Yahoo! JAPAN

釜石のスポーツ発展の礎は? 市郷土資料館で26日まで企画展 各種競技で“鉄人”活躍

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす


 きょう1月15日は“ラグビーのまち”釜石が最も盛り上がった日―。社会人と大学の王者が対戦するラグビー日本選手権で新日鉄釜石ラグビー部が前人未到の7連覇(1979-85年)を成し遂げた日だ。この日は当時の「成人の日」。満員の東京・国立競技場に翻る釜石応援の大漁旗は、晴れ着姿の観戦客とともに同所の風物詩となった。「北の鉄人」の異名をとった同ラグビー部をはじめ、釜石のスポーツ発展の礎を築いたのは、釜石製鉄所従業員の福利厚生組織として1920(大正9)年に発足した「真道会」。これにより各種体育部が次々と創部し、全国レベルの大会で活躍する選手が釜石市から多数誕生した。そうした同市スポーツ史にスポットを当てた企画展が鈴子町の市郷土資料館で開かれている。

 釜石製鉄所の「真道会」は、労働争議の反省から「人の和」の醸成を目的に組織された。実現させたのは、田中鉱山本社から赴任した盛岡出身の三鬼隆(1892-1952)。後に昭和園グラウンド(中妻町)造成に尽力した人物だ。同会結成を機に、昭和初期にかけて庭球、野球、柔道、相撲、陸上などの各部が創部。戦後は水泳、ラグビー、サッカー、銃剣道とさらに数を増やした。

釜石製鉄所内に組織された体育・文化活動の統合組織「真道会」について解説するパネルなどが並ぶ。写真右下は戦時中の真道会規約(新収蔵資料)


スポーツで活力を見い出すことを考えた三鬼隆について描いた漫画


 1932(昭和7)年創部の硬式野球部は富士製鉄時代の59(同34)年、都市対抗野球全国大会で東北勢初の準優勝を果たし、“白獅子旗”を手にした。新日鉄時代の80(同55)年にも3位となり、「東北の暴れん坊」と呼ばれた。同部出身のプロ選手も複数誕生。89(平成元)年に休部となったが、練習拠点だった小佐野球場跡地(現アミーガはまゆり敷地)には同部の功績をたたえる記念碑が残る。

富士製鉄釜石野球部の「都市対抗野球全国大会準優勝」を紹介する展示(昭和34年、後楽園)


 ラグビー部は1959(昭和34)年、同好会として発足。創部3年目で全国社会人大会に初出場、同6年目には国体で初優勝に輝いた。66(同41)年には全国社会人大会で初のベスト4進出。10年かけて社会人大会単独優勝を果たし、77(同52)年1月、大学王者の早稲田を破り、初の日本一に輝いた。翌シーズンは準決勝敗退で涙をのむも、2年後の79(同54)年から7連覇への快進撃が始まる。史上初の7連覇達成で、岩手県民栄誉賞、釜石市はまゆり賞を受賞した。

国立競技場で行われたラグビー日本選手権。新日鉄釜石の活躍は市民に勇気と感動を与えた


 こうした活躍の背景には製鉄所の充実した体育施設の存在があった。▽桜木町=(通称)小川体育館、弓道場、相撲場▽甲子町松倉=陸上競技場兼ラグビー場(現市球技場)、サッカー場▽上中島町=志津川テニスコート、多目的グラウンド▽小佐野町=野球場▽中妻町=昭和園グラウンド…など記憶に新しい施設のほか、鈴子町には修道館(武道場)や25メートルプールがあった時代も。企画展ではそうした懐かしい施設の写真も展示されている。

