渋谷の居酒屋『多古菊』の名物は関西風おでんと串揚げ。ヘルシーな揚げ物&夏はプルプルつめた〜い冷やしおでんもおすすめ!
渋谷の道玄坂にある『多古菊』は1975年創業の居酒屋だ。関西風のおでんと串揚げを看板に、さまざまな料理と酒を提供している。新鮮なアジを使った生アジフライは、身がほくっとしていて、素揚げにした骨まで食べられるのがうれしいところ。また、自慢のおでんを冷やし固めた夏の名物・冷やしおでんもぜひ食したいところだ。
1975年創業。関西風おでんと串揚げの居酒屋としてスタート
京王電鉄井の頭線渋谷駅西口を出ると、目の前に昔ながらの飲食店街がある。かろうじて再開発から逃れているからか、どことなくノスタルジックな雰囲気がある。焼き鳥の『鳥竹総本店』、その並びにある『多古菊』も古き良き昭和の面影を残す居酒屋のひとつ。店頭で仕込むおでんの出汁の香りに誘われて店へ入った。
「奥にも客席があるのでどうぞ〜!」と案内してくれたのは、店長の馬(マ)さんだ。
1975年創業の居酒屋『多古菊』。オープンした当時はおでんと串揚げだけの店だったそう。「開店当初は斜向かいにある居酒屋『山家』のビルの地下に本店があって、いつしかおでんと串揚げ以外の料理が増えていきました。それとともにそのビルの上階とこの場所にも支店を出したんです。だけど、初代の大ママから2代目の娘さんに代替わりしたときに、この店だけ残してあとは閉店したんです」。
創業当時から人気のおでんと串揚げは今でも2大看板。「社長の兄弟たちは大阪で居酒屋をやってまして。それでこの店も関西風の昆布だしのおでんと串揚げを出しているんです」と馬さん。
今はほかにも焼き鳥、揚げ物、肉料理、旬の素材を使った一品料理もありバラエティ豊富だ。
そして近年のインバウンド効果で外国人のお客さんも増えているが、店長の馬さんを筆頭に店のスタッフも国際色豊か。
ところで馬さん、『多古菊』という名前はどこから来たのでしょう?
「『菊正宗』というお酒があって、当時はそのお酒をメインに提供していたんです。それと関西はおでんにタコを仕込むことが多いので、それで『多古菊』。今は『菊正宗』を出してないんですけどね(笑)」
ズコ〜ッ! 歴史が長いお店になると、そんなエピソードもあるんですね。
ぷるっとひんやり〜。『多古菊』夏の風物詩・冷やしおでん
創業以来人気のおでんは、真夏でも汗をかきながらアツアツを食べる熱狂的なファンもいるが、「やっぱり暑いとおでんの売り上げは下がるんですよね」と馬さん。
そんな悩みを解消すべく、2009年から提供しはじめたのが煮こごりに包まれた冷やしおでん。例年5月後半から10月まで提供し、すっかり『多古菊』の夏の風物詩として定着した。冷やしたおでんで冷酒を飲むのがサイコーなんだとか。まさか、渋谷にそんな夏の名物があったとは知りませんでした。
というわけで、冷やしおでん700円に「黄桜 特選純米吟醸」680円をチョイス。
「冬のおでんと同じ昆布出汁だけど、それよりちょっと塩を利かせていますね。その日によって入る具材が違うし、作るのに手間がかかるので数量限定なんですよ」
幅広い年齢層にファンがいて、5月にグンと気温が上がると常連さんから「まだなの〜?」と催促されるそう。よく見るとこんにゃくやさつま揚げが透けて見えている。見た目にも涼しそうで、しばらく眺めているだけでも体感温度が下がりそうだ。
最先端フライヤーで揚げるからヘルシーでおいしい生アジフライ
つめたいものばかりだと、おなかが冷え切ってしまいそうなので温かいものもオーダーしよう。メニューを見ると“低カロリー揚げ物”のコーナーがあるではないか! “TVで話題のドクターフライ”により、カロリーをカットしているらしい。たくさんあるラインアップから生アジフライ750円をオーダーした。
ところでドクターフライって……? 「これを使って揚げると外側はサクサクなのに脂っこくなくて中はジューシーに仕上がるんですよ」。
調べてみると、特別な電極パネルをフライヤーの油槽に2枚つけると毎秒5万回の電波振動が発生し、食材や油内の水分子をコントロールするというもの。油ハネや突沸を防ぐだけでなく、素早く揚がるのにジューシーに仕上がり、なおかつ油の消費量は30%少なくて済むという画期的なシステムなのだ(プロモーションではありません)。
さあ、“ドクター”の実力はいかに!? ほどなくして冷やしおでん、生アジフライ、お酒がテーブルにそろい踏み。いざ乾杯だ!
まずは揚げたての生アジフライから。ホフホフ言いながら食べてみると、ほくっとした身とアジの旨味や香りが強く残っていて、これぞ“生”の味わい。時間が経っても衣がザクザクとしていて軽く、確かに脂っこくない。やるな、ドクター!
そしてカラッと揚げた骨が激ウマ! スナック菓子のようにカリッと軽く、しっかり塩が振ってあるから骨だけでもう1杯お酒が飲めそうだ。
次に名物・冷やしおでんだ。れんげを差し込むと一口大にカットされたいろいろなおでんだねが入っている!「エビやつみれはだいたいいつも入っているんですけど、今日は大根、たまご、こんにゃく、ちくわ、ごぼう巻き、さつま揚げ、はんぺんが入ってます」。
ぷるんとした出汁が口に入れるとす〜っと溶けていく。冷たいけれどおでんだねはしっかり煮込まれていて、よく“しゅんでる”。ミニサイズになっているから食べやすいのもいい!
最初こそ不思議な感じがしたが、なるほどコレは断然アリ。いや、むしろアリ中のアリ! ふくよかな吟醸香のある冷酒がモーレツに合いますな。具材がなくなったあとの煮こごりだけでもいいつまみになる。そうだ、冷やしおでんは飲ん兵衛たちのババロアだ。
残りの酒1滴まで寄り添ってくれた冷やしおでんと生アジフライにスタンディングオベーション。おかげで千鳥足になってしまった筆者は気合いで家に帰りました。
多古菊(たこぎく)
住所:東京都渋谷区道玄坂1-6-2/営業時間:17:00〜23:30/定休日:無/アクセス:京王電鉄井の頭線渋谷駅から徒歩1分
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢
アート・サプライ
編集プロダクション
1971年創業の編プロ。「旅&食&散策」ジャンルに強く、情報誌では子供向けから鉄道やドライブでの大人旅まで。さらにグルメ系ではラーメンや唐揚げ専門情報誌をはじめ、日本全国うまいもの紹介なども手掛けている。