【福山市】小料理 春雨 〜 日替わりの多彩なおばんざいで酒を楽しむ。居心地の良い空間と和やかな雰囲気も魅力
小さな居心地の良い空間で、手づくりのおいしい料理を味わいながら酒を楽しむ。
それが小料理店の魅力ではないでしょうか。
福山市明治町に気さくな店主と、多彩かつ味わい深いおばんざいで、多くの常連に愛されている小料理店があります。
「小料理 春雨(はるさめ)」です。
店主が真心をこめて調理したおばんざいの数々は、どれもおいしそう。
迷いながら選ぶ楽しさもあります。
こぢんまりとした店内は和気あいあいとした雰囲気で、つい長居してしまいそうです。
小料理 春雨のこだわりや魅力について、紐解いていきます。
春雨は店主一人で切り盛りする居心地良い小料理店
春雨は福山市中心部・明治町にある小料理店です。
飲み屋の多いエリアの一角にあります。
春雨は2019年(令和元年)にオープンしました。
店主の杉野原(すぎのはら)さん一人で切り盛りしており、カウンターのみで8席という小さな店です。
居心地の良い空間が特徴で、連日多くの人でにぎわっています。
また料理が得意という杉野原さんが作る「おばんざい」は、日替わりで内容や種類が変化。
時季によって使う食材も変わり、訪れるたびに違った料理が楽しめるのも魅力です。
春雨のメニュー紹介
2024年(令和6年)11月時点の情報。価格は消費税込
春雨のカウンター上には、数々のおばんざいが並んでいます。
どれも家庭的でおいしそうなものばかりです。
種類によって価格は異なり、1皿380円から。
詳細な価格は、店主に聞いてください。
おばんざいのラインナップは日によって変わります。
また同じおばんざいでも、毎日具材が異なるのが特徴。
たとえばサラダはほぼ毎日ありますが、内容が変わります。
旬の食材を使ったりするので、季節ならではおばんざいが登場するのも春雨の魅力です。
取材時(2024年11月)のラインナップは「ナスの煮浸し」「ホウレンソウとカニカマのお浸し」「豚肉の塩レモン炒め」「ニンジンとリンゴのマリネ」「牛皿」「ハモフライ」「キュウリとワカメとタコの酢の物」「鶏つくね」でした。
このほかに掲示メニューがあります。
店内に貼られているメニューを見て、注文してください。
日替わりで、ごはんものもあります。
取材時(2024年11月)には「サツマイモごはん」がありました。
秋〜冬には、おでんも登場します。
ドリンク類もビール・日本酒・焼酎・ハイボールなど各種ラインナップ。
地元・福山や広島県内の酒蔵の酒もあります。
お酒を飲みながら、さまざまなおばんざいを楽しめるのが春雨の魅力です。
人気・おすすめのメニュー紹介
数多くある春雨の料理・酒類より、おすすめ・人気のものを紹介しましょう。
鶏つくね
「鶏つくね」は春雨の名物料理であり、店主がイチオシするメニュー。
おばんざいで唯一毎日陳列されている、一番人気のメニューです。
春雨の鶏つくねは、ひと味違います。
多くの鶏つくねは一口サイズの球体だったり、長細い棒状だったりします。
春雨の鶏つくねは、まるで五平餅のような大きさで、小判型をした鶏つくねが串に刺さっているのです。
しかも厚みもあります!
