Yahoo! JAPAN

ケルネル田圃の謎が解けました【駅ぶら】06京王電鉄389 井の頭線20

鉄道チャンネル

※2024年2月撮影

トップ画像、「駒場東大前駅」西口から「井の頭線」北側「駒場通り」を西に150メートルほどで「井の頭線」踏切を南にわたります。

踏切から「駒場東大前駅」。

※2024年2月撮影

1963年(昭和38年)から1977年(昭和52年)まで筆者は日常的に「井の頭線」に乗っていました。

子供の頃から「駒場東大前駅」の手前で車窓南側に田圃(たんぼ)が広がり、毎年田植えから黄金色に稲が実って刈り入れされるのが不思議でした。いったい誰がこんな場所で稲作をしているの?

筆者が住んで居た昭和30~40年代世田谷区北部に畑はたくさん残っていました。しかし水田を見ることは全く無かったのです。

その田圃が見えていた方に歩いています。

※2024年2月撮影

これが車窓から見えていた田圃です。冬なので稲はありません。

※2024年2月撮影

かなりの広さがあります。

※2024年2月撮影

「歴史と文化の散歩道/松濤駒場ギャラリー散歩」の案内板があります。

※2024年2月撮影

「駒場の今昔」という部分を写します。

「駒場一帯は台地で、かつては駒場野と呼ばれ、笹が一面に生い茂り、所々に松林などがある原野が広がっていました。そのため古代から中世にかけて東国武士たちの軍馬の放牧地として利用されてきました。江戸時代になると、鳥や獣が数多く生息する駒場野一帯は、鷹狩り場となりました。将軍の鷹狩りのたびに、田畑は人馬で荒らされ、そのうえ地元の農民たちは場所ごしらえや道普請、鷹の餌の昆虫集めなどに駆り出されました。〈後略〉」

まぁ、いつの時代も庶民は権力者に道具の様に扱われてきたのでしょう。

駒場野公園の入口にむかいます。

※2024年2月撮影

「目黒区みどりの散歩道」の案内看板です。

※2024年2月撮影

ようやく田圃の話が出て来ました。

「ここ駒場は、日本近代農学発祥の地である。明治11年、農学校が誕生。ドイツ農法に範を求めた駒場農学校は、優秀な農業技術者を次々と世に送り出した。〈中略〉ドイツ人教師ケルネルも異色の存在。わが国で初めて化学肥料の使用を試みた彼は、実験水田で研究に取り組んだ。この水田は「ケルネル田圃(たんぼ)」として今も残る。〈後略〉」

筆者が子供時代から見てきた水田は「ケルネル田圃」だったのです。では誰が稲作をしていたのでしょうか? それは後述になります。

「目黒区立駒場野公園」の門を入ります。

※2024年2月撮影

左には「ケルネル田圃」が続いています。

※2024年2月撮影

「駒場野公園案内図」です。

※2024年2月撮影

そこには「この公園は、東京教育大学(農学部)の跡地を利用して作られました。面積は2.8ヘクタールあります。園内にはスポーツ施設、プールの水を利用した流れ、原っぱ、ケルネル水田、果樹園、雑木林、池などがあります。野鳥や昆虫を楽しめる公園にしていくために、雑木林の一部と池がサンクチュアリーになっています。」と書かれていました。

さらに「ケルネル田圃」の案内板もありました。

※2024年2月撮影

記載内容は以下です。

「ケルネル田圃は、旧駒場農学校の実習田です。

駒場農学校は、明治政府が近代農学に基礎をおく欧米農法をとりいれるために、農業指導者を養成する学校として明治11年に設置されました。

札幌農学校がアメリカ系統の農業技術を導入したのに対して、駒場農学校にはドイツ系統の農学がとりいれられました。

ドイツ人のオスカー・ケルネルは、駒場農学校の教師として招かれ、日本農業の特質を配慮しながら農芸化学を応用した実験を中心に土壌、肥料などの研究と教育をおこない、多くの成果を収めました。

ドイツ人教師ケルネルの名をつけたケルネル田圃は、新しい日本農業の指導者を育てた駒場農学校の実習地の跡として貴重な史跡です。

なお駒場農学校は、後に東京農林学校となり、東京帝国大学農科大学等を経て筑波大学に継承されました。

現在、ケルネル田圃では筑波大学附属駒場中学校、高等学校により教育水田として生徒が実習しています。」

筆者が長年見てきた稲作は、筑波大附属の中高生による実習だったのでした。案内板には「田んぼの1年」と「ロゼット」という生物体の配列の説明も掲出されていました。

目黒区の「歴史を訪ねて 近代農法発祥の地・駒場」がありました。よろしかったら御参照ください。

「駒場野公園」の散歩、続けます。

(写真・文/住田至朗)

※駅構内などは京王電鉄さんの許可をいただいて撮影しています。

※鉄道撮影は鉄道会社と利用者・関係者等のご厚意で撮らせていただいているものです。ありがとうございます。

※参照資料

・『京王ハンドブック2022』(京王電鉄株式会社広報部/2022)

・京王グループホームページ「京王電鉄50年史」他

下記の2冊は主に古い写真など「時代の空気感」を参考にいたしました

・『京王電鉄昭和~平成の記録』(辻良樹/アルファベータブックス/2023)

・『京王線 井の頭線 街と駅の1世紀』(矢嶋秀一/アルファベータブックス/2016)

【関連記事】

おすすめの記事