それはまるで “つゆのウォータースライダー”【家そば放浪記】第270束:MIURAYA(三浦屋)で買った、自然芋そば『自慢のほそぎり』430円(1人前143円)
細いか太いかで言えば太い方が好きだ。蕎麦の話である。
私がかつて働いていたお蕎麦屋さん(更科)は、細くもなく太くもなく中くらいの太さだったと記憶しているが、旦那さんから若旦那の代になってから、ほんの少しだけ細麺にリニューアルした感がある。
とはいえ、さすがは私の蕎麦の師匠でもある若旦那。見事なチューニングで文句なしのウマ蕎麦へと変貌を遂げていた。それもあって連日満員御礼(←これ本当)の大繁盛店。さすがは師匠・若旦那である。
なので私は、細切りであってもウマければウマいと言える柔軟性は持っている。それを踏まえて、今回取り上げる『自慢のほそぎり』を食べていきたい。
【オマケ画像】そば湯(茹でた後のお湯)の具合はオマケ写真を参照のこと
製造者は、これまで当連載に5回(今回を入れたら6回)出場の「株式会社 自然芋そば」。「へぎそば」と「8〜9割のそば」と「細切り」が得意な印象がある。
しかし今回の『自慢のほそぎり』は、原材料名欄を見る限り小麦粉先行の蕎麦であるので、「8〜9割のそば」は捨てた感じ。
「へぎそば」の特徴は布海苔(ふのり)をつなぎに使った蕎麦であり、今回の『自慢のほそぎり』にも布海苔が使われているので、「へぎそば&細切り」的なコンビネーションで畳み掛けてきた感じである。
はたして、そのお味は?
デカい鍋に湯を沸かし……
約3分ゆでて……
特に「氷水」の指示は無いので、そのまま冬の冷たい冷水で蕎麦を洗い……
ハイ、完成。
して、そのお味は──
これウマイっすね。単純明快に、ウマイ。
まず細さと食感は、ちょいと “コシ強めのそうめん” てな感じ。茹で時間を短くしたそうめんとでも言おうか。でも味は蕎麦。
しかしながら、そんなことはどうでもいい。
ものすごい勢いで “つゆ” をからみとって口の中に入っていく。ありったけのつゆをグワシと掴みながら、口の中にスライディングしていくようなイメージ。
これができるのは「ほそぎり」ならでは。“つゆがらみのよさ” は、ほそぎりの特権とも言えるだろう。とにかくジューシーに口の中へ、蕎麦とつゆが入っていく。
それはまるで “つゆのウォータースライダー” のごとく。油断したら、つゆに溺れてしまうかも? そのくらい、つゆをまとって飛び込んでくるのが実に気持ち良いのだ。
食べ方的には絶対に「冷(ひや)」を推奨したい。そして、このパッケージ写真にあるように、「with天ぷら(つまり天ざる or 天せいろ)」だとより一層おいしく食べられると思う。
私は基本的に極太が好きだ。でも、うまい極細を食べれば食べるほど、「細もいいな……」となりつつある私がいる。なにごとも経験。なにごとも柔軟に。いつか「細好き」になるのも面白い。
なお、「家そば」か「外そば」かなら文句なしで「外」だ。揚げたての天ぷらと一緒なら、誰も文句言わないと思うし、なんなら「乾麺」であることすら気づかないのでは?
お店で見かけたら要チェックの一品である。
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24