そのため食べごたえは満点。
つくりかたにもこだわりが。
こだわりの鶏つくねは、食べると表面は香ばしく、中はふんわり。
ふんわり感は、ミンチに入れてあるハンペンの弾力によるものだそう。
かみ進めるとジューシーで、鶏のうまみがしっかりと味わえ、適度な塩味もあります。
何も付けなくとも、そのままでもおいしいです。
また、ときおりほのかに香る大葉のさわやかな風味がアクセントになっています。
ハモフライ
「ハモフライ」は瀬戸内海で水揚げされたハモ(鱧)を使っています。
提供時には多めの野菜とともに盛りつけられ、上からタップリのタルタルソースがかかっていました。
タルタルソースは自家製。
タマゴとタマネギがタップリで、タマネギのシャキシャキ感とタマゴの風味が濃厚であり、まろやかな味わいです。
ハモフライは、衣がサクサクで香ばしく、中の身はホクホク。
ハモはシッカリと骨切りがしてあるので、骨の存在をまったく感じません。
ほどよく脂が乗っており上品なうまみを感じるハモの身は、香ばしい衣やタルタルソースの味わいと相性抜群です。
牛皿
「牛皿」は、牛肉をタマネギ・ゴボウとともに甘辛い味付けでジックリと煮こんだ料理です。
使っている牛肉は、福山市の北隣・神石高原町のブランド牛「神石牛」の細切れ肉。
食べると甘めのやさしい味付けで、大変家庭的な味わいです。
神石牛の細切れ肉は赤身と脂身のバランスが良く、甘辛い味わいがシッカリと染みています。
脂身の甘味もおいしいです。
また甘くて柔らかなタマネギ、ホクホクのゴボウも味がよく染みています。
白飯がほしくなるような味わいで、あっという間に平らげてしまいました。
つぼ漬けとクリームチーズのポテトサラダ
取材時のおばんざいのラインナップには「つぼ漬けとクリームチーズのポテトサラダ」がありました。
名前のとおり、具材としてダイコンのつぼ漬けとクリームチーズが入っているポテトサラダです。
ほかにもエダマメが具材として入っており、ポテトサラダの上から黒コショウがかかっていました。
食べるとトロリとした滑らかな舌触りで、ジャガイモの風味とまろやかな味わいが口内に広がります。
そこにクリームチーズのまろやかな風味も。
さらにときおりダイコンのつぼ漬けの、甘塩っぱい味とコリコリとした食感が現れます。
エダマメのホクホクとした食感が、良いアクセントになっていました。
賀茂金秀 太陽の雨音
春雨のドリンク類も多彩なラインナップです。
店のイチオシは「賀茂金秀 太陽の雨音」。
賀茂金秀(かも きんしゅう)は、歴史ある酒処・東広島市西条地区にある老舗酒蔵「金光酒造(かねみつ しゅぞう)」の銘柄です。
太陽の雨音は、日本酒を使った炭酸割り専用のリキュール。
広島県産レモン果汁とレモンピューレを使っているのが特徴です。
そのため、広島県らしさを目いっぱい感じられます。
レモンの皮ごと使っているため、レモン特有のさわやかな酸味や苦味が濃厚に楽しめます。
スッキリとしていて風味豊かな味わいなので、料理と相性がピッタリではないでしょうか。
家庭的な数々の料理と豊富なドリンク類、居心地の良い店内が魅力の小料理 春雨。
店主・杉野原尚子(すぎのはら なおこ)さんに話を聞きました。
春雨の店主・杉野原 尚子さんにインタビュー
家庭的な数々の料理と豊富なドリンク類、居心地の良い店内が魅力の小料理 春雨。
店主・杉野原尚子(すぎのはら なおこ)さんに話を聞きました。
祖母の影響で料理好きになり飲食店開業を目指す
──飲食店を目指したきっかけを教えてほしい。
杉野原(敬称略)──
私が幼いころ祖母はスナックを経営していて、料理が得意だったので、自宅でさまざまな料理を作って食べさせてもらっていました。
また祖母は飲食店をたくさん知っていて、いろいろな店へ私を連れて行ってくれたんです。
そのような環境もあって、知らず知らずのうちに私も料理好きになりました。
そして将来は、何か飲食店をやりたいと漠然と考えるようになったんです。
その後、社会人になって小売店に就職して販売員の仕事を始めました。
このころから、定年退職したら飲食店を始めようと思うようになったのです。
しかし就職して三十数年経ったころ、肉体的にも情勢的にも仕事を続けていくのが厳しいのではないかと考えるようになりました。
そこで知人に相談したところ、「転職するなら、一日でも早いほうが良い!」とアドバイスをいただきました。
そのアドバイスもあり、退職し、のちに飲食店をやろうと決意したのです。
一人で切り盛りでき、料理を楽しみつつ酒も一緒に楽しめる店を
──なぜ小料理店という形態にしたのか。
杉野原──
飲食店をやるからには、小さく始めようと思っていました。
経済的負担やリスクを少なくしたかったからです。
そのため、自己資金を中心に準備することに決めていました。
経費における人件費は占める割合が大きいですから、私一人で切り盛りできるスタイルの店が理想です。
また私はお酒も大好きですが、料理も大好き。
なので「料理をメインに楽しみつつ、お酒も料理と一緒に楽しむ店」というコンセプトが生まれました。
一人で切り盛りできて、料理をメインにしながら酒も楽しめる形態となると、自然と小料理店に行き着いたのです。
不動産会社からいろいろな物件を紹介してもらい、コンセプトにピッタリと合う物件だったのが明治町の現在の店舗。
そして2019年(平成31年)4月に、小料理 春雨を開業しました。
開業ができたのは、幸運が重なったことに加え、たくさんの人に助けていただいたからだと思っています。
店名「春雨」はかつて祖母が営んでいた店の名を継承
──「春雨」という店名の由来は?
