加オプションの費用(学習や生活サポート、課外活動など)
※民間の「サポート校」が担う場合もあります。

そして通信制高校の学費で忘れてはいけないのが「サポート校」の存在です。

サポート校とは、通信制高校と提携している学習塾や予備校といった学習支援施設のことを指します。
(※通信制高校の中には、校内に学習支援を行うコースを設けている学校もあります)

通信制高校では、自宅学習が中心となるため、計画どおりに学習することが難しかったり、孤立感を感じてモチベーションが維持できず、途中で挫折してしまうことも。また、卒業まで3年以上かかってしまうケースも少なくありません。

そこでサポート校が、基本科目の補習やレポート作成といった学習面でのサポートに加え、生徒の生活面や精神面でのサポートを行っているのです。

独自の強みを生かした「サポート校」も

各サポート校では、独自の強みを活かした多様なプログラムを用意しているのも特徴です。例えば、ITやデザインといった先進的な学習や課外活動、専門講師による難関大学の入試対策など、生徒のニーズに合わせて選ぶことができます。

サポート校への通学日数は、カリキュラムやプログラムによって異なりますが、週1回からほぼ毎日通うケースもあるなど、さまざまです。

もちろん、サポート校に通わなくても通信制高校を卒業することは可能ですが、学習面や生活面でのサポートを必要とする生徒にとって、サポート校は重要な役割を果たしているのです。

高校就学支援金「サポート校」は対象外

その一方で、サポート校を利用する際に注意しなければならないのが費用の問題です。
今村さんは次のように語ります。

「サポート校は『塾』と同じ扱いのため、通信制高校の学費に加えて別途サポート校の料金がかかります。そして、通信制高校よりもサポート校のほうが、料金が高い場合が多いのです。さらに、高校就学支援金は、通信制高校の授業料部分には適用されますが、民間で取り組んでいるサポート校の授業や講座には適用されません。

そのため、『通信制高校は安く進学できる』と信じて入学したものの、実際には年間で100万円以上の高額な金額がかかってしまった、という声も少なくありません」(今村さん)

つまり、通信制高校は安いと思っていても、サポート校の費用が加わることで予想以上に高額になることがあるのです。

写真:アフロ

通信制高校とサポート校の違い

ここで重要なのが、通信制高校とサポート校の違いを理解することです。

サポート校は国の認可を受けていないため、高校卒業資格を取得できません。サポート校はあくまでも通信制高校を補完する存在であり、正式な高等学校ではないからです。

しかし、学校名だけでは、その学校が通信制高校なのか、サポート校なのかを判断しにくい場合もあります。

「『通信制高校』と『サポート校』を見分けるコツですが、例えば、『○○高等学校』や『○○高校』と表記されている場合、その学校は認可された通信制高校であることが多いです。通信制高校の場合は、校内でサポートが受けられ、高校就学支援金が適用できるのか。それとも別途サポート校に入学する必要があるのかを確認するようにしましょう。

一方で『○○高等学院』『○○高等学園』『○○キャンパス』と表記されている場合、その学校はサポート校である可能性が高いです」(今村さん)

通信制高校とは別にサポート校への入学が必要な場合は、その費用も含めたトータルの教育費用を事前に把握しておくようにしましょう。

複雑な「オプション費」は事前にチェック


冒頭でも触れたとおり、通信制高校の費用は、基本的な授業料以外にもさまざまなオプションで構成されています。例えば、授業の補習や追試、部活動や修学旅行への参加、週に数回の登校など、学校によってオプションの内容は異なります。

そして、これらのオプションを生徒が利用する場合、別途どれくらいの費用がかかるのか「一見してわかりにくい状況になっている」と今村さんは指摘します。

「通信制高校では、授業に含まれていないオプションの費用の内訳がどのようになっているのか公表されていないことが多いです。そのため、保護者の方は各学校に個別で問い合わせをして詳細を確認する必要があります」(今村さん)

つまり、入学後の予想外の出費を避けるためには、基本的な授業料だけでなく、オプション費用についても事前の確認が欠かせません。

最後に今村さんは、通信制高校を選ぶ上での注意点を次のようにまとめました。

「これまでお話ししてきたとおり、実際には通信制高校の学費は学校によって大きな差があるのが現状です。
各学校の費用体系や教育内容、サポート体制など情報を事前に収集して自分の目的や目標に合った学校を見つけられるといいですね」(今村さん)

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通信制高校へ入学してから予想外の出費に気づく前に、授業以外のサポート内容や、それに伴う費用などは事前に学校側に確認をして自分に合った学校を選ぶことが重要だということがわかりました。

次回3回目では、学校選びの際に特に重視すべきポイントについて、引き続き今村さんに教えていただきます。

取材・文/山田優子

「NPOカタリバがみんなと作った 不登校─親子のための教科書」著:今村久美(ダイヤモンド社)

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