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『三菱一号館美術館』の再開館記念展覧会「再開館記念『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」、2025年1月26日まで開催中

さんたつ

9.ソフィ・カル氏ポートレート

『三菱一号館美術館』再開館記念初の展覧会として、ロートレックのコレクションと現代フランスを代表するアーティスト、ソフィ・カルとの協働プロジェクトを展開。「再開館記念『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」が2025年1月26日(日)まで開催されている。

コロナ禍で見送られたソフィ・カル氏との協働プロジェクトが実現!

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック『エルドラド、アリスティド・ブリュアン』 1892年 リトグラフ/紙 『三菱一号館美術館』蔵。

2020年に開館10周年記念展として企画された「1894 Visions ルドン、ロートレック」のために招聘される予定だったソフィ・カル氏(1953~)。しかし世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により見送らざるをえなかったという事情があった。

『三菱一号館美術館』では「美術館は、時代の変化に応じて、常にその活動を見直す必要があり、そのために、時代を映す鋭敏なアーティストの感性を借りることが、ひとつの最善策である」と考え、本展で改めてソフィ・カル氏を招聘し協働を目指すことに。館の重要なコレクションであるアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)にソフィ・カル氏の作品と視点が加わることで、美術館活動に新たな視点を取り込み、今後の発展につなげることを目指していく。

「不在」を主題として、展覧会や美術館活動の「存在」について考える

ソフィ・カル氏ポートレート。Sophie Calle Photography : Yves Géant。

ソフィ・カル氏が長年にわたって考察をめぐらせてきた「喪失」や「不在」。トゥールーズ=ロートレックは、「不在」と表裏一体の関係にある「存在」について「人間だけが存在する。風景は添え物に過ぎないし、それ以上のものではない」という言葉を残している。この言葉に象徴されるようにトゥールーズ=ロートレックは、生涯にわたって人間を凝視し、その心理にまで踏み込んで、「存在」それ自体に迫る作品を描き続けた。

本展においてもトゥールーズ=ロートレック自身、また彼が描いた人々もすでに「不在」であり、今では作品のみが「存在」する。ソフィ・カル氏から投げかけられた「不在」という主題を通して、改めて当事者が関わることができない展覧会や美術館活動の「存在」について考える。また、観る人にとっても「不在」と「存在」について思いをめぐらせる、思索の旅となりそうだ。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 『54号室の女船客』1896年 リトグラフ/紙 『三菱一号館美術館』蔵。
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 『「彼女たち」 行水の女―たらい』1896年 リトグラフ/紙 『三菱一号館美術館』蔵。

開催概要

「再開館記念『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」

開催期間:2024年11月23日(土・祝)~2025年1月26日(日)
開催時間:10:00~18:00(祝を除く金・会期最終週平日・第2水は~20:00。入館は閉館30分前まで)
会場:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
アクセス:JR東京駅から徒歩5分、地下鉄千代田線二重橋前〈丸の内〉駅から徒歩3分、JR・地下鉄有楽町駅から徒歩6分、地下鉄日比谷駅から徒歩3分、地下鉄丸ノ内線東京駅から徒歩6分
入館料:一般2300円、大学生1300円、高校生1000円、小・中学生無料
※障害者手帳をお持ちの人は半額、その介護者1名は無料。

公式HP  https://mimt.jp/ex/LS2024/

取材・文=前田真紀  画像提供=三菱一号館美術館

前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。

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