杉野原──
「春雨」は祖母が営んでいたスナックの店名です。
飲食店をやると決めたとき、店名は祖母の店名を継承しようと決めていました。
飲食店開業を決めたのは、祖母の影響が大きかったからです。
ただ残念なことに「春雨」の由来は、誰も聞いておらずわかりません。
祖母は死去しているため、今はもう確認できないんです。
ちなみに祖母は名前に「春」の字が入っていて、日本舞踊を習っていました。
日本舞踊の演目に『春雨』というものがあります。
おそらく自身の名前と、日本舞踊の演目を掛け合わせて命名したのではないでしょうか。
日替わりのおばんざいは全体のバランスを考えながら決める
──おばんざいのこだわりや工夫点を知りたい。
杉野原──
おばんざいは毎日、8種類前後準備しています。
もちろん、おばんざい・料理は私の手づくり!
だいたい、いつも昼ごろから店で仕込みをせっせとがんばっています。
毎回出している当店名物の鶏つくね以外、ラインナップは日替わりです。
どのような料理の組み合わせにするかは、毎回気を使っています。
まず食材面で、野菜料理・肉料理・魚料理がバランス良くラインナップするようにしていますね。
さらに肉料理なら、牛肉・豚肉・鶏肉の料理が重複しないよう考えているんです。
牛肉なら牛皿・肉じゃが・チンジャオロースー、豚肉ならショウガ焼き・酢豚・塩焼き、鶏肉なら焼鳥・チキン南蛮・てり焼きなどですね。
料理の種類もバランスを考えています。
炒めもの・煮もの・揚げものなど、偏りがないようにしていますね。
サラダとごはんものも必ず一種類出しており、種類・具材も日替わりで考えています。
旬の食材も使うようにしているのもポイントです。
魚介類は可能な限り、瀬戸内海で水揚げされた旬のものを使いますね。
ただし、その日の入荷状況によって左右されます。
野菜も旬の野菜を使うようにしていますね。
お客様から「○○を使った料理はまだ?」と、旬の時季になるとリクエストがあったりして、心待ちにされているかたも多いです。
人気の旬の食材だと、たとえば春はタケノコなどの山菜、夏はハモやネブト・トウモロコシ・各種夏野菜、秋はキノコ類・クリ・イモ、冬ではクワイや根菜類・牡蠣など。
とくにネブトやクワイは、福山ならではの食材ですよね。
ごはんものだと、今(秋)なら栗ごはんやサツマイモごはん、キノコの炊きこみごはんなどを出しますね。
春だったら、タケノコごはん・豆ごはんなどが人気です。
お客同士のつながりが生まれる店を目指す
──今後の展望や課題点などがあれば、教えてほしい。
杉野原──
当店はほとんど宣伝をせず、ホームページもSNSもない小さな店です。
しかしおかげさまで、お客様が当店を気に入って、別のお客様に紹介してくださるというという好循環に恵まれて今までやってきました。
今後は店に来られたお客様同士がつながるような、ちょっとした社交場的な空間を目指したいですね。
課題点としては、私一人で切り盛りしているので、満席時は調理や注文などの作業で手いっぱいになってしまうこと。
小さな空間のお店は、店とお客様とが会話したり触れ合ったりできるのが魅力だと思っています。
だからお客様同士がつながれば、私が忙しいときでもお客様同士で会話が弾みますよね。
居心地が良い店とよく言われますが、今後もいっそう居心地が良くて楽しい店を目指します。
居心地の良さと家庭的なおばんざいが魅力の小料理店・春雨
春雨は小さな店ですが、店主の人柄と居心地の良さ、そして家庭的な料理でついつい長居をしてしまいます。
広い居酒屋でワイワイするのも楽しいですが、春雨のような家庭的な店でゆっくりと過ごすのも味わい深さがあって魅力的です。
ぜひ春雨を訪れ、店主・杉野原さん自慢のおばんざいの数々を楽しんでみてください。