精神科医が教える、DX時代の疲労を蓄積させない睡眠の取り方。寝る前スマホがNGな理由の最新情報も
リモートワークとDXが普及して、多くのビジネスパーソンは、疲労が蓄積しやすい環境におかれています。疲労回復の要となるのは、休憩や睡眠です。われわれは、これをもっと大事に考える必要にせまられています。では、具体的にどうすべきでしょうか? 『休む技術2』(大和書房)の著者、早稲田大学教授・精神科医の西多昌規さんが、その秘訣をお伝えします。
起床と就寝は決まった時刻に行う
リモートワークの問題の1つは、仕事とプライベートの時間の区切りがつきにくくなりがちなことです。特に睡眠のリズムが崩れて、眠りの質が悪くなりやすいのです。
これを甘く見ると、仕事のパフォーマンスの低下やメンタルの不調にもつながります。そこで、睡眠の質を高めることが重要になります。
ポイントはいくつかありますが、その1つが「決まった時刻に起きて寝る」。実はこれが最強で、しっかりとした休養になるし、日中の仕事のパフォーマンスアップにもつながります。
まず、リモートワークで始業時間は自分で決められるからといって、朝型になりすぎたり、逆に夜型になりすぎるのは禁物です。どちらの場合も、自覚的な睡眠の質は悪くなり、疲れが取れにくくなってしまいます。
もう1つの留意点は、休日は寝坊しないことです。「せっかくの休みの日ぐらい」と思うかもしれませんが、寝坊はしても1時間程度に収めましょう。週7日とも、起床と就寝は決まった時刻に設定するよう心掛けてください。それが睡眠の質を上げる第一のカギとなります。
昼寝には疲労回復効果がある
最近は、昼寝(=お昼過ぎの仮眠)が注目されていますね。
仮眠には、疲労を回復し、午後の集中力をアップする効果があり、多いにすすめたいです。ただし、これにもコツがあります。誤った仮眠をしてしまうと、かえって逆効果となることがあります。
先にNGな仮眠ついて説明しますが、まず長時間の仮眠は避けてください。これだと深いノンレム睡眠に入ってしまい、目が覚めた時に頭がぼーっとするとか、身体が重いといった状況を招きやすいからです。
また、タイミングの悪い仮眠も良くないです。朝に一度起きたものの二度寝してしまう、夕方に仮眠をとってしまうのがそれにあたります。これだと、肝心の夜の寝つきが悪くなるというデメリットがあります。
それをふまえた仮眠の正解は、 12時から15時の間で30分以内です。オフィス勤務なら、ランチの後に静かな会議室でアイマスクをして一眠りがいいですね。リモートワークをしているのなら、その時間帯のいつでもいいでしょう。
ブルーライトよりも睡眠に悪い影響を及ぼすのは?
夜寝る前にスマホを見るのはよくないという言説は、あちこちで聞きますね。実際、2020年にアメリカの科学誌『Sleep』で発表された論文でも、うつ病の発症率が上昇するとか、人生の満足度が低下するといった悪い影響と相関があることが記されていました。
スマホには、夜間モードという機能があって、夜になると自動的に暗めの暖色系の色調に切り替わります。これによって、睡眠に良くないとされるLEDから発せられるブルーライトを弱らせます。わたしもこの機能を活用していましたが、最近の研究では睡眠にプラスとなる効果は、ほとんどないことがわかっています。
スマホが睡眠に与える悪影響は、ブルーライトよりもむしろ、コンテンツの認知的・心理的な刺激の方が大きいと考えています。例えば、不安やイライラが募っている時は、それに関係したネガティブな内容のネット情報をたぐりがちです。それで脳が覚醒してしまい、寝つきが悪くなるわけです。やはり、寝る前のスマホはオフにするのが正解と言えるでしょう。
眼精疲労に効果的な目の休息法
リモートワークの普及に伴い、デジタルワークの比率が増えたことで、ドライアイや疲れ目に悩む人も増えました。
通常の疲れ目であれば、休憩や睡眠によって回復させることができます。しかし、休んでも眠っても症状から回復できなければ、それは眼精疲労と呼ぶ重い症状です。
対策の1つとしてすすめたいのが、「20・20・20法」です。これは、アメリカ眼科学会が推奨している方法で、20分おきに20秒の休息をとり、20フィート(約6メートル)離れたものを見るというものです。つまり、パソコン作業の手を一旦休めて画面から目を離し、ちょっと遠くを見るだけなので簡単です。見る対象が、観葉植物や家族・ペットの写真であればベター。自律神経のバランス値を下げ、リラックスできることが研究で示されています。