釜石製鉄所の厚生施設として整備された各種運動施設


写真左:昭和15年ごろの釜石製鉄所大運動会と優勝旗 同右:昭和園グラウンドはサッカー大会や釜石まつりにも使われた


 岩手県が開催地となった2度の国民体育大会(当時)では、釜石市も競技会場となった。1970(昭和45)年の岩手国体では水泳(市営プール)、軟式野球(小佐野球場)、バドミントン(小川体育館)の3競技が行われ、同国体を機に建設された市営プールは夏季大会の開会式会場にもなった。2016(平成28)年の同国体では初めて正式種目となったオープンウオータースイミング(根浜海岸)、トライアスロン(同海岸と周辺地域)、ラグビー成年男女(7人制、市球技場)が行われている。

写真左:昭和45年の岩手国体では釜石市で水泳など3競技が行われた 同右上:岩手国体記念品(昭45) 同右下:平成28年岩手国体の炬火トーチ、キャップなど


 釜石市の花「ハマユリ」の冠が付いたスポーツ大会もあった。1987(昭和62)年に第1回大会が開かれた全国勤労者駅伝大会は「釜石はまゆり駅伝」の通称で親しまれたほか、90(平成2)年には「釜石はまゆりトライアスロン国際大会」がスタート。2000(同12)年には「釜石はまゆりハーフマラソン大会」も開催された。

 企画展では、大相撲の釜石巡業が行われた1958(昭和33)年の板番付ついたて、41(同16)年の釜石製鉄所産業報国真道会規約の新収蔵資料を含む74点を展示。さまざまな展示品から釜石のスポーツの歴史を垣間見ることができる。郷土資料館職員の川畑郁美さんは「釜石のスポーツは製鉄所の真道会をはじめとし、数々の優秀な成績を残してきた。三鬼隆が造成した昭和園グラウンドは東日本大震災前まで多岐に利用され、市民に親しまれた。懐かしい思い出を呼び起こしたり、若い方には釜石のスポーツの歴史を知っていただく機会にしてもらえれば」と来館を呼び掛ける。

写真左:昭和33年、昭和園グラウンドで行われた大相撲釜石巡業の板番付 同右上:横綱柏戸、大鵬一行(昭和39年、小佐野球場)


釜石の弓道会は釜石鉱山田中製鉄所の技師長香村小録が発足させた。藤勇ビル(大渡町)の屋上にも弓道場があった


 郷土資料館企画展「釜石の鉄人(スポーツマン)」は26日まで開かれる。21日は休館日。開館時間は午前9時半から午後4時半まで(最終入館午後4時)。

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. YouTuberが強烈すぎる「ジョジョ」のコスプレ 2歳児を泣かせてしまい反省中

    おたくま経済新聞
  2. 【Columbia新作】軽くてコンパクトに持ち運べる「男女兼用撥水ショルダー」が凄い!通勤・旅行にも◎

    ウレぴあ総研
  3. Aimer、TVアニメ『天久鷹央の推理カルテ』オープニングテーマ「SCOPE」MV公開

    SPICE
  4. 奈良県産小麦粉『古都麦』をお得に味わえるイベント『古都の小麦祭り』開催!1月20日(月)~2月28日(金)まで

    奈良のタウン情報ぱーぷる
  5. 【京都焼肉】穴場☆高品質国産牛を破格で食べ放題!神戸牛牧場直営の人気店「グルメリア但馬」

    キョウトピ
  6. 大量消費にぴったりです。「キャベツ」が悪魔的にウマくなる食べ方教えちゃう

    4MEEE
  7. 【京都ラーメン】知る人ぞ知る名店!こだわり親父が作るトロトロ牛すじラーメン「大文字」

    キョウトピ
  8. アジアや全日本で優勝の夢つかむ、パデルの2選手が四日市市長に報告

    YOUよっかいち
  9. 「子どもの受験校選び」で親が避けたい“2つのNG”と“子どもの集中力を引き出す家庭学習の秘訣”

    saita
  10. 飼い主大好きインコさん、解き放たれても「ずっとこう」 赤ちゃんすぎる〝放鳥中のすがた〟に3.4万人もん絶

    Jタウンネット