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くふうハヤテベンチャーズからドラフト育成指名で阪神へ!元市役所職員、早川大貴選手の挑戦

アットエス

10月24日、プロ野球ドラフト会議が行われ今年も大きな盛り上がりを見せた。

静岡県勢からは計9人の選手が指名され、1軍を持つNPB12球団への切符をつかんだ。

なかでも今年のドラフトの注目は、今季からファームリーグに参入したくふうハヤテベンチャーズ静岡から指名される選手が現れるか否か。かねてから「育成して、再生して、勝つ」というスローガンを掲げてきたチームにとって、ドラフトでの指名は悲願だった。

新球団の挑戦におけるまさに集大成とも言える1日は、新球団の開幕投手・早川大貴選手が阪神から育成3位指名を受けて見事に自らの夢、そして球団の価値を再認識する結果に。

では、くふうハヤテという球団に…何より野球にさほど詳しくない方に向けて、早川大貴という野球選手がどんな道を歩んできたのか振り返る。

国公立大卒の市役所職員 “公務員の星”が挑んだプロへの道

早川選手は1999年12月18日、北海道江別市の出身。大麻高校から小樽商科大学に進学し、卒業後は札幌市と新千歳空港の間に位置する北広島市で市役所職員として働いていた。ちなみに当時は福祉部で働いていたそうだ。

2023年ドラフトでも指名候補に名前が挙がっていたが、惜しくも指名漏れ。間近に迫った夢の実現に向け、勤務先の北広島市役所を退職して新天地・静岡からの1軍を持つNPB12球団入りを目指し、夢を叶えるために茨の道を進むことを決断した。

開幕投手、フレッシュオールスター 高まる注目度

3月15日にくふうハヤテの本拠地・ちゅ〜るスタジアム清水で行われた開幕戦。新球団の歴史が始まるその瞬間、マウンドには早川選手が上がっていた。しかし、プロ野球とはそう甘いものではない。オリックス・バファローズを相手に4回を投げて5失点とプロの洗礼を浴びた。

1軍のシーズン開幕前ということで、相手バッテリーは宮城大弥選手と若月健矢選手のコンビ。昨季のパ・リーグ覇者であるオリックスの主戦であり、日本を代表する選手との投げ合いは印象深かったようで、シーズン中に取材を重ねる中で何度か話題にあがった。

しかし、自身2度目の登板となるビジターの阪神戦でチーム初勝利をマークするなど、その後は12球団の選手を相手に勝利を重ねた。まさにチームの先発の柱として腕を振ったことが評価され、7月には2軍の球宴フレッシュオールスターゲームに初選出。各球団の若手有望株の選手を相手に1回1奪三振無失点と好投し、SNS上ではドラフト指名への期待や賛辞の声があがった。

会場である姫路の地で無事にアピールを終え「ハヤテ球団として初めて選出していただいたので、印象付けられて良かった」と感想を語る頼もしい表情は、まさにチームを背負うエースそのものであった。

ただ、右腕にとっての試練はこれでは終わらなかった。

今年7月、静岡市では観測史上初めて気温が40度を超え、耐え難い酷暑を伴った夏となった。

北海道出身で、これまで本州の夏を経験したことのなかった早川にとってこの暑さは難敵であり、コンディションの調整に苦しみ思うような投球が出来ない日々が続く。それでも来季以降にこの夏の経験は必ず活かされる。

「完全に夏バテしましたね。気温40度は経験したことのない暑さでした。サウナでしか経験しないレベルで正直、ウっとなったけれど今年経験できてよかったです」苦しかった暑い夏の日の経験も全てが彼の財産となったようだ。

運命のドラフト会議

午後8時4分、既にドラフト会議が始まってから3時間以上が経過していた。1桁または2桁の背番号を背負い1軍の試合にも出場できる支配下での指名が終わり、3桁の背番号の育成指名も中位まで進んだタイミング。会場にどことなく重苦しいムードが漂い始めたその瞬間、「早川大貴」の名前が呼ばれた。

会見場の張り詰めた空気は一気に熱気へと変わり、本人と球団関係者の凝り固まった表情がようやく和らいだ。それもそのはず。指名された本人にとっては、昨年の指名漏れから全ての退路を断って挑んだ1年間の努力が実を結んだ瞬間である。そして、選手育成に主眼を置く球団にとっては初のドラフト指名選手の輩出という最高の結果で応えた形だ。

指名から数日経過し、阪神側の担当者が来静して行われた指名会見で早川は甲子園の印象を問われ、「(今年5月に登板して8回無失点10奪三振の好投をみせた)投げやすくてキャッチャーが意図していることも全部わかるくらい。特別な力じゃないけど意図したピッチングが出来た」と笑顔。

担当スカウトからは「ストレートの質はNPBの投手の中でもかなり高い」とお墨付きをもらった。余談だが彼の今シーズンにおいて、対阪神の成績は6試合で防御率0点台と抑え込んでいる。1年間相手チームとして戦い、阪神にとっては天敵のような存在とまでなった右腕だが、このような直接的なアピールができることこそ、新球団くふうハヤテベンチャーズ静岡の最大の強みと言えるだろう。

ただ現状は1軍の試合には出場できない育成契約。来季早々からアピールして何とか甲子園での登板を目指す。

静岡から次なる舞台へ

「ドラフトで指名される選手になる」この1つの目標のみを抱えて縁もゆかりもない静岡の土地にやってきた早川選手。今後はくふうハヤテが行う秋季キャンプに参加して身体の状態を整えつつ、関西へ旅立つ準備を始める。

静岡での武者修行を終えて旅立つ早川選手にチームから「2軍戦で投げてるようじゃダメ、ちゅ〜るスタジアムにも帰ってくるな」と愛のあるエールが贈られていた。

1年間見守ってきたファンの目線で語れば、非常に寂しい別れではある。それでも今後も引き続き、男の挑戦を見守り続けたいのも確かだ。だから我々、静岡のファンはこれから少し遠目から彼の投球を見守りたい。

大丈夫。だって彼はくふうハヤテの“初代エース”なのだから。静岡にまで届く活躍を見せてくれ。キレのある直球と、沢山のカメラに少し人見知りしてはにかんだ笑顔を…。

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