【「2024年しずおか連詩の会」参加詩人から(番外編)柴田聡子さん「My Favorite Things」 】「瞳と瞳に映る星が/同じだった頃を/だめもとで思い出す」
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。「2024年しずおか連詩の会」の参加詩人の作品を紹介する不定期連載。10月31日~11月2日の創作、3日の発表会は終了した。今回は番外編として、シンガー・ソングライター/詩人の柴田聡子さんの10月23日発売の8枚目CD「My Favorite Things」 を題材に。
今年の「しずおか連詩の会」で、柴田さんは5人の詩人が集う「座」に確実な変化をもたらした。千変万化の8編を作り出し、自作詩の朗読も披露した。
創作期間の約1週間前に放たれた新作は、今年2月に発表した「Your Favorite Things」を曲順もそのままに弾き語りで再収録したもの。エレピのやわらかい和音の上で、心地よい残響とともに歌声が浮遊する「Movie Light」、コードチェンジのきしみが生々しいギター伴奏の「Synergy」という幕開けの2曲が、リラックスと緊張の両方をはらむこの作品の雰囲気を確実に説明している。
多くの曲が、シンプルな演奏の前域、もっと言えばリスナーの耳の近くに歌声が置かれていて、歌詞の「っ」や付点音符や装飾音が割り当てられた言葉が、「Your Favorite Things」よりさらに強く聞こえてくる。
「白い椅子」は一度始めた演奏を「やり直している」ように聞こえる。今作で唯一、打ち込みのリズムを使う「Side Step」の躍動感が際立つ。エレピだけで歌う「Your Favorite Things」のファルセットの美しいこと。(は)