富岡町に宮島達男の作品を常設する美術館 ― 田根剛が設計《時の海 – 東北》美術館(仮)が2027年竣工へ
《時の海 – 東北》美術館(仮称)記者発表会場より (左から)長嶋りかこ、宮島達男、田根剛、長嶋りかこ
デジタル数字を用いた作品で知られる現代美術家・宮島達男の作品を常設する美術館が、福島県富岡町に建設されることとなり、都内で記者発表が行われた。
宮島達男は「アートで世の中を変えられると思っていた自分が、東日本大震災では1ミリも動かせなかった」と語り、「アーティストとしての落とし前」として、アートプロジェクト《時の海 – 東北》を開始。
構想は2015年からスタートし、3,000人の参加者が「9」から「1」へとカウントダウンするLEDの数字の速さを、自身の希望する長さに設定。対話を重ねながら作品を生み出してきた。
美術館は富岡町の海が見える丘に設置され、サッカー場約5面分となる広大なエリアに建設される。
富岡町は、東京電力福島第一原子力発電所と第二原子力発電所の中間に位置し、三方を山に囲まれた場所にある。東日本大震災後、津波被害や除染作業のため、かつての居住地区は一度更地になったが、現在は移住者が徐々に増え、未来に向けた動きが町の各所に生まれている。
宮島はワークショップで東北の人々と話す中で、津波で大きな被害を受けたにもかかわらず、海を悪く言う人は誰もいなかったことから、「海が見える場所に設置することは最初から決めていた」という。
建築は田根剛が担当し、22.5×40mの水盤の中に、3,000名の想いが詰まった3,000個のLEDカウンターガジェットが光り輝く作品《Sea of Time – TOHOKU》が恒久設置される。
美術館の建設費用は約20億円を見込んでおり、今後も資金調達を進めていく。
プロジェクトにはグラフィックデザイナーの長嶋りかこ、美術館建設の実現と浜通りエリアの活性化を目指して発足した「《時の海 – 東北》美術館を応援する会」も参加。プロジェクトディレクターは嘉原妙が務める。
《時の海 – 東北》美術館(仮称)は2027年に竣工予定。
《時の海 – 東北》美術館(仮称) 模型 左下が海側になる