武蔵小杉駅~矢向駅の高架化で JR南武線の開かずの踏切が解消に! 2033年度に開かずの踏切解消、全体完了は2039年度を予定 (川崎市)
JR南武線の連続立体交差化へ向けての都市計画事業認可を受けたことを、川崎市が発表しました。
東海道沿線・川崎駅から多摩エリア・立川駅を結ぶ南武線
南武線は、神奈川県川崎市の川崎駅から、東京都立川市の立川駅までを、多摩川に並行するように結ぶJR東日本の鉄道路線です。今回、立体交差事業の認可を受けたのは、JR南武線の南側・川崎駅寄りの区間、矢向駅~武蔵小杉駅間の約4.5kmの区間です。
JR南武線連続立体交差事業の概要
今回の事業対象になる矢向駅~武蔵小杉駅の区間を高架化することにより、9箇所の踏切が除却されます。
南武線の高架化区間高架化で除却される9カ所の踏切のうちの5か所は、ピーク時の遮断時間が40分以上にも達する「開かずの踏切」となっており、交通渋滞などが問題となっています。(国土交通省では、電車の運行本数が多い時間帯において、遮断時間が40分/時以上となる踏切のことを「開かずの踏切」と定めています)
完成後のイメージ
この高架区間の踏切が無くなることで、踏切に起因する事故や渋滞が解消される、地域交通の安全性・円滑性等の向上と、分断された地域の一体化による生活利便性の向上が図られます。
完成後のイメージは下記のようなものとなっています。
平間駅の位置は、現在とほぼ同じ位置を計画しており、改札口も、現在の位置と大きく変えることなく、都市計画道路大田神奈川線側に向けて設置する計画となっています。
JR南武線連続立体交差事業の経過と事業予算
2005年に川崎市が策定した総合計画「川崎再生フロンティアプラン」第Ⅰ期実行計画で、次期連立検討区間としてJR南武線”尻手駅~武蔵小杉駅間”を位置付け、2007年に「JR南武線未高架地域の連続立体交差化に関する請願」に沿線住民などの約55,000人の署名を集め、川崎市議会が全会一致で採択。
2014年に事業調査(地質調査、測量)に着手し、2017年の川崎市総合計画第2期実施計画において2020年度に都市計画決定を行うことを定めました。しかし、コロナ禍の影響などで、2021年1月に大規模投資的事業の見直しに伴い都市計画決定を見送り、事業費の縮減と事業期間の短縮に向けた検討を行いました。
その結果、2022年3月に、約200億円の事業費の事業費縮減と、約5年の事業期間短縮が可能な別線高架に工法変更を行い、2023年度末までに都市計画決定を行うことを総合計画第3期実施計画に位置づけられていました。
上記のように、地上にある既存の線路の横に上下線分の「仮線」を敷設し電車運行を一旦切り替えた上で、元の線路上に高架を建設する「仮線高架工法」から、仮線を造らずに現在の線路の横に下り線の高架をまず造ってから下り線を高架線に移設、その後に空いたスペースに上り線高架を造る「別線高架工法」に変更をすることで、事業費の削減と、工事期間の短縮が図れるようになりました。なお、工法変更に伴って、鉄道高架の高さは、以前の約12mの想定から、少し低い約8mに変更になっています。
計画されている総事業費は約1387億円で、以前の仮線高架工法で想定していたものよりも200億円ほど圧縮された金額となっています。
鹿島田駅周辺のペデストリアンデッキ
現在はJR南武線・鹿島田駅は線路上に橋上駅舎の形で設置され、2016年11月にはJR横須賀線およびJR湘南新宿ラインの新川崎駅につながるペデストリアンデッキ(高架型の歩行者連絡通路)が整備されています。今回の鉄道高架化により、JR南武線の線路上をまたいて東西をつなぐペデストリアンデッキ部分に関して、鉄道高架橋の上下を通す案や鉄道橋をさらに高くするなどが検討されてきました。
しかし、エレベーターの設置などのバリアフリーの確保や、事業費の増加、駅ホームへのアクセス性などの課題があったため、高架型で鉄道路線と交差する整備は断念し、新しい改札口が予定されている1階・地上レベルに接続させる方針で詳細を検討中のようです。
川崎市では鉄道が高架化されることで出来る高架下のスペースに関して、鉄道事業者の土地となりますが、国の基準に基づき、鉄道事業者の利用のほか一定の割合で公共利用することができるものとなっているため、社会環境の変化や地域のニーズなどを踏まえた活用が図られるよう、今後、鉄道事業者と協議・調整を行っていくとしております。
また、これまで踏切があった位置に加え、新たに東西を行き来できるところを増やせるよう取り組んでまいりますとも表明しています。
今後のスケジュール
今後のスケジュールに関して、今回の発表資料通りに進めば、上下線の両方が高架化されることで踏切そのものが撤去される時期は2039年度という想定になっています。
別線高架工法に工法変更をしたことから、まずは下り線が高架化されることで、2033年度には上り線のみの踏切が残っても開かずの踏切は解消されるという計画になっています。沿線の人々の普段の生活が大幅に解消させる事業ですので、今後の動きを見守りましょう。
「矢向駅」から南の区間はどうなる?
南武線の鹿島田駅よりも南側の川崎駅との間には、矢向駅・尻手駅という2つの駅がありますが、実は矢向駅から川崎駅への方向は、一時的に、川崎市幸区ではなく横浜市鶴見区を走るという区間になっています。
(図・イメージ:川崎市)
このうち「尻手駅」周辺はホームなどを含め高架構造になっていますので、国道1号線などの主要道路をまたぐ踏切はすでにありません。「矢向駅」周辺はまだ高架化されておらず、駅の南側にも踏切が存在します。矢向駅の南側には留置線や貨物線(短絡線)があることから、南武線を高架化したとしても、全ての線路が高架化されるわけでは無いという課題もあるようです。
参考までに、矢向駅周辺の立体交差化に関しての市民から要望に対する、両市の回答をお伝えしておきます。
横浜市では、「JR南武線の矢向駅周辺については、鉄道を高架化しても貨物線(短絡線)の踏切が残ること等の課題もあり、引き続き、事業の効果や有効性を見極めているところです。」(2024年03月「市民の声」への回答)、「横浜市では踏切の安全対策として、比較的短期間で対策が完了する踏切拡幅、カラー舗装をはじめとした速効対策や、鉄道と道路を連続的に立体交差化する連続立体交差事業など踏切の除却を目的とした抜本対策を計画的に進めています。現在、相模鉄道本線の鶴ケ峰駅付近で連続立体交差事業に工事着手しており、その次の連続立体交差事業の候補区間については現時点で未定です。今後、次の連続立体交差事業の候補区間については、財政状況や整備効果等を総合的に勘案して検討していきます。」(2024年9月26日 回答)としています。
川崎市は、「連続立体交差事業は、踏切に起因する道路渋滞の解消を目的として、道路を管理する者が、道路と鉄道とを連続して立体交差化する事業です。JR東日本南武線連続立体交差事業については、平成17年度から調査検討を進め、横浜市においても、「踏切整備計画」を策定し、「矢向駅周辺」を「連続立体交差候補区間」と位置付けておりますが、現時点においては、最も優先的に事業化の検討を進める区間とはされていないことから、本市といたしましては、事業認可の取得後、工事着手まで5年程度見込んでいるため、横浜市域と本市域の同時完成に向けて、引き続き、働きかけてまいります。」(2024年11月のオープンハウス説明会での回答)としています。
今後、この区間にも何らかの動きがあるかにも注目です。
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