名店で10年修業した店主が、比内地鶏を主力にした「鶏料理」を多彩に表現【福岡市・住吉】
昨今、福岡でも徐々に増えているコース専門の焼鳥店。10月21日には「焼鳥 茶」が参戦し、コースならではの魅力を住吉から発信しています。店主が大阪で指折りの人気店出身であることや、福岡では珍しい地鶏を扱っているのも気になるポイント。そうした要素に好奇心をくすぐられ、さっそく訪ねてみましたよ。
店の前に到着すると、ガラス越しにカウンター8席の店内が見えました。カフェのような明るさとカジュアルさが好ましい空間です。実は「茶」がコース専門店と聞いた時、もっと重厚な雰囲気を想像したのですが、店主・真辺智将さんの笑顔を見た瞬間、こちらもすぐにリラックスモードになれました。
その真辺さんは、大阪の焼鳥マニアが愛してやまない人気店の“卒業生”。10年の在籍中に腕を磨き、ついに「独立する時は福岡で」という長年の夢を叶えた焼鳥職人です。前述のようにメニューは8,000円の「おまかせ」のみ。名店のDNAを受け継ぐ美味は、はたしてどんな口福を生みだすのでしょう。
今宵のコースは焼鳥6種を交えた全16品。1品目の薬膳鶏スープを皮切りに、焼鳥と一品料理が交互に提供されるスタイルです。料理の幅広さを考えると、焼鳥屋というより鶏料理店と呼びたくなりますね。
さて、こちらの焼鳥の特徴は、素材に秋田県が誇る比内地鶏を使うこと。名古屋コーチンなどと並ぶ日本三大地鶏の一つで、真辺さんも修業時代に惚れ込んだと言います。「特に脂の質と身の弾力が最高です。部位によって黒さつま鶏も使いますが、何よりこの地鶏のうまさを皆様にお伝えできたら」と語ってくれました。
そんな自慢の焼鳥は、なるほど、九州産の鶏にはない風味と野趣に満ちています。大阪で会得した火入れの技も万全で、極上の脂と肉質の競演には紛れもない“肉食の快楽”がありました。
備長炭でモモ肉をふっくら焼きあげる「ねぎま」は食べ応え満点の1本。ミディアムレアに仕上げた「肩」と、ハーブ入りの特製スパイスを振った「せせり」の食感も見事です。初めて食べた「えんがわ」もユニークで、これは砂ずりの柔らかな外縁部だけを用いた希少部位だそうですよ。※写真はイメージ。コース内では1本ずつ提供。
比内地鶏の魅惑はさらに広がります。繋ぎを使わずに仕込む、修業店譲りの「つくね」は粗挽きソーセージ的な弾力に感嘆。箸で食べやすい形に整えた「手羽先」は上品に食べたい女性客への配慮が伺えました。
──と、いずれ劣らぬうまさの焼鳥ですが、一品料理にも個性がキラリ。その代表が真辺さん考案の(寿司屋のトロたくならぬ)「鶏タク」で、炙ったささみ&たくあんを、海苔と大葉で巻いて食す秀作です。ふくよかな香りと食感のコラボが斬新で、お代わりできないのが本当に悔やまれました(笑)。
こうして粒揃いの14品を完食すると、名残惜しくもシメに突入。ここで登場するのが、満腹寸前の胃袋に再び火をつける罪深き「ラーメン」です。鶏ガラを6時間も炊いて取るというスープがとにかく絶品! 焼鳥とはまた違う形で比内地鶏の底力を見せつけられました。
そして、最後は台湾人の奥様・安さんが淹れる台湾茶と自家製デザート「豆花」で終了。新鮮な焼鳥体験のフィナーレに、ほっこりした余韻を添えるのでした。
「店名もこの台湾茶から取りました」と真辺さん。「覚えてもらいやすいし、個人的に大好きな台湾テイストも入れたかったんです」。料理にもいくつか台湾要素が見られましたが、これはチャーミングな奥様への愛情表現でもあるのでしょう。そんな癒し系のご夫婦が醸しだす温もりも、ここの“ご馳走”の一つです。
また「おまかせ」ならば、焼鳥がデートや記念日にふさわしい料理になると分かったのも大きな収穫。余計なことは考えず、同伴者と過ごす時間に集中できるのがコースの良さですからね。皆さんも、ぜひ「茶」で新たな焼鳥の愉しみを見つけて下さい!